圧倒的なインフラとリソースを有効活用! 日本郵便が進める地域密着型の3PL事業とは
EC市場の拡大で物流を取り巻く環境は大きく変化した。効率化のため業務の一部、またはすべてをアウトソースする通販事業者が増え、ロジスティクス戦略の見直しが業績を大きく左右するようになった。
こうした中、日本郵便株式会社が提供するワンストップ物流ソリューションが、その利便性の高さで注目を集めている。従業員24万人を抱える日本郵政グループの中核を担い、2万4000件におよぶ郵便局ネットワークを有する同社の強みは、地域密着型の3PL事業を提供できること。
圧倒的なインフラとリソースを武器に、通販事業者の物流課題解決に本腰を入れる。郵便・物流営業部物流ソリューション営業室の石黒太基氏と丸山浩奈氏に、同社のEC物流に対する想いや、郵便局を活用した同社ならではの物流ソリューションについて話を聞いた。
顧客に寄り添い物流から経営を変革する
――日本郵便の物流サービスについて教えてください。
丸山 当社では全国の郵便局や物流ソリューションセンター(営業倉庫)を活用し、商品の保管から流通加工、出荷、配送までを担う物流のワンストップサービスを提供しています。宅配便サービスの「ゆうパック」や小物に適した「ゆうパケット」、国際郵便などさまざまな配送手段を持ち、地域密着でお客様の物流の最適化を支援しています。
石黒 「郵便・物流ネットワーク再編」の一環として、当社では2014年頃から営業倉庫機能を持った地域区分郵便局の設置を進めています。拠点数は5年で約3倍になり、今期の登録面積は12万5000㎡にまで拡大する予定です。それに伴い物流ソリューション業務を行う3PL事業も成長し、2020年度には荷役収入が100億円に達しました。
――こうした法人向けの3PL事業は、御社の中でどのように位置付けられているのですか 。
丸山 EC物流が急増する中、郵便局ネットワークの付加価値をさらに高めるため、新しいビジネスの柱として3PLをはじめとした物流ソリューション業務の重要性は増しています。
石黒 EC物流に関して当社は“後発”ですが、物流に課題を抱えているEC事業者様とのお取引を増やしていく中で、お客様と共に物流課題の解決に取り組んできました。近年、モノ売りからコト売りの戦略が重要視されていますが、弊社ではクライアントごとに最適な物流を目指しWMS(倉庫管理システム)をカスタマイズしたり、さらには事業環境の変化に対応できる高度化人材の育成にも努めています 。
――具体的にどのような課題や悩みを抱える通販事業者が多いのでしょうか。
石黒 在庫管理と出荷体制に関するお悩みが多いと感じます。特に賞味期限やロットの管理に関してはシステムでどう対応できるのか、それこそ顧客ごとにシステムをカスタマイズしながら最適解をご提案しています。在庫回転率や期末在庫棚卸高などのデータも組み合わせて分析し、物流領域だけではなく経営視点でサポートできるよう努めています。
――物流面の見直しはコスト削減を含め、業務改善につながりそうですね。
丸山 そうですね。当社では「物流から経営を変えていく」という想いで3PL事業を推進しています。クライアントの事業規模や取扱商品、ビジネスモデルによって最適な物流のカタチは異なるので、まずは現状をしっかりとヒアリングしたうえで、顧客に寄り添ったご提案ができるよう心がけています。
物流業務の一部委託には「スモールロジ」
――日本郵便が提供する3PL事業の中で、御社の強みが特に活かされているサービスはありますか。
石黒 商品の保管から配送までの物流業務をワンストップで提供できるのはもちろんですが、物流業務の一部を委託したいというニーズには「スモールロジ」というサービスで柔軟に対応しています。これは全国約1000カ所の郵便局の空きスペースを活用した出荷代行業務で、物流に大きな投資ができないスタートアップ企業や小規模事業者様でも気軽に物流を委託できるのがポイントです。
――具体的にはどのようなサービスなのですか。
丸山 「梱包作業の人手が足りない」「出荷の締め切りまでに作業が間に合わない」「ロット数が少なすぎて他社に業務委託を断られた」など、物流でお困りの事業者様の業務を当社で請け負うサービスです。依頼主はその日に出荷する商品を郵便局に納品するだけ。あとは郵便局が業務を行い、指定の場所に商品をお届けする流れです。保管を伴わない業務であれば、キャンペーン期間中だけのスポット的なご依頼にも対応します。
――類似サービスと比較したときの優位性はありますか。
石黒 全国1000カ所の郵便局で対応できるスケールメリットはあると思います。例えば無在庫でネットショップを運営する事業者様であれば、仕入れ先の事業者に最寄りの郵便局に商品を納品してもらい、そこで梱包作業などを行ってから購入者に直接商品を送れるようになります。これだと余計な配送コストをカットできますし、お届けまでのリードタイムを大幅に短縮することができるので、事業者側のメリットは大きいでしょう。
――まさに「物流から経営を変える」を体現するサービスですね。
丸山 物流業務をすべて巻き取る一気通貫型のサービスに比べ、スモールロジは低コストで気軽にはじめられるサービスです。物流に関する困りごとは近隣の郵便局にお任せいただくことで、販売に専念できる環境ができたと荷主様からは多くの喜びの声を頂戴しています。
営業倉庫の拡充で物流課題の解決に注力
――おふたりが所属する物流ソリューション営業室では、この他どのような事業に取り組んでいるのですか。
丸山 EC事業者様に直接関係はありませんが、大規模ビルや商業施設に入居されているテナント様の荷物を一元的に集配する館内物流サービスや、不要になった重要書類をセキュリティの高いオペレーションで溶解する機密文書溶解サービスなどを提供しています。
石黒 現在は荷物を運びたい配送業者と荷物を運んでもらいたい事業者をマッチングする空きトラックの「求貨求車サービス」のリリースを検討しています。荷物を載せずに空で走っているトラックの無駄を無くすための仕組みで、実現すればドライバー不足やCO2排出量削減にも貢献する、社会貢献型のソリューションです。
――今後の3PL事業の展開について教えてください。
石黒 今後は営業倉庫の拡充を進め、2025年度には登録面積を20万㎡にまで増やす計画です。物流拠点を増やすことで、ラストワンマイルの配送の部分だけではなく、サプライチェーン全体で課題を解決できるようなサービスを創出していきたいと考えています。全国を網羅する郵便局というネットワークを強みに、EC事業者様に喜んでいただけるサービスを最大限に提供できるよう物流ソリューション事業を強化して参ります。また、JPトールロジスティクス株式会社やJP楽天ロジスティクス株式会社など関係会社と協業しながら、総合物流企業としてのプラットフォームを構築していきたいと思います。
――日本郵便の3PL事業ということで安心感がありますよね。
丸山 日本郵政グループは今年、創業150年目を迎えました。これまで郵便事業で培ってきた地域とお客様に寄り添う姿勢を大切にしながら、現在は物流ソリューション事業にもチャレンジしています。お客様の課題を“自分ごと”として捉え、その解決のために社員が一丸となってサポートしますので、まずはお気軽に相談していただきたいと思います。また、9月には日本郵便のホームページをリニューアルしました。法人向けサービスの詳細を載せていますので、そちらもぜひご覧下さい 。