キユーピーのD2Cサービス「Qummy」開始1年で見えてきたものは【後編】
キユーピーが2022年9月28日、D2C(Direct to Consumer/消費者直販)の新サービス「Qummy®(キユーミー)」を立ち上げた。マヨネーズトップシェアのキユーピーがなぜこのサービスを始動させたのか。その背景と開始から1年間の成果について、キユーピー株式会社 カスタマーサクセス室 室長の宮下亨氏に聞いた(本記事は前後編の後編となります)。
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キユーピー愛用者の年齢層に課題
ECサイトを立ち上げて真っ先に訪れてくれたのは、キユーピー商品の元々のファン層。そうした熱心なファンの年齢層は50代、60代が多いのだという。
「この先も考えますと、もう少し若い年代のお客様を増やしていきたいということで、30代から40代の方々にもっと使っていただけるような施策を考えています」
若い年代の利用者からは「(自分で)切らなくていいカット野菜がすごくいい」という声が多い。サラダセットのパッケージサラダは使い切りなので、(自分で)捨てるところがなく、無駄なく野菜を消費でき、生ゴミも出にくい。
「エコに敏感な若い人にもっと受け入れてもらえそうな要素もありますし、家族に野菜を食べさせたいけれど、買い物をしたり、洗ったり刻んだりしている時間がない共働きの子育て世帯を助けたいという思いもあります」
そのような方にもっと利用が広がるよう、子どもでも作れる簡単サラダや、子どもと一緒に食べられるサラダ、また子どもが寝た後に夫婦でお酒を楽しむのにぴったりのおつまみ風サラダなども提案している。その他の利用例としては、買い物に行きにくくなった高齢の親に子どもが送って喜ばれている、という声もあるそうだ。
“ひと手間未満”で、手軽に一品増やしたい
「お客様のお悩みとか課題を解決したい、『忙しい時に簡単にもう一品増やしたい』『家族にもっと野菜を食べて欲しい』というお客様の課題に対して、私たちが少しでもお手伝いができればうれしいです」
いろいろな調査をすると、「調理になかなか時間をかけることができない」ということに悩みをかかえている人が多いことがわかった。そこでQummyがコンセプトの中に入れているのが“ひと手間未満”。ひと手間をかけることも難しい時に、パッケージサラダ、トッピング、ドレッシングを混ぜるだけで完成するサラダを提案している。
「日々の献立に悩みや課題を抱いているお客様が多いのですが、そういうお客様は実は他の人と自分自身の悩みなどを共有したい、コミュニティを形成したいという願望も強い。ですからそういうお客様に共感いただければ、良さが広がっていくんです。私はよくCtoCという言い方をするんですが、お客様が自然に広げてくれる、そこを目指したいですね」。
日本人のサラダをアップデートしていく
実は宮下氏自身も、キユーピーに入ってサラダに対する考え方が大きく変わったと語る。「以前は家で食べるサラダと言うと、レタスがメインでそれにキュウリ、トマト、タマネギが入るくらいのイメージでしたが、パッケージサラダにトッピングを加え、ドレッシングをかけただけでこんなに変わるのかと驚きました。いろいろ組み合わせれば無限に変化してマンネリ化することもないことにも気づかされました」
キユーピーグループ 2030ビジョンにある、「一人ひとりの食のパートナー 〜食品メーカーから食生活メーカーへ」。Qummyはそれを実現するための試みでもあるという。
「現在はサラダのマンネリ化を解消できるような提案をしていますが、この後段階的にフェーズを変えていって、Qummyを利用して年数がたてばたつほど、お客様のサラダレパートリーが増えていき、最終的には野菜料理の献立をお客様自らが自由自在に作れるようになるところまで、お手伝いしたい。そこまでいけば私たちとの信頼関係も確立しますし、キユーピーがより多くのお客様にとって欠かせない食生活メーカーになれると考えています。野菜やサラダを食べたいと思ったときに、もちろん最初にイメージしてもらえるようなECサービスにしていくのがQummyの目標です」。