カート7社による2023年ECトレンド予測 限定公開情報あり

ECのミカタ編集部

座談会参加者(左より) MIKATA株式会社 小林亮介、株式会社イーシーキューブ 梶原直樹氏、株式会社フューチャーショップ 山本大介氏、W2株式会社 戎井亮一氏、カラーミーショップ by GMOペパボ 外山佳季氏、株式会社ecbeing 斉藤淳氏、株式会社エートゥジェイ(メルカート) 座間保氏、GMOメイクショップ株式会社 田村淳氏

2023年のEC市場は国内では2022年からの物価高を受けて厳しい値上げが起きるなど楽観視できない状況があるが、とはいえ2023年もまだ成長気流に乗っているといえるだろう。その中でEC事業者はどのような価値を提供し、存在感を示せるのか。そのカギを握るとも言える、国内カートベンダー7社で座談会を開催。後編では2023年のEC業界について、トレンドを予測してもらった。

パーソナライズと越境がトレンドに?

──2023年のEC業界はどんな年になると考えていますか。皆様が考える23年のトレンドは?

田村(MakeShop) やはりSNS周りとの連動がどれだけできるかということや、話題性の高いパーソナライズ、日本らしい接客、買いやすさという部分に関して、購入者としてそういう(設計が施された)サイトを訪れたときには「この導線わかってるな」とかそういう目で見てしまうんですよね。コロナ禍でECでのお買い物体験が増えたので、SNS連動とパーソナライズ、接客のあたりがトレンドになるのでは?

座間(メルカート) 私もパーソナライズはキーワードになると考えています。サービスとしてもそこをやっていかないとお客様の購入体験は、今以上に上がることはあまりないと思うほどです。一方で、ニーズが細分化されすぎているからこそ、パーソナライズが必要という話もあるかと思いますが、汎用的なサービス提供の質を上げられる部分はまだあると思ってもいます。この汎用的なサービスを研ぎ澄ましつつ、それぞれのニーズに合わせて少しずつ対応できるようなパーソナライズが進んでくるというような1年になるような気がします。

斉藤(ecbeing) いい話と悪い話の両方あると思います。1つはセキュリティですね。2022年で印象的だったのが、周辺ツールからの漏洩事故です。ECプラットフォームからではなく、連携している外部の周辺ベンダーから漏洩したものでした。

皆さんも経験があると思いますが、大きい会社になればなるほどECサイトのセキュリティに関してチェックが厳しくされています。しかし、その一方で例えばWeb接客、EFOなど周辺ツールはそこまでチェックをされず導入に至るケースがあります。
これらのことから、ECサイトのセキュリティはプラットフォームの事だけを考えればよいわけではない、という考え方に改めるきっかけになったと思います。

もう1つは円安に燃料費、電気代の高騰、物価高が重なって、ECでも嗜好品の買い控えがあるのではないかということです。購入動機には差別化の明示、ファンマーケティングや顧客ロイヤルティの確立が重要になるのではないでしょうか。

それ以外ですと、越境とインバウンドですね。越境ECはコールセンターまで用意して本気で取り組むという事業者さんは現状まだ少ないと見ています。インバウンドで訪日客が増えた後、越境EC市場がどの程度盛り上がるのかは楽しみですね。

シームレスからユニファイドコマースまで顧客体験が進化

外山(カラーミーショップ) 以前からかもしれないですが、日本では実店舗接客とECが交わってきたように思います。コロナ禍の影響でネット購入していなかった人も買うようになり、EC市場が拡大しました。そこで底上げした消費額は減らないでしょう。逆に実店舗で買い物をする人もいなくなることはないと思いますので、両社が融合されていく段階に入ると思っています。例えば実店舗で試着したり、品物を見た後にネットショップで決済をして後日購入という方法は今もよくありますが、最近では某アパレルサイトがネットショップをリニューアルして、オンライン上で見た服を実店舗で取り置きしたり、逆に実店舗で気に入ったものがあれば持ち帰らずにネットショップで決済をして後日届くということが可能になっている。シームレスな顧客体験は、トレンドになるのかなと思っています。

戎井(W2) 数年先のトレンドかもしれませんが、ユニファイドコマース(Unified Commerce※)という概念が一層浸透し始めるのが2023年だと思っています。まだこの単語を使っている企業様はこの界隈の他のカートベンダー様含めてあまりないという印象ですが、この単語が2030年にはもう定番化して、23年がより一層その認知が広まっていく年になると思っています。

ユニファイドコマースは、店舗とECの融合という「オムニチャネル」という概念からさらにライブコマース、メタバース、SNS連携を通じて、お客様への幅広い訴求と、その訴求した後に顧客情報、購入情報を多角的に収集する取り組みです。その中心になるのがECカートだと思っています。今後この概念を意識するプレイヤーがより増えていく年になると思っています。

※ユーザーの様々な情報と統合し、ユーザーに対してパーソナライズされたサービスや顧客体験を提供する取り組み

各社、トレンドに向け既にソリューションを用意している

山本(futureshop) 「購入」に関して言えば、実店舗への再回帰の流れが前提になってきますよね。EC上でも、実店舗と同様のパーソナライズした顧客対応できるサービスで、ECと店舗を再統合を目指す動きが進むでしょう。当社が出しているソリューションで、2023年以降のトレンドに向けてサービスとして提供し始めているものも、そのような考え方に基づいています。例えば、今まではオムニチャネルで「ECと実店舗のポイントが統合されました」という感じだったと思いますが、それがさらに進化していくでしょう。具体的なサービスで言うと、LINEで個別にスタッフがコーディネート提案するやり取りなどは、本来だったら店員さんが実店舗で接客していたことをネット上で行う感じですよね。店頭で買う人も、ネットで同じような体験をパーソナライズされた状況でできる。直接店員さんと話をするような感覚です。本当にECと実店舗の垣根がなくなっていくような、そんな状況になっていくという気がします。

梶原(EC-CUBE) 先にも話がありましたが、引き続きECではセキュリティ関連は一つのトレンドかと思います。特にEC-CUBEはカスタマイズできるという特徴がありますので、いかに安心してカスタマイズしたサイトを構築・運営していただけるかという部分には力を入れています。セキュリティというのは重要な要素が一つではなくて、セキュアな「アプリケーション」を提供すること、開発・運用をする「環境」をセキュアに保つこと、そして利用者、制作者、更に我々運営者自身といった「人」への教育も含めて三位一体のセキュリティ支援が重要だと思います。EC-CUBEではこういった部分で利用者はもちろんですが、率先して対応していきながらEC市場全体のセキュリティ向上にも貢献できればと考えています。

もう一点は、もはやECというのは一般的になっていますからそれ自体を目的にするのではなく、ECを活用していかに事業を成長、もしくは変革していけるかという視点が重要だと思います。ECサイトだけではなく既存ビジネスや他社サービスとの融合、保有しているデータや資産も活用して事業全体で競争優位性を生み出していくことが企業からも一層求められているのではないでしょうか。EC-CUBEでもその点は現在重要視していて、DXを掲げる大企業の方々のニーズなどにも応えられるプロダクトに進化していますね。

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