イーベイ・ジャパンが第2四半期の越境EC取引データを公開! 激動の期間を経て、今後EC事業者が取るべき対策とは?
3月にアメリカがロックダウンとなり、4月には日本で緊急事態宣言が出されるなど、世界的にコロナの影響が広がったこの春。eBayにおける越境ECの取引でも、売れる商材が急激に変わるなど今までにない展開が見られた。
今回は2020年第2四半期の取引データをもとに、越境EC取引の現況・予測や、今後EC事業者が取るべき対策について、イーベイ・ジャパン株式会社のソフトグッズ カテゴリーマネージャーの北村直樹氏と、マーケティング部 部長のヒックリン ジェームス氏に伺った。
4月以降はブランド品やカメラなど、高額商品の取引が急増!
ヒックリン氏:もともとeBayの主力は、ブランド品やカメラなどの高額商品です。輸送費がかかりますので、それを差し引いても元がとれるような高額で比較的小型のものがよく取引されています。
北村氏:しかしコロナの影響で、2、3月は国内と同じく、アメリカ向けにも比較的低価格な生活必需品の方が大きく売れました。巣ごもり需要が広がったことからゲームの売り上げも伸びました。一方でブランド時計などの高額商品は大きく落ち込んでいたのです。一方、4月以降はこれらが完全に逆転し、生活必需品の需要が落ち着いて、高額商品がよく売れるようになりました。
【カテゴリー別成長率ランキング】(前年同期比)
【カテゴリー別取引ランキング】
※順位横の〈〉は 2020年第1四半期(1-3月)同データでランクインしていた際の順位
【商品別売れ筋ランキング】
配送網の変化や移動制限により、人やものの流れが大きく変わった
北村氏:要因は複数ありますが、人やモノの動きが変わったことが大きいと思います。
まずアメリカで4月に「スティミュラスチェック」という収入補償の現金給付が行われました。また本来3月にあったはずのタックスリターンが5〜6月に延びたことで、4月以降、消費者の手元に現金が増え、高額商品の購入につながりました。
配送手段の変化も影響しています。以前は日本のセラーさんのほとんどは海外への発送にEMSを使っていたのですが、この時期日本郵便さんがEMSの受託を止めたため、価格の安い商材を発送しづらくなりました。
eBayでもFedExやDHLといったクーリエ(国際宅急便)を活用していただくべく新たなサービスを組みました。そうしたことで、多くのセラーさんがクーリエの、『荷物の安全が確保される』、『スピーディーに届く』といったメリットを感じ、高額商品の出品増加に繋がりました。ちなみに配送の質が上がったことで購入者からの評価も上がり、eBay自体のSEOランキングも上がっています。
さらに日本は中古の業者向けの市場が成熟しており、以前は海外から買い付けにくる人も多かったのですが、コロナの影響でそれが叶わなくなり、そうした人がeBayに買い付けに来るようにもなりました。コロナ後、明らかにBtoBの利用は増えています。
ヒックリン氏:もう一つ「リテールセラピー」の流れも影響しています。テレワークや外出自粛で買い物に行きにくい環境の中、オンラインショッピングが増え、自分へのご褒美を買って癒されようという流れが出てきたことから、高額商品を選ぶ人も増えたと思います。
巣ごもり需要で、オートパーツやカーアクセサリーなど大型のものも売れるように
北村氏:元々アメリカでは自宅のガレージで車を修理・改造する文化がありましたが、コロナの影響で家にこもる時間ができたことで、オートパーツの需要がさらに伸びました。その結果、業界全体でも2019年と比べて64%の売り上げ上昇になりました。伸び率ではダントツ1位なのではないでしょうか。特に日本車はマニアックな愛好家も多く、仕入れを強化しているセラーさんも多いので、今後もまだまだ伸びていくでしょう。
他にもゴルフやフィッシングなど、一人でできるスポーツのグッズや、ペット用の高級ブランドキャリーケース、ペットと一緒に入れるプールなどペットに関する高額商品もよく売れています。
セラーに対して売れ筋商品や配送網の情報をいち早く共有
――市況が急激に変化していた中で、イーベイ・ジャパンさんとしてはどのように対応してきたのでしょうか。
ヒックリン氏:セラーさんに対してコミュニケーションを頻繁にするようになりました。たとえば「高級時計が売れるようになった」「EMSが1週間後からアメリカで使えなくなる」といった情報を、セラーポータルやSNS、ウェビナーなどでいち早くセラーさんに伝えてきました。
またEMSの停止に応じていろんなクーリエサービスを組んだり、新しいサービスを開発したりといった工夫も、売り上げを増やす結果に繋がったと思います。
――コロナの影響はまだ続くと思われる中で、今後はどのような消費行動の変化がありますか。それに伴い、EC事業者はどのような対策をする必要があるのでしょうか。
北村氏:コロナの影響が続く中で、人が動きにくい状況も継続していくと思います。しかし今後急に節約意識が高まるようなことは考えにくく、おそらく消費はほぼ通常通り続いていくでしょう。
さらにECでいうと、以前は売れるかどうかわからなかった商品も、コロナ禍でECでしか買えない状況になれば、何でも売れることがわかりました。今後も何が売れるかわかりませんので、アタリをつけて絞り込むよりも、全てを売りに出してみるくらいの姿勢が必要だと思います。
8月中にはFedExとの特別ウェビナーを開催予定!
――ブラックフライデーやクリスマス商戦などが控えていますが、セラーさんに対して、今後はどのようなフォローを?
ヒックリン氏:8月中にFedExとの特別ウェビナーを開催し、クーリエの魅力をお伝えする予定です。これまで日本郵便さんのサービスしか使っていなかったセラーさんにとって、クーリエを使うのはハードルが高いと思います。そこで活用のメリットをお伝えする機会を設けたり、個人で契約できるクーリエサービスの開発を進めるなど、今後もクーリエサービスとタイアップしながら、様々な施策を展開していきたいですね。
北村氏:また大手のセラーさん、中規模のセラーさん、個人のセラーさんに合ったサポートをする体制づくりを進めています。eBayのセラーさんには、個人事業主から一部上場企業まで様々な方がおられますので、サポートするためには、それぞれに合わせた違ったアプローチが必要と考えています。
ヒックリン氏:eBayを始める前の段階から、『スタートラインをどこに設けるか』、『どうアプローチしていくか』など、1対1でのサポートはもちろんのこと、セラーポータルのセルフヘルプ機能を充実させるなどマスの形でもきちんとサポートしていけるよう、システムに大きく投資していく予定です。
引き続きぜひ、eBayにご注目ください。