送り主の負担をなくし、コスト、スピードも削減 環境にも配慮した新しい配送サービス「スマリ」

ECのミカタ編集部

「スマリ」はコンビニへの商品供給便の戻り便を利用した全く新しい配送サービス。レジに並ばず、モニターにQRコードをかざすだけで返品や発送を済ませることができ、これまで無駄となっていた戻り便を有効活用するためコスト削減となり、環境にも配慮する形となっている。
スマリを提供する三菱商事株式会社の島田氏、サービス開始時からスマリを活用している株式会社ロコンドの中村氏と、株式会社エアークローゼットの志村氏にスマリの魅力について伺った。

ユーザー、店舗双方の負担をなくし、コストもリードタイムも削減!

――まずはスマリのサービスについて教えてください。

三菱商事株式会社 島田 貴博 氏

島田(スマリ) スマリはおもに、レンタル商品やEC商品の返却・返品をスムーズに行うことができるサービスで、既存のローソン店舗に関わる物流網を有効活用していることが特徴です。
ローソン店舗にモニター、プリンター、投函箱が一体となった「スマリボックス」を設置し、ユーザーはレンタルやECの事業者から送られてきた受付QRコードをモニターにかざすと受付完了、プリンターから出力される送り状ラベルを荷物に貼り付けて投函するだけで発送ができます。

レジに並ぶことなく、送り状に記入する手間もなく返品・発送が数十秒ででき、送り状ラベルには個人情報が記載されないためプライバシーへの配慮も万全です。

ローソン店舗側もレジ対応がないためクルーの負担はゼロ。スマリボックスからの回収はおにぎりやお弁当などの配送に来たドライバーが行い、戻り便のトラックに積み込んでEC事業者の物流センターに運びます。また回収は夜間に行うため投函された翌日には事業者のセンターまで届けられ、コスト面でもリードタイム面でも非常にメリットがあります。

コロナ禍で、発送を短時間で人と接触せずに済ませたいというユーザーのニーズも叶い、それが店舗側のメリットにもつながったため、ローソンからも好評をいただいています。その結果、サービス開始の2019年4月時点では10箇所あまりだった設置店が、2年で3000箇所まで広がり、現在は関東、関西、中京のローソンの2件に1件はスマリ設置店となっています。

「返品の壁」を低くし、より安心して購入していただくために

――ロコンドさん、エアークローゼットさんの事業概要を教えてください。

株式会社ロコンド 中村 昌嗣 氏

中村(ロコンド) ロコンドは、靴から始まったECサイトで、今年11年目になります。靴をECで買うときに、サイズや履き心地が合うかどうか心配される方は多く、実際に履いてみないとわからないという課題がありました。そこでロコンドでは返品やサイズ交換がしやすいECサイトであることを謳い文句としてスタートし、その後アパレル、バッグ、化粧品にも商材を広げ、現在は3000ブランドの公式取扱いショップとして展開しています。返品・交換についての送料は原則無料、セール品でも返品できるのが特徴です。

志村(エアクロ) 当社では、月額制のファッションレンタルサービスを提供しています。お客様に日常のお洋服、つまり普段着をレンタルするサービスです。

人気の高いレギュラープランでは、1回3着のお洋服をお届けし、何度でも交換が出来ます。好きなタイミングでご返却が可能で、クリーニングなどは弊社で行います。返していただいたらまた次のお洋服を3着セットでお届けして…と、次々お洋服との出会いを楽しんでいただけるサービスとなっています。
お洋服を返却いただく際、お客様にはスマリをご利用いただいています。

――スマリを導入された理由をお聞かせください。では、エアークローゼットさんから。

株式会社エアークローゼット 志村 卓也 氏

志村(エアクロ) 最初は、三菱商事さんから、「新しい物流を作りたい」というご相談がありました。
ローソンのコンビニ商品を補充する便があるわけですが、「届けた帰りの便が空なのでもったいない。CO2削減という意味でも、この空の便を何か役立てることができないか」と。
エアークローゼットは、商品の返却が前提のサービスです。なので、返品の動線として使えるのではないか…ということを話し合っていきました。すると、もともと空だった便を使うのでコストが削減できたり、コンビニを使うことでお客様にとっても手軽だったり、と様々な利点が明らかになっていました。
そこから、サービスの概要、どういう筐体にするか、ディストリビューションセンターを経由して、どのように当社へ運ぶのか、何時に持ってくるべきか、最長リードタイムはどのくらいがいいのか、といったところをヒアリングしてもらいました。EC事業者としてのリクエストを伝え、適宜取り入れてもらったわけです。

――ロコンドさんはいかがでしょうか?

中村(ロコンド) 一般的なECショップへの返品については「返品の仕方がわかりづらくてできなかった」などの不満を持っている人が多くいることがわかっていました。
スマリを導入することで、QRコードを発行するだけで済むようになり、ユーザー様の発送方法も非常にシンプルになることから、「返品の壁を低くしたい」という弊社の使命をより果たせると感じました。他社との差別化もできると思い、ローンチのタイミングから導入しています。

島田(スマリ) 当初は設置店がまだ少なかったこともあり、皆様にご協力いただいて、設置店近くのユーザー様には、スマリを優先的に活用していただけるよう、注意書きを加えていただくなどご協力いただきました。その結果大きく認知度が上がり、本当に感謝しております。

ユーザーからも「返品のストレスが減った」と好評の声が

――スマリを導入してから、どのような効果が感じられましたか。

中村(ロコンド) 送り状いらずで発送できるようになり、ユーザー様の返品体験の飛躍的な向上ができました。宅配会社での返品ですと、送り状に記入し、集荷の電話をして、集荷まで待つという負担がありましたが、スマリをお使いいただくことで、そうした手間が一切なくなり、ユーザー様ご自身のペースで、簡単に早く返品していただけるようになりました。SNSの投稿などでも「返品しやすくておすすめ」「スマリ、すごくいいよ」といったご感想をいただいています。

島田(スマリ) 宅配便の集荷依頼は2時間枠で決める必要があり、たとえば18〜20時で依頼しても何時に来るかはわかりません。なかなか来ないのでお風呂に入った途端に来るとか、20時ギリギリまで来ないなどでストレスを感じることも多い。スマリでしたらそうしたストレスを感じることなく、ご自身のペースで返品できるようになりますので、導入したEC事業者様のファンも増えると感じています。

志村(エアクロ) エアークローゼットはコンビニ返却が主流だったのですが、当時、対応していたコンビニ発送は、まだ今みたいなQRコードで返送できるシステムではなかったので、商品発送時に返送伝票を同梱していました。一般の宅急便を出すような感覚ですね。
スマリを導入してから、かなり返却の手間を省くことができ、お客様からは非常に喜ばれています。

やはり、バーコードを出して10秒で返せるため、「本当に楽だ」というお声がたくさん入っております。コンビニのレジに並ばなくてもよいので、お客様の時間も節約できます。そしてなによりも、商品を買うために並んでいる人がいるのに、荷物の発送手続のために後ろの人を待たせてしまっているという気まずい気持ちにならずにすむというところで、「ストレスがかなり軽減された」という声が多数寄せられています。

エアークローゼットは「忙しい女性」をターゲットとしたサービスですので、通勤動線にあるコンビニが使えるというところの利便性は、かなり大きいですね。

配送のコストダウンやスピードアップを実現、導入も簡単!

――EC事業者側のメリットはどのようなものがありますか。

島田(スマリ) EC事業者様側としても配送コストを削減ができますし、既存便を使っているので、環境的な負担も削減できます。コストに関しては宅配便より数割ダウンされている事業者様も多くおられます。

中村(ロコンド) スピードに関しても、宅配便での返品より、1日早く物流センターに到着するため、在庫の再販サイクルが早まり、非常に助かっています。

導入も簡単でした。新しいサービスを始める際には、煩わしいAPIの連携などが必要となりがちですが、スマリの場合はシステム自体が非常に優秀なので、そうした連携の必要もなく、開発コストもかかりませんでした。

島田(スマリ) 返品に必要となるQRコードをスマリのホームページで発行するしくみをご提供しているため、EC事業者様のシステム改修の手間は一切必要ありません。また荷物の受付から配達完了までのステータスを一覧できる管理ウエブシステムも無料でご提供しており、EC事業者様の発注書ナンバー、ユーザーIDなどユニークコード体系があればすぐ使えるようになっています。

LINEのスマリアカウントに友達登録していただくことで、LINEからQRコードを発行することもでき、数時間で導入していただくことも可能です。

「簡単に返品できること」を新規購買獲得の武器にする

「簡単に返品できること」を新規購買獲得の武器にする

―――エアークローゼットのようなレンタルサービスは、スマリと非常に相性のよいビジネスモデルなのだと思います。返却を前提としない商品販売のEC事業者にとって、スマリはどのように活用できますか?

島田(スマリ) 通常の商品販売をされているEC事業者様の場合、返品の際にスマリをご利用いただくことで顧客満足度の向上、コスト削減につながります。
返品には、大きく分けると、お客様都合での返品いわゆる「A品返品」と、商品瑕疵に伴う「B品返品」の二つがあります。
B品返品の場合、着払いで届くケースがほとんどです。スマリには、この着払いコスト自体を抑える効果があります。スマリサービスはもともとある戻り便の余積を利用しているため、通常の配送よりコストを抑えてご提供しています。
また、A品返品に対応するために、スマリ端末の中にQRコード決済をする機能を実装しています。PayPayやauPayのようなQRコード決済を使い、ユーザー様の発払いでお戻しいただくこともできます。
A品返品についても、スマリのコストメリットを活かして、お客様の発払いコストを抑えてご返品いただけるわけです。

―――返却を前提としたサービスでなくても、返品用にスマリを利用できるのですね。

島田(スマリ) はい。以前は、「返品が簡単になることで、返品商品が増えては困る」といった風潮もありました。しかし、コロナを踏まえ、返品をより戦略的に捉える方向にシフトしていっているという手応えを感じています。返品の垣根を下げることによって、結果として前売りが上がっていくのです。返品しやすいということは、お客様の心理的な購入ハードルを下げる効果があり、それが売上に貢献する。このような流れができつつあります。

さらに利便性を高め、循環型消費社会を実現するサービスを

――今後の展望をお聞かせください。

中村(ロコンド) ロコンドとしては、より多くのお客様にスマリで返品する感動体験を味わっていただくため、スマリの設置店のある地域を対象に、引き続き利用案内を出していきます。三菱商事さんへのリクエストとしては、現在、返送用の箱は100サイズまでですが、サイズ展開を含め、よりバリエーションの多い返品サービスを展開といいですね。

志村(エアクロ) エアークローゼットのシェアリングは、お洋服一着一着の着られる機会を増やし無駄に捨てられることを防ぐ「循環型の持続可能な仕組み」であると考えています。ただ弊社としては、実は、サステナブルな世界を築こうと思ってサービスを立ち上げたわけではないんです。お客様がもっと手軽に、ファッションを十分に楽しめるサービスの形は何かを追い求めた結果、ファッションのシェアリング(レンタル)という形になりました。アパレル業界には廃棄問題が目立ちますが、シェアリングというファッションの楽しみ方を広げていくことで少しでもサステナブルな仕組み作りに貢献できればと思っています。

島田(スマリ) 現在の設置拠点はローソンのみですが、それ以外の生活上のリアル拠点にも設置し、ローソンが近くにない方でも気軽に返品発送ができるようにしていきたいと考えています。さらにスマリの発送力を活用した別のサービスも展開していきます。

現在はそもそも返品可能として販売されている商品や、破損・不良品などEC事業者様が送料を負担する返品をメインにご活用いただいていますが、新機能として、お客様が送料を負担して発払いで返品できるしくみも準備中です。こちらもQRコードで受付し、電子決済でお支払いいただけるシステムとなっています。

スマリも循環型消費社会を支えるプラットフォームも目指しています。環境への意識が高まっている時代ですが、そのためにまったくものを捨てないようにするというのはまだまだハードルが高い。でも、今あるものやリソースを置きっぱなしにせず、必要なところに回していくという循環型消費社会であれば、スマリがそれを実現する入り口になれると感じています。今後もこうしたコンセプトに合うサービスをどんどん展開していきたいと思います。


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