Appier Groupが実現する、パーソナライズされたオンラインAI接客
リテール業界でもDXは待ったなしの状態だ。長期化するコロナ禍で、もはや実店舗とECの垣根を越えた取り組みは欠かせない。これに対応すべくAppier Group株式会社では、リテールDXを後押しするAIソリューションを展開。同社の橘浩二氏とエリック・トン氏に、リテールDXの現状とAI活用について伺った。
実店舗の価値をオンラインストアに活かすリテールDX
―リテールDXの現状を教えてください。
エリック リテールの状況は、「新しい生活様式」に入り大きく変化しています。これまでは実店舗があるのが当たり前で、差別化のためにオンラインストアに取り組む、という販売スタイルの時代だったといえるでしょう。しかし、コロナ禍で浸透した「おうち時間」によってオンラインストアの方が当たり前となり、実店舗は稼働が制限される中で淘汰され、むしろ差別化できる「武器」となったのです。
現在求められるのは、実店舗を訪れたお客様とオンラインでコミュニケーションを保っていくことです。そこで私たちのソリューションでは、人工知能(AI)を活用することで実店舗におけるデータも取り込み、それぞれのお客様の状況を予測し提案することを実現しました。従来のオンラインツールでは多くの場合、お客様のアクションに対する機械的なパターンの動作が設定されているだけでした。これでは、自然なコミュニケーションとはいえず、実店舗でのデータも活かせていません。実店舗で蓄積したデータをオンラインのデータと統合して活用することで、顧客満足度を最大化し消費を促す。これこそが、今後EC事業者が取り組むべき課題といえます。
橘 これまでは、実店舗とオンラインストアそれぞれでデータ収集していました。そのためにお客様の実態を把握しづらく、断片的な情報では間違った分析に至る恐れがあります。しかし、これらのデータを統合しお客様の行動の全体像を予測しようとしても、一筋縄では行きません。それぞれのデータは統合を前提に設計されていないため、内容のすり合わせには膨大な時間と労力がかかるのです。そこでAIを活用することで、スピーディーかつ効率的に統合作業を実現するソリューションを開発したのです。これにより、断片的なデータをつなぎ、付加価値のあるデータを確立できます。
オンラインAI接客で「実店舗のおもてなし」を実現
―お客様の対応やマーケティングについて、AIができることについて教えてください。
橘 私たちは、AIによるデータ活用でオンラインAI接客の質向上を目指しています。例えば、これまで実店舗では、販売員がお客様のスタイルや好みを考慮して、おすすめの商品を提案してきました。しかし、多くのオンラインストアではこれが実現できていません。オンラインストアで自然なレコメンド(おすすめ)をするには、それぞれの商品ごとの膨大なタグ付けが必要となります。しかし、毎月出てくる新たな商材に適切なタグ付けをするのは、不可能に近いのが現実です。そこで、AIが画像解析して自動的にタグ付けすることで、レコメンドの精度を向上させます。
エリック 私たちのAIソリューションは、セールス・マーケティング領域を包括しています。実店舗を持つ多くの事業者は、広告やマーケティング活動にだけ注力する余裕はないのが現状です。これは店舗運営に忙殺されオンラインストアとの両立が厳しいという状況があります。ですから、私たちはマーケティング領域を一気通貫し、各事業者の状況に合わせた、最適なソリューションをご提案しているのです。
AIが顧客の状況を予測し最適なアプローチを実施
―具体的にどのようなオンラインAI接客が行われるのでしょうか。
橘 まずは顧客獲得AIシステム「CrossX(クロスエックス)」でリアルタイム予測をし、確度の高い見込み顧客を獲得します。顧客エンゲージメントには「AIQUA(アイコア)」とチャットボット「BotBonnie(ボットボニー)」が対応し、お客様の行動データや興味関心などを基に、独自のアルゴリズムで一人ひとりに合わせた適切な媒体による適切なアプローチを行います。オンライン接客とコンバージョンの最適化には「AiDeal(アイディール)」で、お客様の購入への迷いを察知して購買を後押しします。さらに購入後は、「AIXON(アイソン)」がデータサイエンスの観点からお客様の行動を予測し、再購入やリピートの可能性を探ります。
エリック 例えばブランドショップのSNSを見ているお客様がいたら、まず「BotBonnie」がチャットを通じてお客様と会話を開始し、オンラインストアへ誘導します。その後サイトでのお客様の行動を「AiDeal」で分析し、お客様がある商品の購入を悩んでいる、と検知します。もし、今アプローチしないとお客様が離脱してしまうとAIが判断したら、お客様にクーポンなどの特典をお渡しして、購買を促すといった具合です。こうした取り組みは、購買率を上げるだけでなく、販促費の効率的な運用にも役立ちます。つまり、購入が確実であるお客様にはクーポンを配布しないことで、販促費削減が可能となり、費用対効果を得られます。実店舗であれば、お客様の様子から店員が判断できますが、オンラインでは、お客様のサイト内での行動やSNSなどで行う動きを基に、AIが状況を予測して適切なアプローチをするのです。
ゴール設定に注力すべくAIと人間で業務を分担する
―御社のAIソリューションの特徴を教えてください。
橘 私たちのAIソリューションの特徴は、「予測と自動化」です。これまでのマーケティング施策は、マーケターの経験と勘に基づいて行われてきました。ですが施策に膨大な時間がかかり、本来果たすべき「目指すべき方向性を決めること」に注力できない状態でした。そこで私たちは、こうしたプロセスをAIに任せ、目指すべき方向性の検証に集中できるよう、サポートしています。
AIソリューションは、車の自動運転とカーナビを合わせたようなものです。自動運転を活用すれば、どこに行きたいか決めるだけで、その場所まで車が導いてくれます。目的地に着くまでの時間とルートは、カーナビが教えてくれます。マーケティング領域でも、こうした体験が実現しつつあります。目的地とその方向性を決めるだけで、必要なコストと得られるリターンを事前に把握・予測することが可能です。言い換えると、マーケティング活動を行う前に、どれくらいの利益が得られるかを予測することができます。これによって、費用対効果の高い、投資に対して高いリターンを見込める最適な方法に取り組めるのです。そこで大切になるのは、ゴール設定です。目的地の設定は、人間にしかできません。AIを活用することで「目的地を決める」という、本質的で付加価値の高い業務に集中できます。これにより、ビジネスをますます加速させることができるのです。
10月26〜28日、AI EXPO(幕張)に出展いたします。また10月27日にはCEOのチハン・ユーが基調講演します。
詳細はhttps://biz.q-pass.jp/f/5191/ntxr2022/seminar_register?co=dxh