メルカリとSBクラウドが語るEC×画像検索の可能性 ~2つの画像検索サービスの利便性とチャレンジを探る~

ECのミカタ編集部 [PR]

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株式会社メルカリ エンジニアリングマネージャー 博士(工学)山口 拓真氏
SBクラウド株式会社 技術統括部 プロダクト企画開発部 プロダクト開発課 雷 欺潔氏

ECにおいて、ユーザーがほしい商品にストレスなくたどり着くことは、CVを上げるために非常に重要だ。そのために役立つ注目の機能が「画像検索」。ほしい商品やそれに近い商品の画像を検索にかけ、類似する商品画像が検索される。この機能は、テキスト検索では取りこぼしていた購入をカバーしてくれる。

今回は「画像検索」サービスを提供している2社に画像検索の可能性についてお話を伺った。1社目はフリマアプリに「写真検索」機能を追加した株式会社メルカリ。2社目はアリババグループで生まれた画像検索サービス「Image Search」を日本で展開するSBクラウド株式会社。お話しいただいたのは、株式会社メルカリ エンジニアリングマネージャー 博士(工学)山口 拓真氏、SBクラウド株式会社 技術統括部 プロダクト企画開発部 プロダクト開発課 雷 欺潔氏だ。

今年実装されたメルカリ「写真検索」機能

今年実装されたメルカリ「写真検索」機能メルカリの写真検索機能

日本のC to C-EC市場に大きな影響を及ぼしてきたフリマアプリ「メルカリ」。月間利用者数1,300万人以上、20~30代女性がコアユーザーとなっているが、50歳以上や男性ユーザーも増加傾向にある。累計11億品以上の出品があり、アパレルを始め、エンタメ・ホビー、家電、スポーツ・レジャーなどのカテゴリーも成長している。

そんなメルカリで、2019年3月、「写真検索」機能を正式リリースした。

「写真検索機能の構想自体は2年以上前からあり、そういった機能がほしいと考える社員が多かったです。プロジェクトとしては昨年から開発が始まりました。いかに不適切な商品を除いて適切な商品を表示させるか、また、商品出品後できるだけ早く検索可能な状態にするという即時性などが、難しい点です」。(メルカリ山口氏)

SBクラウド「Image Search」開発・提供の背景

一方、SBクラウド株式会社は、ソフトバンク株式会社とアリババグループの合弁会社で、アリババグループのクラウドサービス「Alibaba Cloud(アリババクラウド)」を日本で提供している。そのプロダクトのひとつが、画像検索サービス「Image Search(イメージサーチ)」だ。

Image Searchの画像検索

「Image SearchはもともとアリババグループのC to Cショッピングモール『淘宝(タオバオ)』で活用されており、その後、パブリッククラウドのサービスとして他の企業にも提供されるようになりました。日本では、家具・インテリアのニトリさまに導入いただいています。サブスクリプション型でリーズナブルにご利用いただけるのが特長です」。(SBクラウド雷氏)

Image Searchは、中国においてはすでにスタートアップ企業から大企業まで、幅広く活用されている。その事例のひとつが、TikTokを運営するByteDanceも出資している「虎撲体育(HUPU Sports Media)」だ。虎撲体育はスポーツ情報のポータルサイトを運営している企業だが、新たにスニーカーのECサイト運営を始めた。このECサイトにImage Searchが導入されている。

「Image Searchの導入で、CVは(導入前と比べて)65%上がりました。スニーカーには型番などの商品情報がありますが、そういった商品情報をユーザーはなかなか覚えていません。このブランドで、こんなスニーカーがほしいといったぼんやりとしたイメージしかないのが普通で、それを言葉で表すのがすごく難しい。それを画像検索できることで、ほしい商品が見つかりやすくなります」。(SBクラウド雷氏)

画像検索の仕組みと課題

画像検索の仕組みは、検索する画像・検索される画像いずれもが数値で表され、その数値が似た画像を探すというもの。この数値表現をどう行うかが、つねに研究開発の対象となっているそうだ。

「数値表現は、サービスによっても異なります。一般的に『類似画像検索』といわれるのですが、『なにをもって類似とみなすか』というのは、非常に難しい点です。色なのか、サイズなのか、それによって類似しているとされる画像が大きく異なります」。(メルカリ山口氏)

「Image Searchで使われている画像検索のモデルは、タオバオをベースとして何十億点の画像を機械学習させています。カテゴリー認識、被写体検出、特徴抽出のプロセスをかけて検索エンジンから同じ特徴を持っている画像、あるいは特徴が似ている画像を検索します。そのなかでもやはり、色が全く同じのものを検索するのが難しい点です」。(SBクラウド雷氏)

SBクラウド株式会社 技術統括部 プロダクト企画開発部 プロダクト開発課 雷 欺潔氏

また、ECサイトで画像検索を使う場合、商品によって画像検索と相性の良い商品と、そうでない商品があるそうだ。

「面積比が小さいものや、特徴の少ない商品ほど、画像検索が難しくなります。たとえば、黒い棒があったときに、特徴が少なすぎて、それがただの棒なのか、ボールペンなのか、鉛筆なのか、あるいは太鼓の撥なのかがわかりません。逆に、無地のカラーTシャツ、あるいはボーダーやストライプなどの特徴があるものは、正しく類似画像を見つけやすい商品です」。(メルカリ山口氏)

「同じ商品なのに、ECサイトに登録されている商品画像と、検索を行った商品画像が一致しないということもあります。たとえばユーザーがリアル店舗にいて、そこにある商品をECサイトの商品と比較しようと画像検索を行った場合を考えると、リアル店舗の商品にはPOPや値札がたくさん貼ってあって、ECサイトの商品にはシンプルな商品画像しかないことで、正しい商品画像を検索できないことがあります。そういったときに、ユーザーから見ると納得できる検索結果が得られていないということになります」。(SBクラウド雷氏)

「同様の問題で、インスタグラムで洋服のコーディネート写真を投稿する人が多いですが、インスタグラムの写真はいろいろなポーズを取っているので、その写真で検索すると、ECサイトに登録されている写真と一致しづらいということがあります。また、人が写っていると、人の特徴が強すぎて一般的な画像検索のアルゴリズムが使えません」。(メルカリ山口氏)

画像検索のメリット

前述のように画像検索にはまだ課題はあるものの、それ以上にユーザーにとってもEC事業者にとってもメリットが大きい機能だ。なぜなら、画像検索により、テキスト検索では検索に漏れてしまう商品、テキストでなんと検索して良いかわからない商品にユーザーがアクセスできるのだ。

テキスト検索で商品が検索から漏れるというのは、特にC to Cサイトで起こりやすい問題だ。

「C to Cサイトではユーザーが商品情報を登録するため、ユーザーが適切なキーワードで検索をかけても、商品説明にそのキーワードが入っていないということがあります。しかし商品説明が不十分でも、画像検索であればその商品を検索できます」。(メルカリ山口氏)

「タオバオもC to Cのサービスなので、同じ問題があります。自分自身経験がありますが、人間はどうしてもミスをするもので、注意していても必要なキーワードや説明が抜けていることもありますが、画像検索はそういった商品でも検索することができます」。(SBクラウド雷氏)

また、そもそもテキストでなんと表現すれば良いかわからない特徴をもつ商品は検索できないというのも、テキスト検索の弱点だ。

「画像検索は、テキスト検索を超える検索というよりも、テキスト検索でできないものをカバーするというのが目的です。たとえばアパレル商材で、『もこもこ』『ふわふわ』な素材とか、名前のわからない柄・模様とか、テキストでは検索しづらいですが、画像検索ならすぐに検索できます」。(メルカリ山口氏)

テキスト検索だけでは見つけられない商品を画像検索がカバーする。それによってユーザーはより快適な購入体験ができ、EC事業者にとってはCV向上につながる。テキストでは表しにくい商品の特徴を画像検索で把握できることにより、レコメンドなども、ユーザーの嗜好によりマッチしたものになる可能性もあるのだ。

まずはユーザーに利便性を体験してもらいたい

画像検索のメリットは大きいが、実は日本において画像検索を利用するユーザーはまだ多くない。

株式会社メルカリ エンジニアリングマネージャー 博士(工学)山口 拓真氏

「日本では文化的に、画像や音声など、テキスト以外で検索をする人が少ないという問題があると思います。画像検索を広めるためには、まずは画像検索により良い検索体験をしてもらうということが重要だと考えています」。(メルカリ山口氏)

「タオバオでも画像検索機能の利用が増えた要因のひとつが、ユーザー同士のクチコミの効果だと思います。企業のプロモーションよりも、友人や知人、同僚からすすめられたもののほうが受け入れやすい。だからこそ、画像検索を一度体験してもらうことが日本でも重要です」。(SBクラウド雷氏)

そういった状況のなかで、画像検索の今後の展開としては、画像検索技術の進化も期待したいところだが、日本ではまず、画像検索を利用するユーザーが増えることが重要だ。

「画像検索の技術はまだ進化していくと思いますが、まずはその便利さを知っていただくことが第一だと思います。たとえばLINEなど、日本でも利用者の多いサービスやプラットフォームで画像検索に力を入れるという動きが出てきているので、そういったことをきっかけに、画像検索で良い検索体験をするユーザーが増え、メルカリでも活用いただけるようになることを期待しています」。(メルカリ山口氏)

「Image Searchでは、画像検索の対象となるカテゴリーを拡大予定です。現在は13のカテゴリーを提供していて、どちらかというと小さい商品が中心で、大きい商品でも家電などなのですが、今後、車のカテゴリーを提供するなど、大きい商品も画像検索の対象になる予定です。たとえば中古車の販売所に行って、気になった車をネット上で比較できるようになります。大型の商品はリアル店舗で購入すると配送などの手続きに時間を取られますが、画像検索によりネット上で同じものを購入できることでその手間が省け、ユーザーにとってメリットが大きいと思います」。(SBクラウド雷氏)

画像検索により、テキスト検索では探せなかった商品を見つけられるかもしれない。まだ画像検索を使ったことがないという方は、ぜひ一度その利便性を体験してほしい。


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