業界のキーパーソンが語る 「ECみらい会議」リポート

ECのミカタ編集部


カラーミーショップを運営するGMOペパボのイベント運営チームは、EC業界の未来についてディスカッションする「ECみらい会議」という番組をeラーニングサイト「ECキャンパス」配信している。
業界の第一線で活躍するキーマンを招き、ネットショップの「みらい」を語り合う場として2回目を迎えた今回は「プラットフォーム乱立時代!EC事業者の選択と集中を考える」というテーマで出演者が2時間のディスカッションを行った。

出演者は「北欧、暮らしの道具店」を運営する株式会社クラシコム代表取締役の青木耕平氏、子供服ブランドの「ギャングスタ」、アパレル立ち上げサイト「スターテッド」など複数のサービスを運営する株式会社バンダースナッチ代表取締役の藤井裕二氏、WebマガジンECzine編集長の倭田須美恵氏、GMOペパボ取締役の星隼人氏、そして司会・モデレーターとしてGMOペパボの山下諭氏の計5人。


テーマ「0円カートがもたらしたもの」からスタート

テーマ「0円カートがもたらしたもの」からスタート左より藤井裕二氏、青木耕平氏、山下諭氏、倭田須美恵氏、星隼人氏



STORES.jpやBASEなど、業界人の間ではインスタントカートと呼ばれ、昨年にはヤフーEC革命による0円化によりユーザー登録数が急増しているという話題からディスカッションは始まった。

青木氏は、0円カートの出現によりプレイヤーには競争激化をもたらし、自分たちが思いもしなかったECの使い方や、新しい取引を社会にもたらすのではないかと語る。
複数サービスの運営を手がける藤井氏は「ヤフーが0円になりました」と言われても、事業者サイドとしてどう扱っていいかわからないと戸惑い気味。BASEなどはキャラが立っているので若者が商材を持って、新しい市場を作っている感があるが、ヤフーショッピングが狙っているのはそうじゃない感じ。全てを飲み込もうとしているのか、事業者サイドの肌感としてわからない部分があるという。

ヤフーショッピングの取り組みについて、メディア力に見合うマネタイズができていれば0円革命は起こしておらず、ECでコンバージョンを発生させることを諦めたに近い形で、リスティング広告のメニューを増やしトータルの売り上げを出していこうという戦略に見えると分析した青木氏。そうなるとやはり、メディアにコマースを付けてマネタイズするというモデルは、歴史の中で何回も失敗してきた極めて難しい取り組みなのだと改めて思ったという。
「結局、広告出す人がいっぱい出てくるので、ヤフーさんとしては無料にして出品者をひたすら集めたいっていうのは理にかなってますよね」という藤井氏の言葉が印象深い。

どのようにコンバージョン増やすのか?

どのようにコンバージョン増やすのか?


楽天とそれ以外という図式は存在しており、ハマる商材、業態がある、と青木氏。
「僕らがやっているような検索できないような曖昧なものを扱っているニッチな事業者はどこで商売するんだ?という話ですよね」それはヤフーでも楽天でも、モール外でも大差はないという。

自身が提供するブランドの商品が楽天で2割引で販売されていても、自身の公式ショップで買ってくれるお客さんが必ずいると藤井氏が説明する中、そこにしかない商品を扱うサービスとは対照的に、他の店でも買える商品構成をこだわりとした青木氏。こだわりの理由として、需要があるかわからないものを作るだけの体力もブランド力もなく、他の店舗で扱う商品にはすでにある程度の需要が見込めるからだとした。

顧客の需要をくみ取り、他店舗とどのようにズラして差別化をしていくかという話に流れ、ズラす取り組みの一つとしてそこでしかできないショッピング体験を挙げたのは青木氏だった。ディズニーランドのおみやげ屋を例に、多少高くてもその場所やブランドを選択して購入する人は一定数おり、そのようなお客様を大事にしていきたいというもので、藤井氏の公式ショップで買ってくれる利用者の話とリンクしていった。

スマホの勢い、少数派のガラケーにも対応したいカラーミーショップ

スマホの勢い、少数派のガラケーにも対応したいカラーミーショップ


カラーミーショップで店舗を運営する青木氏は、ショップをスタートした7年前と現在のカラーミーショップは異なっており、収益を上げてお互い成長してきたからこその現状があると説明。自身がショップを運営するにあたり、5年後10年後一緒に成長可能なパートナーとして最適な相手を選ぶことの重要性を説いた。

カラーミーショップを運営する側として星氏は「現状のカラーミーショップに関して言うと全然やりたいことができていない」という。特にスマホ周りは課題として優先順位を挙げて取り組み中。更に言えばガラケーにも対応しなければいけないと思っており、スマホとPCで半々くらいの利用割合の中であってもガラケーの市場は侮れない。特に高齢者の方のガラケー率は高いことに触れ、出来る限り対応してあげたいと語った。

「うちは今75%がスマートフォンですよ」と言うのは青木氏だ。6:4の4くらいだったスマートフォンが3:7くらいに成長するまでは1年くらいだったと、その環境変化の速さを振り返る。しかし、実際に購入ボタンを押す機会はまだPCが多いとする星氏。通勤途中に気に入った商品を閲覧しブックマークしておき、会社や自宅のPCで購入する、というような生活の流れを説明する。

マジックナンバー「21」

マジックナンバー「21」


PCに向かってネットを見る環境と、スマートフォンが生活に密着し常にネットが見れる状況を持つ現代人の生活スタイルが、サイトの閲覧数やコンバージョンレートを変化させていると言う青木氏。単純にコンバージョンレートの低下と受け取れないこの状況を判断するため、青木氏は訪問者の来訪回数によるセグメント分けを行い、運営の指標としているという。例えば「初めて来た人」「1〜5回の人」という具合だ。
その中で「21回以上きている」という人がアクセスと受注の半分を占めているということが判明。この21回以上のお客様の割合が減らなければ自分たちは支持して頂けているだろうと、このセグメントのお客様を主軸とした販売戦略で運営にあたっているそうだ。

一番大事なのは商材であり、美味しくないラーメン屋は売れないと同じ。ギフトショーに行くと広大なスペースに膨大な量の商品が並ぶが、欲しいと思える商品はあまりないという。だからこそ、自分だったら絶対これ欲しい、というものは必須な要素であり、扱う商品選びは非常に難しいと語った。

その後、意外と泥臭いアパレル業界の話題など、元々あったテーマを消化するというよりも、次々と話題がシフトしていきながら、業界を生きるキーパーソンたちの熱いディスカッションは続いた。

文章だけでは伝わらない今回のECみらい会議の様子は「ECキャンパス」にて11月3日まで無料試聴が可能だ。


「ECキャンパス」とは:
オンラインセミナーやECに関するイベントをリアルタイムで配信する、ネットショップ運営ノウハウを学習するeラーニングサービス


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