サイト滞在時間が最大5倍。スマホで撮影・サイトに埋め込みできる“Firework”が変えるECの未来

ECのミカタ編集部

コロナ禍で巣ごもり消費が活発化したこともあり、昨今はECサイトでもよりリアル店舗に近い買い物体験の提供が求められている。

それを実現する手段のひとつが動画だが、ECサイト上で動画を活用できているのはごく一部の事業者にとどまっているのが現状である。そんな中注目されているのが、スマホでも撮影やアップロードができるショートムービーだ。

今後EC事業者はどのように動画を活用していくべきか、ECとショートムービーの親和性について、シリコンバレー発のウェブストーリープラットフォーム「Firework(ファイヤーワーク)・運営:Loop Now Technologies Inc.」の岩田塁氏にお話をうかがった。

アメリカ版TikTokからオープンウェブの世界へ

ーーFireworkのサービスについて簡単に教えてください。

Fireworkは、ウェブサイトにショートムービーを埋め込めるプラットフォームです。

もともとは、いわゆる「アメリカ版TikTok」としてスタートしましたが、他サービスとの差別化も意識した結果、2020年から「ショート動画をウェブサイト上で活用してもらう」という方向に舵を切りました。それに伴って、ターゲットも個人からビジネスユーザーへとシフトしています。

ーーTik TokなどのSNSとFireworkはどのような違いがあるのでしょうか。

マーケットが異なります。これは我々が大切にしているコンセプトにつながる部分です。

Fireworkは当初、TikTokのようなSNSとしてスタートを切りましたが、よく見ると、SNSはカテゴリーの中で閉じた市場でしかないことがわかります。Facebookは全世界で27億人のアクティブユーザーがいるものの、頭打ちの感があります。YouTubeもInstagramもTikTokも同じで、やはり成長には限界があります。

そこで当社は、SNSという閉じられた市場ではなく、オープンウェブの世界に目を向けました。SNSの約100倍の月間訪問数があるオープンウェブ市場での浸透を目指したほうが、爆発的な成長が見込めると考えたのです。

ウェブサイトの価値を高めることで広告費削減につなげたい

ーー類似サービスとの差別化ポイントはどのようなところですか?

ショート動画SNSにおけるTikTokやInstagramは、あくまでもフォロワーの数に依存するプラットフォームです。人気者や個人にトラフィックが向きがちで、事業者がフォロワーを増やし一定以上のトラフィックを得るにはコストと時間が非常にかかります。事業者向きに作られたサービスではないのです。

我々はこのようなプラットフォームのあり方に対し、「健全なのか?フェアなのか?」という疑問を抱いていました。

一方、Vimeoはウェブサイトに動画を埋め込み、各ウェブサイトを訪れた消費者に体験を提供するというプラットフォームです。しかしながら、横型かつプロフェッショナルな動画をストリーミングするプレイヤーとして活用されています。

これら2つの掛け合わせが、Fireworkが目指すプラットフォームのあり方です。

1つは事業者のために作られたショート動画という点です。ウェブサイト内に導入することでサイト内でのお客様との接点を増やし、エンゲージメントを高めます。また全てのデータも一次データとして取得可能です。

2つ目はモバイル最適されたユーザー体験を実現しているところです。特にモバイル化率の高い日本では縦型のスマホ画面で見栄えの良い動画体験を提供するためにも縦型動画を提供しています。

動画を通じてさまざまなネットワークが形成されることで、消費者をより楽しませることができますし、ビジネス事業者にとってもメリットが大きいと考えています。

「ウェブサイト自体の価値を高めることで広告費の削減につなげ、事業者がお客様とより深い関係を築いていくことにコストを掛けてほしい」というあり方が、我々が実現したいプラットフォームの姿です。

ショートムービーは現代の消費者に合うフォーマット

ーーショートムービーとはどのようなものを指すのでしょうか。

一言で言うと「短く簡潔に視聴者に内容を伝えきるためのフォーマット」です。「尺の短い動画であると同時に、ストーリーフォーマットでもあります。「ストーリーフォーマット」というのは、スマホに最適化された縦長の動画で、サクサク情報を取得しやすいというところに特徴があります。

InstagramやTikTokでも、1~2時間以上滞在してショートムービーを見続けるユーザーが多いというデータが出ています。私たちが、ショートムービーにフォーカスした大きな理由の一つです。

ーーショートムービーはどれくらいの人々に認知のあるコンテンツなのでしょうか。

日本だと若年層以外はやや遅れているかもしれませんが、海外では大手プラットフォーマーも取り入れているくらい身近な存在です。海外では、大手メディアもどんどん縦長のストーリーフォーマットをウェブサイトに導入していて、日本よりも圧倒的になじみのあるフォーマットになっています。

「縦長動画×オープンウェブ」という領域には、まだまだ可能性があります。

情報が氾濫している今の時代、事業者がいくら頑張ってコンテンツを作っても、消費者はウェブサイトの凝った文章や長い動画は見なくなっています。短時間で、しかも視覚だけでなく聴覚も使って情報を得られるショートムービーは、情報を取捨選択したい現代の消費者に合っているのではないでしょうか。

Firework導入でECサイトの滞在時間が最大5倍に

ーーFireworkを実装した時のECサイトへの効果を教えてください。

数字の面では、ECサイトの滞在時間に大きな変化が生じています。Fireworkの導入により、モバイルユーザーの滞在時間が最大5倍以上に伸びており、1人あたりのページ訪問数も平均29.7%増加しています。

定性的なところでは、「小規模事業者が大手に対抗するためのソリューションになっている」との声をいただいています。

小規模事業者が大手に対抗するためには「店主のパーソナリティを出す」というのがひとつの方法です。ところが、飲食店をはじめとするオフラインの世界に比べ、ECではそういった手法はあまり広がっていませんでした。

しかし、Fireworkはスマホで撮影してすぐアップロードできる手軽さで、店主のパーソナリティを出すという手法をオンラインの世界にまで拡張しました。少人数で運営しているEC事業者も多い中、ショートムービーを使って店主のパーソナリティを出すことで、オンラインでもオフラインのような接客を実現して大手に対抗する、というモデルが生まれています。

ーーモバイルファーストのデザインにしている理由を教えてください。

今後10年のネット環境を考えた際に、より情報の取得はモバイルベースになってゆきます。

すでに日本ではPC使用率に対するスマホ使用率が他国に比べて非常に高く、モバイルファーストの国として有名です。我々はこのモバイルという新しいトレンドに最適な動画プラットフォームを築いています。

日本も少子高齢化が進んでいるとはいえ、モバイルの普及率はきわめて高く、年齢を問わずモバイル経由の購買が増えています。そのことからも、やはり今後はモバイルファーストが有望だと考えています。

ーーFireworkを導入することでサイトが重くなってしまうことなどはあるのでしょうか。

よく受ける質問ですが、Fireworkを入れてもサイトが重くなることはありません。動画を入れ込むとサイトが重くなるというのは多くの方が最初に感じる不安だと思います。そのため、サイトに負担をかけないことを前提に機能開発を進めてきました。

具体的に技術的な部分を申し上げることはできないのですが、サイト読み込み時間を最大限短くするために動画読み込み方法や動画プレイヤーフォーマット、CNDの組み込み方等複数の要素を最適化しています。

自社ウェブサイトに主権を取り戻す

ーー日本に参入した理由を教えてください。

ショート動画への浸透率も他国に比べて高い印象を持ちました。しかしながらSNS上でしか活用されていなかったというのも我々にとっては注視したポイントです。

ーー国内ECプラットフォームとどのような連携を行なっていこうと考えているのか教えてください。

まずはShopifyアプリの開発に取り組んでおり、すでにベータ版をリリース済です。視聴者は動画を見ながら、動画の中で商品情報を見ることができ、動画視聴から商品購入までの流れがスムーズになります。

ほかにも、色々なシステムとの連携に向けた開発や協議を進めているところです。基本的には、HTMLタグを埋め込めるシステムであれば、Fireworkを使うことができます。

ーー日本へのローカライズで何か課題はありますか?

日本の事業者は欧米の事業者とマーケット理解が異なるため、私たちが抱えている課題感や今後の世界的なトレンドに対する理解や共感が得られにくい部分があります。

さきほど「SNSに広告費を吸い取られている」という話が出ましたが、日本の事業者は「SNSにお金を吸い取られている」という認識がなく、自社のウェブサイトが置き去りになっているという課題感を持っている方が少ないです。

我々は、SNSをはじめとする外部のプラットフォームに依存している状態から、自社ウェブサイトに主権を取り戻す支援をしたいと思っていますし、そのうえでFireworkがひとつのソリューションになると考えています。

ーー今後、どのような動画市場を作ろうとしているのか、予定されている取り組みなどがあれば教えてください。

最終的なゴールは、「あらゆるウェブサイトが、動画を使ってウェブサイトの価値を高める」ことです。それに加えて、ウェブサイト同士がFireworkを通じてネットワークを形成していくことです。

この大きなゴールを実現するために、まずはどのような事業者でも簡単に動画を作って公開できるよう、動画をもっともっと手軽なものにしていきたいと思っています。従来は、「動画を作るのは難しい」「動画を作るには数十万円~数百万円かかる」というイメージがありましたが、そういった固定観念を払拭したいです。

そのために、ブラウザ上で使える編集ツール、YouTube動画をショートムービーに自動的に編集するツールなど、動画活用の敷居を下げる新機能もローンチしました。ライブ動画から購買までをシームレスに誘導できるライブ機能も近日公開予定です。

新機能とは別に、動画制作が格安でできるパッケージの提供も計画中です。機能拡充とサポートサービスの両面から、動画を使ってウェブサイトの価値を高めること、ウェブサイトに主権を取り戻すことを実現していきます。


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