楽天が10年かけて培った「地域創生」事業とは。 データ活用の知見やインフラなどグループのアセットを活用した、自治体との取り組みで、地域課題解決へ

ECのミカタ編集部 [PR]

地域経済の活性化やDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進など、多くの自治体が取り組む課題に対して、さまざまな企業がサポートを打ち出す一方、すぐに効果が出ない、具体的な施策が出てこないなどの理由で、継続した取り組みを実現できていないケースも多いのが実情だ。

楽天グループ株式会社では、自治体と連携して、ITの力で地域経済活性化に貢献すべく、2013年に「地域創生事業」を立ち上げた。地域創生事業の立ち上げから10年目を迎えた2023年現在では、70を超えるグループサービスとデータ活用の知見を活かし、地域の課題に寄り添うパートナーとして、自治体、そして地域の事業者との連携による地域課題の解決に尽力している。

楽天は、創業当時から「イノベーションを通じて、人々と社会をエンパワーメントする」ことを企業理念として掲げており、地域創生事業の発足は自然な流れだったと言う。

10年もの間、楽天が地域創生事業に継続して取り組む理由や取り組みの内容について、地域創生事業 ジェネラルマネージャーの塩沢友孝氏と、同エリアパートナーシップ推進グループ ヴァイスマネージャーの高橋愛氏にお伺いした。

楽天グループを地域創生活動へと向かわせる、創業時から変わらぬ“エンパワーメント”の理念

──「地域創生事業」を発足した経緯について教えてください。

地域創生事業の塩沢友孝氏(以下、塩沢) 2013年に、地域をもっと元気にしたいという想いで発足しました。当初は3人だけでのスタートでした。楽天は、1997年の創業時より「イノベーションを通じて、人々と社会をエンパワーメントする」という理念を掲げています。大企業の方々にEコマースという武器を手にしていただくということももちろん重要ですが、地域の中小企業の方々に、今までの商圏を超え、全国の人たちを相手に、自分たちの商品の魅力を知ってもらい、商売するためのお手伝いをすることが、もともとの楽天としての想いです。その意味で、「地域創生事業」の発足は自然の流れだったと思います。

──発足後、どのような展開をされていますか。

塩沢 2013年の発足後は、「楽天市場」の活用から始まり、2015年にサービス提供を開始した「楽天ふるさと納税」も併せて、地域課題の解決に楽天のサービスの活用を推進してきました。その過程で、地域の課題解決のために、「楽天市場」で地域の事業者さんが販売する産品の売り上げをどのように伸ばすのか、ふるさと納税で集めた寄付をどのように活用するかなど、地域のみなさんの声を聞きながら、地域経済活性化につながる取り組みを実施していきました。現在は、各自治体の課題に合わせ、当社の持つサービスインフラやITの知見、データ活用のノウハウを総動員して施策をご提案しています。例えば、多くの自治体で、地域の事業者さんの“売る力”を底上げするため、人材育成の支援と、産品販売につながる商品開発や販売促進の支援をして、地域にとって「稼ぐ力」をつけるための仕組み作りに取り組んでいます。このような取り組みを自治体とより密接かつ包括的に連携して行っていくために、現在47自治体と包括連携協定を締結し、その地域の課題に合わせた協定項目を掲げ、自治体と協働しながら地域課題解決や地域経済の活性化に取り組んでいます。

自治体と域内事業者と楽天の3者による「共創」の取り組みで地域経済活性化へ

──10年間の取り組みの中での印象深い取り組みや事例を教えてください。

塩沢 この10年で、私たちにとって大事な共創パートナーである「楽天市場」に関わる事業者さんたちと自治体と共に「地域を元気にする」取り組みが各地でできるようになりました。

具体的には2つの「共創」があります。

1つ目は、自治体の公式アンテナショップを、地元のEC事業者が引き受けるモデルです。

過去においても現在も、地域でおいしい農作物をつくる農家さんや、魅力的な特産品をつくる加工業者さんという「つくるプロ」の人たちの中には、自分たちの商品の価値や魅力を都市部の消費者に伝えることが得意ではない方も多くいらっしゃいます。

一方で、「楽天ショップ・オブ・ザ・イヤー」の受賞歴があるような、地域の有力な事業者さんたちは「売るプロ」として、全国に販路拡大するばかりでなく、その高い接客力を武器に多くのリピーターやファンの心を鷲掴みにしています。

この「つくるプロ」と「売るプロ」の両者が同じ地域で繋がることで、お互いの得意な領域において最大限力を発揮してもらいます。特に「売るプロ」である事業者さんたちは、作り手の想いやストーリーを消費者にわかりやすく伝える「翻訳者」の役割を担っています。

この繋がりによって、その地域の産品がより多く売れて、地域外から「外貨」の獲得ができ、結果として「税収増」と「雇用創出」という地域経済への貢献に繋がる図式が成り立ちます。

2017年に大分県から始まったこの取り組みは、その後、兵庫県や福岡県に広がり、さらに宮崎県都城市や新潟県長岡市においても、このモデルが実装されており、自治体と地域の事業者さんと、楽天という3者での「共創」ができあがっています。

2つ目の共創モデルは、人材支援です。

2000年から事業者さんに、売上アップや経営支援のためにネットショップ運営ノウハウなどを共有する場として提供している「楽天大学」のフレームワークを、地域ごとに活用した「EC支援講座」を実施しています。

2022年度は、18自治体で合計109講座を実施。内容は多岐に渡り、EC事業を始めて間もないスタートアップ店舗さん向けの内容や、商品ページの作りこみやキャッチコピー講座などのスキルアップ講座、さらには合宿形式でのスター店舗創出プロジェクトまで、地域の事業者さんの課題やお悩みに寄り添うかたちでのプログラム設計をしています。

この講座の目的は、事業者さんに学ぶ環境を提供すること。そして、地元で同じくECで頑張っている仲間をつくることです。そういう事業者同士の地域内コミュニティが全国各地にうまれ、自主的な勉強会や懇親会が実施され、みんなで地元経済を盛り上げていこうという機運を生んでいます。

たとえば、富山県では2019年度から4年間に渡ってEC支援事業を実施しています。富山県がこのEC支援事業に予算を投下する理由は、事業者のEC化をさらに拡大し、1店舗ごとの売上をあげてもらうことが、県にとっての「外貨」獲得に繋がるためです。

最近では、売上アップのためのスキルを学ぶだけではなく、「楽天市場」で豊富な実績を持つ県外の事業者さんを講師として招聘し、成長の過程における挑戦や苦悩を生の言葉で直接聞き、交流することで、自社の経営やEC店舗運営に活かしてもらえる機会が提供できています。

今後も、自治体とその域内の事業者(「楽天市場」出店店舗さんや「楽天トラベル」の施設さん)と、楽天の3者での共創を通じて、その地域がより元気になるお手伝いをしていきたいと考えています。

─さまざまな自治体と連携して取り組みをおこなっていますが、楽天の地域創生事業の特徴や強みはどのようなところにあるのでしょうか。

塩沢 「楽天市場」、「楽天ふるさと納税」、「楽天トラベル」など、楽天が運営する70以上のサービスのインフラやデータ活用の知見を活かし、楽天ならではの施策の提案・実施を通じて、地域課題の解決や地域のDX化支援に注力しています。

エリアパートナーシップ推進グループの高橋愛氏(以下、高橋) 2021年にエリアパートナー推進グループが発足し、地域の発展のための、より包括的な取り組みを拡大できるようになりました。また、2022年から自治体の職員の方々が自らデータ活用のためにツールを使いこなし、自走できるようサポートするサービス提供を開始しています。

──具体的にはどのようなサービスですか。

高橋 自治体向けのデータ分析ツール「RakuDash」(ラクダッシュ)と、データの利活用ワークショップ「RakuDemy」(ラクデミー)という2つのサービスを提供しています。

(画像提供/楽天グループ株式会社)

「RakuDash」(ラクダッシュ)は、「楽天市場」を通じた物産振興、「楽天ふるさと納税」による寄付額アップ、「楽天トラベル」を活用した観光振興など、外貨獲得・関係人口を増やすために楽天のマーケティングデータを使って分析・施策立案を行う自治体向けデータ分析ツールです。楽天は70以上のサービスと会員ID数1億超の顧客基盤を持つ楽天経済圏を形成しています。その中でも利用者が多く、地域経済と関わりの深い「楽天市場」、「楽天トラベル」、「楽天ふるさと納税」の3つのサービスに関する、購買者の基本的な属性やライフステージ、検索ランキングなどのマーケティングデータ(注)をビジュアライズした状態で分析することができます。

(注)個人や取引先含む第3者が特定されない形で、楽天グループのサービス利用履歴などを統計的に加工したデータ

自治体はこのツールを利用することで、実施する施策についてのデータ分析が可能になります。どのような属性のユーザーが、自分たちの地域に興味を持っていて、どのようなアプローチをすれば特産品を買ってくれたり、観光に訪れてくれるのか、などプロモーション施策の立案にも活用していただけます。

ただし、このツールをお渡ししてお役立てくださいとお伝えしても、いきなり活用するのはなかなか難しいと思います。そこで、どうやって活用していくのかを、2~3日間のワークショップで学んでいただく、それが超実践型ワークショップ「RakuDemy」(ラクデミー)です。

「RakuDemy」(ラクデミー)では、楽天のデータコンサルタントや地域創生事業担当者が講師となり、データ利活用の基礎をはじめ、データを活用したプロモーション施策の立案から実施、振り返りまでのPDCAサイクルを実際に体験しながら学んでいただけます。

群馬県みなかみ町で実施した「RakuDemy」の様子(画像提供/楽天グループ株式会社)

ECを通じて地域の未来を支える次世代を育成

──「RakuDash」、「RakuDemy」の提供以外にはどのような取り組みを行っていますか。

高橋 自治体と連携して、出張授業やアントレプレナーシップ講座などの実施による次世代教育にも力を入れています。2023年4月に兵庫県と締結した包括連携協定の枠組みの中にも入っていまして、協定締結に先駆けて、武庫川女子大学で次世代教育講座を実施いたしました。

学生が2つのチームに分かれ、兵庫県の特産品の兵庫県特産の「岩津ねぎ」を材料とした商品「ねぎのチカラ」を題材として、「楽天市場」内の兵庫県公式アンテナショップ「兵庫を旅するひょうごマニア」で実際に商品販売を実践するため、商品ページやマーケティングプランを検討しました。商品ページ上で商品の良さをどのように伝えるか、「楽天市場」で豊富な実績を持つ兵庫県内の店舗さんの講義を通じて実践的に考え、学んでいただき、学生からもECやマーケティングに興味を持った、もっと学んでいきたいという声が多く聞かれました。兵庫県以外でもこのような次世代教育の取り組みを拡大しており、今後、地域創生事業の新たな柱となっていくと考えています。

──最後に、今後の展望について教えてください。

高橋 近々の取り組みとして、4月に兵庫県と締結した包括連携協定のもと、スポーツ振興に取り組んでいく予定です。

サッカー・明治安田生命J1リーグに所属する、楽天グループの「ヴィッセル神戸」と連携し、県内の高校生を試合観戦に招待するほか、県内の子ども向けにサッカー教室を開催するなど、スポーツを楽しむ機会を創出します。スポーツ振興は、地域の関係人口を増やすともに地域の活性化・シビックプライド醸成につながる大きな取り組みのひとつと考えています。

2023年4月22日、楽天グループ株式会社と兵庫県はスポーツによる地域活性化や、ECおよびふるさと納税の活用による地域創生などを含む6項目において、包括連携協定を締結(画像提供/楽天グループ株式会社)

塩沢 地域における課題は多岐にわたりますが、共通の課題も多くあります。その課題解決の手段として、たとえば、「ヘルスケア推進」「高齢者のデジタルデバイド解消」「次世代教育」「スポーツ振興」があげられます。これらを、楽天のサービスおよび、地域の民間企業や団体とタッグを組み、地域の課題解決に向けて自治体の皆様とともに、取り組んでいきたいと思っています。

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