カード不正撲滅へ!アクルが提案する不正検知・認証システム「ASUKA」のセキュリティネットワーク
ネットショッピングの支払い方法で主流になっているのがクレジットカード決済だ。EC事業者と消費者双方に利便性があり広く使われているが、不正利用は年々増加傾向にある。クレジットカードの不正検知・認証システム「ASUKA」を提供する株式会社アクルでは、EC事業者や不正関連情報をネットワーク化し、EC業界におけるカード不正の撲滅を目指している。同社の栗田和明氏に、クレジットカードの不正利用の実態やASUKAの導入メリット、業界横断で情報を共有して不正を排除する必要性などについて話を聞いた。
チャージバック保証の提供で見えた不正対策の課題
――御社が不正検知・認証システム「ASUKA」を開発した背景、業界の課題についてお聞かせください。
栗田 もともと当社では、EC事業者様向けに「チャージバック保証サービス」の提供していました。チャージバックが発生した場合にその費用をアクルが保証するサービスで、現在も提供しています。同時に不正対策のコンサルティングや、クレジットカード不正に関する情報提供も進めて参りました。
しかしながら、業界におけるカード不正利用の急増に伴い、サービスとして大きな壁に直面します。不正利用の発生が常態化し、EC事業者と当社とで月額をもらい保証による払い出しをする、お金のやり取りでしかないチャージバック保証サービスでは、根本的な課題解決にならないケースが増えてしまったのです。
そこで当社が考えたのは国内外の不正検知システムを導入してもらうことで不正利用の発生リスクを抑え、その上でチャージバック保証を提供するという座組です。当時は日本未上陸の海外系不正検知システム含め、様々なツールや手段をEC事業者様に紹介して周っていました。
しかし、この座組みでも壁が立ちはだかります。従来の不正検知システムは不正利用を未然に防ぐものではなく、不正利用のリスクをEC事業者に通知するだけのものがほとんどでした。リスク有、怪しいと返戻された取引のチェックなど、運用にかかる工数も多く、費用的にも負担が大きいという課題があり、システム導入に至りませんでした。こうなると、当社のチャージバック保証も提供できません。
頭を抱える中、あるEC事業者様から、そこまで業界の課題を把握しているのであれば、それを解決した新たなサービスを開発できるのでは?とお話を受け、2018年12月に「ASUKA」を提供開始しました。
――当時はカード不正によるどのような被害が多かったのでしょうか。
栗田 ちょうどこの頃、2017年でしたがインバウンド、訪日観光客の増加が顕著だったので、航空券や宿泊など旅行商材の被害が急増していました。直近ではコロナ影響も大きく、ファッションやコスメの被害を筆頭に、もはや商材や金額にかかわらずEC全般で被害が拡大しています。手口も複雑・巧妙化しており、EC事業者単体で対策を講じることが難しくなりました。
既存ツールの課題を解決したサービス構成
――御社が展開する不正検知・認証システム「ASUKA」についてお聞かせください。
栗田 ASUKAは後発ですが、既存の不正対策における課題を解決したサービスです。当社がこれまで提供してきた「チャージバック保証」や不正対策のコンサルティングで得た現場の経験、決済業界出身ならではの知見を開発に生かし、費用対効果の高い不正対策を実現するサービスになります。
――既存サービスとの一番の違いは何でしょう。
栗田 従来の不正検知システムは、高精度にリスクレベルを◯×△でEC事業者側に伝えるだけで、真正利用・不正利用の最終的な判断はEC事業者に委ねるものでした。つまり「検知する」までがサービスで、その先の本人確認、商品出荷はEC事業者が判断しなければなりません。
一方ASUKAは、「不正検知システム」ではありません。
不正利用のリスクをスコアリングしたのち、独自の認証ツールで真正・不正の判定まで一気通貫で実施。不正利用をASUKAが判別し、けん制・排除します。これにより不正利用やチャージバックを未然に防ぐと同時に、EC事業者の担当者様が不正対策に割かれる運用工数を大幅に削減できる点が大きな特徴です。
――費用面や開発工数に関してはいかがでしょうか。
栗田 ここも当時の課題解決を念頭に置いて設計しました。特に海外製品において従量課金が一般的だった料金体系は月額固定とし、導入企業様のランニングコストを抑制しました。また、システム開発に数ヶ月かかるツールもありますが、ASUKAは申込から最短一週間かからず利用開始が可能です。スピーディーな導入ですぐにでも対策を講じたい、というニーズにも対応します。
アパレル系ECにおける不正対策の伴走者
――ASUKAはメジャーなアパレルEC事業者による導入が進んでいますね。
栗田 リリース当初は旅行業界での導入が多かったのですが、近年は物販全般、とくにアパレルやコスメの領域で広くご利用いただいています。業界ごとに不正の手口や傾向が異なるので、それぞれの業界に特化した「ASUKA for Ecommerce」「ASUKA for Travel」などのソリューションをご用意しています。
――ASUKAが選ばれている理由は何でしょうか。
栗田 EC事業者様の立場になり、サービス設計している点でしょうか。従来型のツールとは異なる不正対策の手法や運用工数、費用対効果の面で大きなメリットを提供できていると思います。まだまだ改善の余地はあるので、強化を継続しています。また社内は決済業界出身者がほとんどであるため、カード決済の裏側の仕組みや不正のトレンド、傾向などについて専門的な知見に基づいたアドバイスができる点もご評価いただいています。
――専門家がしっかり伴走してくれる点は心強いですね。
栗田 不正対策は終わりのないマラソンのようなものです。犯罪者側の手口は刻々と変わるので、継続的・動的なサポートが大切です。また、例えばアパレルならアパレル業界全体でカード不正を防ごうという横の繋がりの醸成も重要です。当社ではECでの不正利用のハードルを上げようという業界横断型のセキュリティ強化の取り組みにも力を入れています。
不正対策の知見や情報を〝共有財産〟として還元
――業界横断型のセキュリティ対策とはどのようなことでしょうか。
栗田 当社ではEC事業者様向けに定期的にカンファレンスを開催し、カード不正対策の考え方やセキュリティに関するケーススタディ、トレンドなどについての情報を共有する機会を設けています。我々の持つノウハウや情報を還元しますので、皆様ぜひ横のつながりを作り、業界全体のセキュリティレベルを底上げできればと思います。
――カード不正対策において、同業他社との連携は重要ですか。
栗田 自社内の情報だけに頼って対応策を試行錯誤するのは限界があります。ASUKAを通じたネットワークに参加していただければ、業界各社で蓄積された不正対策の知見や情報、〝共有財産〟に即座にアクセス、活用していただくことができます。不正利用やチャージバックに悩むEC事業者様はたくさんいます。当社としては経済的な被害を未然に防ぐことはもちろん、他社はどのように対策しているのか、といった正解のない課題と向き合うEC運営担当者の精神的なサポートにもなればと考えております。
――今後の展開について教えてください。
栗田 今後はEC事業者様向けのセキュリティセミナーを強化します。当社がハブになり、EC事業者様や決済代行会社、カード会社と連携しながら業界三位一体となりカード不正対策のネットワーク構築を目指します。将来的にはこのネットワークをより強固なものとし、EC業界からカード不正利用を排除するのが当社の使命だと考えています。