EC事業者がクラファンで成功するためには?~CAMPFIREとマクアケに聞いた【後編】

佐藤周平

前編では、クラウドファンディングならではの魅力や最近の傾向について紹介してきた。後編となる本稿では、「クラウドファンディングをどのように活用するか」に焦点を当てる。引き続き、株式会社CAMPFIREの嶋崎真太郎氏(以下、CAMPFIRE 嶋崎氏)、株式会社マクアケの松岡宏治氏(以下、マクアケ 松岡氏)の解説とともにお届けする。

前編はこちらから:https://ecnomikata.com/original_news/43658/

クラファン成功の一歩目は、目的をはっきりさせること

EC事業者がクラウドファンディングを利用するうえで、まず気を付けるべきポイントは、目的を明確に決めること。「プロジェクトが目指すもの」をはっきりと定義し、実現したいことを言語化することが、成功のためのファーストステップだ。

そこに商品のカテゴリや事業の規模は関係ない。ファッション・食品・コスメ・ガジェットなど成功している商材は多岐にわたるし、今や大企業も中小企業もクラウドファンディングを活用している。

「失敗するケースでよくあるのが、『資金を集めること』そのものが目的化してしまっていることです。なぜプロジェクトを実施しようと思ったのか、プロジェクトを通じて社会とどのように関わっていきたいのか。こうしたコンセプトをしっかりと持っておくことが大切です」(CAMPFIRE 嶋崎氏)

「成功する事業者様は共通して『これからどうしていきたいか』というビジョンを明確に持っています。これは顧客との関係性を築くうえでも重要で、コミュニケーションの質に関わってきます。逆にはっきりした目的がないと、どれくらい人が集まったか、売上がどうだったか、という点だけを見てしまいがちです」(マクアケ 松岡氏)

クラウドファンディングに掲載されているEC型のプロジェクトには、いわゆる生活必需品ではない(=ないと絶対に困る、というものではない)商品が多く見られる。ユーザーの可処分所得や可処分時間をいかに豊かなものにできるか。ブレない軸を持って、ユーザーに“刺さる”ようにブランドの世界観や想いを表現し、それに紐づくページ制作やPRを実施していくことは、成功するうえで欠かせない。

目的に合わせてプラットフォームを使い分ける

どのプラットフォームを利用するかも、目的に合わせて検討する必要がある。前編で触れたように、クラウドファンディングとひと口に言っても、サービスは細分化しており、その設計や得意領域はプラットフォームごとに異なる。

今回取材した2社を例にとれば、応援購入サービスとして商品や体験の購入をメインに展開する「Makuake」と、多種多様な活動やエンタメ領域において共感を集めることを軸に活動する「CAMPFIRE」という具合だ。

例えば自社のプロジェクトが「商品や体験を知って、買って、利用してもらう」という、いわゆるECに近い体験を提供するのが目的なら、それに特化したUIとユーザー層を持つ「Makuake」が適しているといえる。

「日本には技術力のあるものづくりの中小企業や、思い溢れる飲食店が全国にたくさんいらっしゃいます。こうした何らかのプロダクトをお持ちの事業者様には、Makuakeの価値を感じていただけると思っています。当社のサービス思想として、寄付というよりは『新しい価値や体験を通じて生活を豊かにしてもらいたい』という想いを前面に出しているので、そういった価値を提案するようなプロダクトや店鋪、サービスはマッチします」(マクアケ 松岡氏)

一方で、イベントとの連携やリアル店舗といったクロスチャネル販売を視野に入れているなら、多彩な切り口でジャンルレスなプロジェクト展開ができる「CAMPFIRE」がマッチするだろう。地域創生やチャリティーなどのキーワードにも強い。

「『CAMPFIRE』はファンや人に紐づいた事業戦略をお持ちのプロジェクトを得意としています。ストーリーや作り手自身をPRすること、そしてファンに受け入れられるリターンとは何か?というのを常に意識しています。持続的にその事業のコミュニティを作って、ロイヤルカスタマーを育てていきたいと考える事業者様に特におすすめです」(CAMPFIRE 嶋崎氏)

サポート充実、チャレンジしやすい環境に

ここまで読んでみて「クラウドファンディングって難しそう……」と思われるかもしれないが、実際にはそんなに身構える必要はない。商品やビジョンがあれば、ノウハウは後からついてくる。

「せっかくクラウドファンディングに挑戦するなら成功してほしいと思っています。CAMPFIREではクラウドファンディングのノウハウを無料で学べる『CAMPFIREアカデミー』があるので、こちらを活用いただきながら事前に情報収集をしておいてもらえるとスムーズです。また、プロジェクトの大小に関係なく、いつでもスタッフにご相談いただける体制をご用意しています」(CAMPFIRE 嶋崎氏)

「Makuakeはキュレーターと呼ばれる担当者が必ずつきます。目的さえ言語化しておいてもらえれば、キュレーターがしっかりサポートします。プロジェクトの見せ方に関して私達はプロフェッショナルなので、事業者様が実現したいことに合わせて、プロの視点からアドバイスさせていただきます」(マクアケ 松岡氏)

「CAMPFIRE」「Makuake」の両サービスともサポートが非常に手厚く、どちらも申し込み後は、専任のスタッフがプロジェクト成功に向けて伴走してくれる。サービスを使いこなすための情報提供も積極的で、WEB上で豊富なナレッジに触れることもできる。

前編からの繰り返しになるが、クラウドファンディングはもはやただの資金調達のツールではない。完璧に準備を整えなくても、チャレンジできる環境も整っている。広く“面”を攻めるマスマーケティングとは違い、低リスクでコアなファンを獲得できる手法として、クラウドファンディングの利用を検討してみてほしい。


記者プロフィール

佐藤周平

WEBディレクション、ライティング、デザインからバックオフィス業務までやってきた雑食系。自身でECショップも運営しており、スタンスはかなりEC担当者寄り。取材にかこつけて、トップランナーたちからトレンドやノウハウを吸収しようとしている。

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