いつ、誰に、どう売る? ギフト商戦期の利益最大化のヒントは「データ」にあり【かっこ株式会社 セミナーレポート】
ギフト商戦をはじめとするイベントでせっかく施策を講じても、「その時買ってくれた顧客が定着しない」「売上は向上したものの、セール中の利益率が低かった」といった課題に直面しているEC事業者は多いのではないだろうか。このような悩みに対して「データサイエンスで解決してみませんか?」と提案するのが、8月29日開催の「ECのミカタ カンファレンス」に登壇した、かっこ株式会社だ。
同社のデータサイエンティスト 高田拓弥氏によれば、データサイエンスとは「利益の最大化を追求するためのアクションを、データに基づく客観的な数値をもとにして、実行できるようにするプロセス」のこと。【理解→分析→行動】の3つで売上・利益向上に貢献できるというデータサイエンスの有用性について高田氏が解説した、当日のセッションをレポートする。
ギフト商戦を【理解→分析→行動】で乗り切る
ロイヤリティの高い顧客と相応の利益の両方を獲得するには、客観的なデータに基づいた施策が必要だろう。そのための方法として、かっこ株式会社(以下、かっこ)が提案するのが、ユーザーや購入者が残したデータを理解、分析して行動に落とし込む「データサイエンス」だ。このデータサイエンスを活用することによって、事業者は“利益の最大化”のための戦略の立案、戦術の実施をデータに基づいて実行することができる。高田氏によれば、ギフト商戦にも応用できるデータサイエンスは3つのフェーズに分けられるという。
まずは売れ筋商品や購買行動を「理解」フェーズで見える化し、「分析」フェーズで利益の上がる成功パターンを解明、そうして見えた“勝ち筋”に沿って施策を立案して判断・実行に移すのが「行動」フェーズとなる。「『分析』のフェーズで多いのが、Excelで結果を集計して満足してしまうパターンです。売上アップができたときに要因を言語化できていないと、再現性のあるかたちで売上を伸ばせません」(高田氏)。
高田氏はデータサイエンスの活用について、アパレル小売の事例を挙げて説明を行った。まずは「理解」のフェーズから、それまでは購買金額の違いで顧客を重みづけしていたが、購買金額は必ずしも利益への貢献度を測る指標とはならない。例えばバーゲンや在庫処分で薄利になった商品を多く購入する顧客は、購入額が高くても利益への貢献度は低い。そのような顧客にクーポンを配布し続けても、利益は圧縮されるばかりだ。「この事例では、購買チャネルや値引額といった利益を算出する指標を混ぜ合わせ、利益への貢献度で顧客を見ることで、顧客の特性に合った施策を実施できました。この事例を含め、データサイエンスを用いれば、現状把握から意思決定、生産性の向上、リスク管理まで幅広い課題に対応できます」(高田氏)。
顧客の購買行動・属性の観点でデータを分析しリピーターを増やす
リピーターの獲得はどの事業者にとっても重要課題だが、自社に合った施策を継続的に立案・セオリー化するのは容易ではない。しかし、データサイエンスはこの「リピート客の増加」に対しても定量的な答えを提供できるという。「リピーターの獲得によって向上する利益額を正確に『理解』し、リピーター化した顧客の属性や行動を『分析』すると、リピートを増やすための『行動』が見えてくるので、MA(マーケティングオートメーション)などに落とし込めます。例えば購入者へのフォローメールのタイミングによってリピートの確率が変わることがわかれば、適切なタイミングでフォローを入れられます」(高田氏)。
高田氏は、年に購買回数1回の人を2回に引き上げられた場合の利益に対するインパクトを例を挙げて解説。また、2回目購入時の購買間隔に着目し、初回購買から1カ月以内に再購入する割合が最も多いという分析結果が出たとすれば、1カ月に1回のポイント還元で2回目の購買を狙ったり、1カ月間は毎週メルマガを配信したりといった、とるべき「行動」がわかるという。さらにデータを深掘りすれば、顧客の購買体験や属性によって案内の内容を変えることもできる。データに基づいて初回購買後の顧客に適切なアプローチをとり、いかにリピーターを増やせるかが、商戦期以降の事業成長に関わってくるわけだ。
データサイエンスで値引き判断を最適化
値引きを伴うセールは、顧客を集め在庫を減らす機会となる一方で、勘や経験頼みの値引きは、時に利益を圧迫することも。定価販売のほうが当然利益率は上だが、特にアパレルなどの季節ものを扱う業種では、在庫消化が難しければ値引きしてでも売り切らないと商品を現金化することができなくなる……。そんなシーンでも、データサイエンスは“最低限の値引きで在庫を売る”ヒントを与えてくれるという。
目指す状態は、シーズンに合わせて仕入れた商品を、トップシーズンでは在庫切れさせず、かつ過度な値下げをせずに高い利益率を維持して売り切ること。高田氏の事例を交えた解説によれば、在庫と値引き率の推移を“見える化”して「理解」し、理想的な売れ方をした商品の在庫消化パターンを「分析」、それをベンチマークとすることで、在庫消化の度合いに応じた値引き判断や在庫補充が実施できるようになる。「例えば、高い利益率を維持したまま売り切ることのできた商品が【初動の28日間で、在庫の50%を値引きなし】でさばけたとすると、【初動28日間で50%の在庫を消化できていない商品は、その後積極的に値引きする】といった判断につながります」(高田氏)。
このように、顧客が行動から残してくれたデータを科学的に分析することで、事業者は新規顧客の獲得からロイヤリティ向上、在庫処理までさまざまな課題を定量的な理論で解決できる。ギフト商材を扱うECサイトであれば、クリスマスやお正月といった時期には普段よりも顧客が増え、値引きの実施時期も含めた購買データが残っているはずだ。それらを「データサイエンス」として使いこなすことが、長期的な売上アップの鍵になるだろう。