ECで「ハレの場面」を彩る ギフト包装が変える顧客体験
コロナ禍を機に著しい成長を続けるEC市場。贈り物を目的としたECサイト利用も増加する中で、注目されているのが株式会社マルニ・ロジコムのギフト包装サービスだ。ただ販売するのではなく、商品が手元に届く瞬間まで顧客体験を充実させるという発想は、ECの未来をどう変えるのか。同社代表の杉山慎一氏に伺った。
ECでもギフト包装が求められる時代に
―ギフトラッピング事業の概要と立ち上げまでの経緯を教えてください。
弊社は倉庫業を本業としており、昨年で設立60周年を迎えました。大手グループ企業の専属協力会社としてカタログやパンフレットなどの保管・代行発送サービスを担ってきましたが、ペーパーレス化やEC需要の拡大など、時代を取り巻くさまざまな変化に対応すべく、十数年前からECサイトの商品保管・発送代行をスタートしました。
そうした中で、あるとき「ラッピングをしてくれないか」とのお声をお客様から頂くようになったんです。当初はお断りしていたのですが、複数社からお声掛けいただいたことで、ギフト包装への隠れたニーズの高さに気付きました。こうした背景をもとに、2013年に「つつみ屋工房」を立ち上げました。日本橋高島屋に店舗を構える「つつみ屋工房」では、お持ち込みいただいた贈り物を、経験豊富なラッピングコーディネーターが丁寧に包装するサービスを行っています。
磨き上げたスキルとノウハウを活かし、現在は自社物流倉庫でのECラッピング・包装代行サービスにも力を入れています。お問い合わせを受けてから、商材やご予算、対象のセグメントや納期などについて詳しくヒアリングした上でラッピング内容・料金を個別にご提案し、きめ細やかなサービスを提供しています。
ギフトラッピングのご注文は1個から可能である一方、周年記念やお歳暮等の500個、1,000個といった大口案件についてもお客様のご要望に合わせて対応しています。本格的なロジスティクス機能を有している弊社だからこそ、まとまった物量の一時保管や個別配送にも問題なく対応可能です。
―ギフトラッピング事業のコンセプトはどのようなものですか?
物流業界では、どうしても「安く・早く」が差別化のポイントになりがちですが、それでは現場の負担も増すばかりです。そこで発想を転換し、時間を多少かけてでもお客様に納得していただけるようなサービスの実施を目指しています。倉庫業にはミスが許されない緊張感があるもので、それは必ずしも悪いことではありませんが、現場が自分たちの仕事に独自性を見い出すのは難しい現実もあります。
そうした中で、スタッフのスキルやセンスが存分に活かされるECラッピングサービスの実施により、現場の雰囲気も大きく変わりました。荷主様を通じてお客様の喜ぶ様子を耳にすることも多く、そうしたフィードバックを糧に、スタッフ一人ひとりが心を込めて包装作業に取り組んでいます。
―どんなものをラッピングしてもらえるのでしょうか?
商材の種類は多岐にわたります。通常のラッピング用紙に収まらないサイズの物でも、紙以外の素材を使うなどの工夫をしていますので、柔軟に対応が可能です。現時点では冷蔵・冷凍品への対応はしていませんが、ニーズの高さを考慮し、今後サービスを広げていく予定です。
安価な包装と一線を画す熟練のクオリティ
―各事業者はどのようなタイミングでギフト包装に興味を持つのでしょうか?
やはり「差別化」というポイントに尽きると思います。EC事業が軌道に乗り、そこから集客をさらに伸ばしていくために他社とはひと味違った顧客体験を提供したいと考えたとき、細やかな対応の一つとしてギフト包装が選択肢として浮かぶケースが多いのではないでしょうか。
特に今は、コロナ禍の影響で顔を合わせにくい状況があるからこそ、贈り物をしたい、せっかくなら丁寧な包装をしたいという消費者意識が高まっています。例えば結婚式は減少傾向にありますが、その分お祝いや誕生日の贈り物が増えている印象です。こうした状況下においてECのラッピングに力を入れることは、非常に効果的だと考えられます。
―ギフト包装で、事業者に伝えたい価値はどのようなものでしょうか?
技術あるスタッフが一つ一つに気持ちを込めて、高品質な包装を行っている点です。実店舗の「つつみ屋工房」と違って、ECのギフト包装サービスでは作業中の姿を見ていただくことはなかなか難しいのが歯がゆいところではあるのですが、現場の「熱」は相当なものです。
「つつみ屋工房」と連携することで、ラッピングコーディネーターの資格を持つ熟練スタッフが現場指導したり、時には直接作業したりできる環境があることもあって、弊社のラッピング技術の高さは傑出していると自信を持っていえます。一般的な店舗で行われる「安く・早い」包装とは一線を画すクオリティが、弊社サービスの魅力です。
エコ包装・地域貢献にも注力したい
―計画している新たな事業展開などはありますか?
昨今はエコに対する意識も高まっていますので、華やかさは残しながらも地球に優しい包装に力を入れるべく計画を進めています。名産地として知られる埼玉県小川町の和紙の作り手と連携しながら、独自のラッピング資材を開発していくプロジェクトも進行中です。小川町も含めて、全国には後継者や担い手不足に悩む和紙の生産者が多くいらっしゃいます。こうした生産者と力を合わせることで地域社会や伝統産業、地球環境にも貢献できるような事業展開をしていきたいと思っています。
また弊社の技術力でギフト包装業界の現場全体を底上げできるように、ラッピング研修やワークショップなどの開催も計画しています。
―最後に、貴社が目指すこれからのギフト包装の姿と意気込みを教えてください。
結婚式や還暦・退職祝いなど、いわゆる「ハレの場面」での利用がより一層増えると良いですよね。弊社のギフト包装サービスを通じて「ここぞ」というところで、お客様の笑顔を増やす手助けができればうれしいです。手軽に買い物ができる社会へと、私たちの暮らしを大きく変えたECですが、ギフトサービスの領域はまだまだこれから。
背景にあるのは、お客様の期待値とバックヤードが持つスキルの乖離です。弊社ではそのギャップを埋められるように、ECでも気軽にギフトが贈れる文化を醸成し、より高品質の包装サービスを望む事業者様の受け皿を目指します。