EC初挑戦企業も多数! 取引先の本業支援と地域活性化を目指す京都フィナンシャルグループ「ことよりモール」
取引先の販路拡大や地域活性化を目的に、地域金融機関がECモールを開設する例が増えている。さまざまなECモールが乱立する中、地域金融機関の強みを生かしたECサイトのあり方とは?また、実際に運営してみてどのような成果が出ているのだろうか。
今回は株式会社京都銀行などを擁する京都フィナンシャルグループ傘下の烏丸商事株式会社が運営するECモール「ことよりモール」を取り上げる。「地元企業の本業支援」と「地域活性化の促進」を目的に、地元の人だから知っている京都や関西の逸品など京都銀行イチオシの商品を幅広く取り揃える「ことよりモール」が目指すものとは何か。はたまた強みとは何か。京都銀行イノベーションデジタル戦略部(烏丸商事兼務) 次長 本多秀行氏に話を聞いた。
一歩踏み込んだ「本業支援」を目指しECモール開設
──烏丸商事では2022年11月28日に「ことよりモール」を開業されましたが、立ち上げの経緯をお聞かせください。
地域金融機関として金融分野以外の新しい領域にも挑戦していこうと、新規事業としてEC事業を始めました。京都銀行は、以前からビジネスマッチングをはじめ、地元企業をサポートする様々な取り組みをしてきましたが、お取引先さまの事業に対して、もう一歩踏み込んだ形で支援したいと模索していました。そうした中、EC事業なら、よりダイレクトに地元企業の本業支援につながると考えました。
──「ことよりモール」のコンセプトや目指していることを教えてください。
コンセプトは「地元企業の本業支援」と「地域活性化の促進」で、地元の人だから知っている京都の逸品や関西の逸品を全国の方にお届けすることを目指しています。
モール型ECサイトならではの苦労も
──今でこそ地銀系のECモールは全国に多くありますが、モールを開始するまでは仕組み化など多くのことが手探りだったと思います。開業当時の苦労などお聞かせください。
モール開始前の準備段階では、大きく分けて、「システム」「法務」「事務」の3つに注力し、事業の安定稼働を目指しました。
さまざまな苦労がありましたが、システム開発会社や法律事務所、ECコンサル会社など各分野のスペシャリストに助けていただきました。
──社内にECのノウハウがない状態だったと思いますが、どのようにノウハウを蓄積していったのでしょうか。
現在も各分野からの支援を受けていますが、一方で、新たに人材を採用し、徐々に内製化できる範囲を拡げています。
出店企業500社を突破、EC初挑戦も多数!
──掲載する商品はどのように選定していますか?
京都銀行に口座がある企業や個人事業主であることが前提ですが、お取引先さまから希望があれば、原則出品をお断りすることはありません。「出品する商品数をもっと絞ったほうがいいのでは」という声もありますが、「地元企業の本業支援と地域活性化」がいちばん大切であり、我々が事業を始めようとした本質となる理念です。お取引先さまのニーズを聞き、役に立てるように考え実行することが地域金融機関にとっての役割と考えています。
──立ち上げ当初は、京都銀行と取引のある関西の企業約50社からスタートしたそうですね。5年後までに出店企業700社を目指されていると聞きましたが、順調に増えているのでしょうか?
おかげさまで大変順調です。出店企業数は、2年足らずで500社を突破しましたので、このペースでいけば当初5年間で700社の目標は十分達成できると考えています。
「ことよりモール」への出店で初めてECに参入された企業さまや、「他モールや自社サイトから撤退したけど、もう一度やってみよう」と再チャレンジされた企業さまも少なくありません。
全国的にはあまり知られていなくても、地元では大人気のお店が「ことよりモール」で初めてオンライン販売に挑戦された事例もあります。
まだまだ割合としては多くはないものの、オンラインでは「ことよりモール」でしか買えない商品や、「ことよりモール」だけの特別価格の商品もラインアップしています。現在は、お取引先さまとの繋がりを生かし、出店企業さまとやりとりしながら、付加価値の高い商品を一つひとつ増やしているところです。
京都銀行を含めた京都フィナンシャルグループとしても、チャレンジされる企業さまと一緒に「ことよりモール」を成長させていければと考えています。
感じるEC事業への手応え、地銀同士の連携も
──開業から約1年半を経て、EC事業全般への手応えはいかがでしょうか。
EC初挑戦の企業さまからは「オンラインでも結構売れるやん」、「ECでの商売がなんとなく分かってきたわ」といったお声をいただいているので、予想以上の手応えを感じています。
当初は商品を1つだけ出品されていた企業が、5品、10品と増やしていただいており、「ことよりモール」への期待を感じています。出店企業さまの期待に応えようと、京都フィナンシャルグループとしても様々な施策を進めています。
京都銀行が実施している個人のお客さま向けのキャンペーンでは、従来、当選品として市販のギフトカードなどをお渡ししていましたが、「ことよりモールでお買い物ができるポイント」に順次切り替えています。また、弊社の株主優待制度でも「ことよりモールでお買い物ができるポイント」を優待品としてお渡ししています。
ポイントを使って地域の企業さまの商品を購入していただくことで、地域経済の循環に寄与できればと考えています。「ことよりモール」を通して地域活性化に本気で取り組もうとしている姿勢が伝わればと思っています。
一方で、個人ユーザーの認知はまだまだ足りないので、今後は、Web広告などプロモーションに注力していきます。
──ECモールを運営して、副次的な効果を感じることはありますか?
ECモールを提案することで、出店企業さまの商売の流れや商品のターゲット層などをより深く理解し、踏み込んだ提案ができるようになりました。お取引先さまとのリレーションが深まっていると感じます。
また、「ことよりモール」の提案をきっかけに、新たに金融分野での取引を始めさせていただいた企業さまも多数ございます。銀行がECモール出店の提案をするのは、企業さまにとっても珍しく感じておられ興味深く受け止めていただいているようです。
──地域金融機関同士の連携も行っているそうですね。
他の地域金融機関さまとタッグを組んで地銀が運営するECモールを盛り上げていきたいという思いがあり、2024年3月には、秋田銀行グループである詩の国秋田株式会社様が運営する「詩の国商店」との協業で、「秋田の手焼き煎餅」と「京都の特上玄米茶」をセットにしたコラボ商品を両社のサイトで販売しました。地域金融機関同士が連携し相互送客できればとの狙いです。
おかげさまで商品も完売し、手応えを感じています。一度やってみてスキームやフローがわかったので、今後は他の地域金融機関様ともこうした取り組みを広げていきたいです。
「こんな良いのに、こんなに美味しいのに、まだまだ知られていない」という商品をお互いの地域に紹介し合う事例を増やしていきます。