ブランディングと集客をリスクなく行える応援購入
数年前まで資金調達や寄付の印象が強かったクラウドファンディングだが、近年はモノやサービスの新たな販売手法として注目を集めている。中でも作り手の想いが強い商材と相性が良いMakuakeが提供する「応援購入」について、ECとの違いや導入事例、今後の可能性などを、運営元である株式会社マクアケの坊垣佳奈氏に伺った。
モノやサービスを先行予約販売的に売る仕組み
Makuakeの「応援購入」は、モノやサービスを先行予約販売的に売る仕組みですが、ECとの明確な違いは、購入後、すぐに届かないというところです。
ECに求められているのは「注文後、すぐにモノが届く」ということですが、応援購入に求められることは、こだわり抜いた商品やプロジェクトの背景、作り手の顔が分かるような深いコミュニケーションです。それらを応援したいという気持ちから生まれる消費行動が応援購入です。そのため、迅速に商品をお届けすることも大事ではありますが、それ以上にプロジェクトにこだわり抜いてほしいというユーザーのニーズが強く、予約販売のようなモデルになるケースが多いです。
しかし、EC上でのコミュニケーションには多くの事業者が課題を抱えています。情報をまとめる時間がなかったり、発信しても拡散し切れなかったり、そもそも何を発信すればいいのか分からない、そのような課題を抱えている方は多いのではないでしょうか。
そのため、作り手の想いや商品の詳細を分かりやすく整理し、かつ情熱的に伝えるお手伝いをMakuakeでは行なっています。お客様はその想いやこだわりに触れ、それが応援購入の後押しになります。モノを売る概念はEC寄りですが、クラウドファンディングの仕組みを使っているので、ECとクラウドファンディングの中間に位置する、今までになかった市場だと捉えています。
小規模でも安心在庫リスクや廃棄の不安から解消
今までのモノの売り方は、ある程度バリエーションと在庫数を用意して、売れたら追加生産、という流れが主流でした。モノを売るのに自社サイトを用意したり、流通販売に乗るよう棚を取る必要がありましたが、小規模事業者や地方事業者は在庫を抱えることが大きなリスクになったり、売れる棚の確保がしにくく、良いものを作っても売りにくいという課題があります。売る行為自体がお金や手段のある企業の主戦場となっていたのです。
大量生産の負の影響はそれだけではなく、アパレルや食品などでは廃棄される商品も非常に多くなっており、社会問題にもなっています。
一方、応援購入は多種多様なプロジェクトがフラットに並ぶため、地域や規模の大小を問わず、お客様にアプローチすることができます。
また生産する前段階で、直接お客様に商品を発表でき、お客様が反応してくれた分だけを、無駄なく、在庫を抱えずに販売することが可能です。
ミニマムスタートからチャレンジでき、廃棄やそこにひも付くさまざまな負も解消できます。
新たなファンとの出会いや販路の獲得・融資にもつながる
過剰在庫を抱える必要がないこと以外にも、独自のこだわりや人に注目を集められる、つまり集客ができることも大きなメリットです。
今ではSNSやブログを活用することで、自社のこだわりなどを発信する事業者も増えました。しかし、一つブログを制作するのにも時間がかかりますし、拡散に対して課題を感じる方も多いと思います。しかし、Makuakeのようなプラットフォームには日頃から応援購入に意欲的で、情報シェアをしてくれるユーザーが多くいます。そして、魅力的な発信に自信がない人でも気軽に利用できます。
他にも、ユーザーが応援コメントを送る機能など、ファンとコミュニケーションを取りながら商品への理解を深めてもらうことが可能です。ユーザーとのコミュニケーションは事業者への励みにもなり、好循環を生み出します。実際、プロジェクトを掲載していただいた方からは、「コアなファンづくりにつながった」「継続的なお客様獲得につながった」というご感想を多く頂いています。またブランディングの結果、流通販路を獲得できたり、実績を作れるので金融機関の融資につながった事例も少なくありません。
そのため、D2Cブランドが立ち上げ期のファン獲得やテストマーケティングにMakuakeを活用した事例も多数あります。
例えば、ホワイトボードを手持ちにするという発想で新商品の制作をスタートした企業は、社員1名の会社ですが、これまで6回ものプロジェクトに挑戦され、「何度も使える!マグネット式クラシックノート。notesX」では2日で600万円以上を集めています。毎回Makuakeで最初の売り出しを行い、話題づくりをしてから一般販売をしています。
大阪にある町工場の木村石鹸さんは、昨年「本気で髪を良くすることだけを考えたシャンプーとコンディショナー」の応援購入で500万円以上を集めました。Makuake上でのコミュニケーションをきっかけにファンが増え、今や大人気商品に成長し、SNSで日々UGCが生まれています。
地場産業への貢献度も高く、刃物産業の歴史が根付いた、岐阜県関市の福善刃物工業さんは、「刃物屋が作るスリムで頑丈なペグ」で2回の応援購入にチャレンジされていますが、共に1000万円以上を集めています。
応援する側も、作り手の想いを理解して購入したものは大事に使いますし、ブランドのファンになりやすく、LTVも高い傾向があります。応援購入ならではの購買体験を気に入ってくださるお客様は非常に多く、Makuakeのリピート率は7割にも上ります。
作り手の顔が見えるものへの購入・支援の流れは さらに強まっていく
インターネットの世界では相手と直接触れ合うことはありませんが、距離が遠くなったわけではなく、むしろ多くの人とダイレクトにコミュニケーションができるようになり、事業規模や地域を問わず販売できるチャンスが増えたともいえます。
Makuakeは、リアルで言えば百貨店にフラッと入る感覚に近く、「何となく訪れて食べ物を買って、ついでに日本酒も買っちゃった」といった感じで購入する方が多い。私自身もそうやって応援購入を楽しんでいます。
新型コロナウイルス感染症の影響で消費感覚は大きく変化しました。限られたお金を困っている飲食店に使う、医療従事者に寄付するなど応援や支援の傾向が強まりました。その結果、単にモノを購入するのではなく、誰がどのような背景で開発した商品なのか、事業者のこだわりが透明化されることの重要性が高まっています。
2021年も、時代の変化に合わせて多くのメーカーさんが新しい取り組みをしており、Makuakeにもよりユーザーが集まると予測を立てています。去年は繊維業者さんがマスクの開発にチャレンジした事例も多くありましたし、豊島株式会社という繊維商社は自社製品を作って1億円近くを集めています。
日本は元々その地域に根差した産業、食材、加工法があって、地域を盛り上げていました。そうした地場産業は欧米化で失われつつありますが、再び注目されてきています。伝統的な技術やこだわりのサービスが応援購入の場で多く発信されれば、世間の認知向上にも寄与し、日本の産業全体の活性化にもつながると感じています。
「こだわりを持ってものづくりをしているが、消費者にどうアピールしたら良いか分からない」「新商品でチャレンジするのは怖い」という方も多いと思いますが、応援購入の仕組みではリスクはほぼありません。2021年、是非取り組んでほしいですね。