ヤマト運輸全国初! 地域のEC事業者サポートに特化した新店舗「ネコサポ戸塚中央店」取材レポート

湯浅 英夫

ヤマト運輸株式会社(以下、ヤマト運輸)が2024年11月28日にオープンした「ネコサポ戸塚中央店」(神奈川県横浜市戸塚区)は、地域のEC事業者をサポートするさまざまな機能を備えた新店舗だ。ここでは荷物の発送や受け取りができるのはもちろん、月額制の保管庫や作業エリアが設けられ、保管・作業スペースは24時間365日利用できる(※1)。

ECを始めたけれど商品の保管場所がない、家族や近隣の迷惑になりそうで梱包や発送作業がやりにくいといった“困りごと”の解決につながるサービスを提供する「ネコサポ戸塚中央店」。ヤマト運輸として全国で初の試みとなる「スモールEC支援サービス」をスタートさせた同店舗を取材した。

「ネコサポ」の新サービス

「ネコサポ」はヤマト運輸の拠点を活用して地域のさまざまな困りごと・課題の解決をサポートするサービス拠点。各地の「ネコサポ」では、家事サポートや離れた家族を見守るサービス、イベント用のレンタルスペースの提供などを行っている(※2)。

その中で、2024年11月28日から「ネコサポ戸塚中央店」で始まったのが、地域のEC事業者をサポートする「スモールEC支援サービス」だ。エアコン配備の保管庫に加えて、出品用の写真を撮る撮影スペース、送り状専用の印刷用プリンターを備えた作業エリアが用意され、会員制で24時間365日利用できる(※1)。

保管庫は月額制で、0.5畳分の「保管庫S」が月額6600円(税込)、1畳分の「保管庫M」が月額1万3200円(税込)。そのほか、現在1区画のみだが保管・作業用に使える5.2畳の個室(月額5万9950円:税込)もある。月額料金は管理費込。

0.5畳分の保管庫S 。幅900mm×奥行900mm×高さ2135mm。保管庫の鍵は物理キーで、天井は金網になっている

1畳分の保管庫M。幅900mm×奥行1800mm×高さ2135mm

作業スペースは、パーティションで区切られた1畳サイズの半個室。テーブル、椅子、ライト、送り状専用の印刷プリンターと一般的なプリンターが用意してあり、ここで出荷作業などを行える。使用料は平日9時から16時までが660円/60分、それ以外の時間は1210円/60分となっている。作業エリアの奥には、商品の撮影に使えるスペースもある。

建物入口にセキュリティーを備え、保管庫エリア・作業エリアの入口付近には監視カメラを設置。店舗内はWi-Fiが設置(作業スペース利用者のみ無料)され、エアコンが配備されているほか、保管庫のドアと保管庫エリア・作業エリアの入口には鍵が付いていて利用者以外は開閉できないようになっている。

また、屋外には駐車場があり、商品を車で運び込むのに便利だ。保管庫・作業エリアとは区切られた有人店舗(宅急便受付)は8時から21時までの営業だが、入口(屋内)には「セルフ発送機」があり、屋外にはオープン型宅配便ロッカー「PUDOステーション」(※3)も設置されている。

半個室の作業エリア。各エリアにテーブル、椅子、ライト、送り状専用の印刷プリンター、足元には一般的な印刷に使えるプリンターがある

作業エリアの奥に撮影用スペースを用意

店舗前の駐車スペース。店内はおよそ半分が宅急便受付、およそ半分がEC事業者サポートのための保管・作業エリアとなっている

左写真:店舗に入ってすぐに「セルフ発送機」/右写真:オープン型宅配便ロッカー「PUDOステーション」は屋外に設置されている

保管から発送までが1カ所で行えるメリット

EC事業者が「ネコサポ戸塚中央店」を利用する場合、以下のような流れがイメージできる。会員登録を行った後、保管庫に商品を入れておき、必要に応じて撮影スペースで撮影してスマホやPCから出品作業を行う。注文が入ったら作業スペースで送り状を印刷して梱包を含めた出荷準備を済ませ、同じ建屋にある受付や「セルフ発送機」などから発送する。仕入れた商品を「ネコサポ戸塚中央店」で受け取り、そのまま保管庫に入れておくことも可能だし、受付では資材も購入できる。つまり、ECの拠点として、ここで商品の保管から発送までの作業を一括して済ませることができるというわけだ。

取材当日(2024年12月)には、実際に「ネコサポ戸塚中央店」を利用しているサンクチュアリー 代表の金田氏に話しを聞くことができた。「こちらではいつでも、すぐに出荷できるのがとても便利。(倉庫も借りているが)今までは運送会社の集荷時間に合わせて作業する必要があり、集荷まで場所を取って置いておく必要もありました。こちらでは、梱包したらすぐに出荷できます。環境も整っていて、エアコンもしっかりしています。24時間利用できるので、夜間に作業できるのも便利です」(金田氏)。

中古家電などを扱っている金田氏は5.2畳の個室をレンタル。ヤマト運輸から出荷するものを「ネコサポ戸塚中央店」に持ち込み、FBA(フルフィルメント by Amazon)の納品などに使っている

EC事業者の中には、トランクルームや貸しコンテナを利用している人もいるだろう。しかしコンテナ内で送り状作成などの発送作業を行うのは不便が多いし、そこから運送会社の営業所まで荷物を運ぶのにも時間やコストがかかる。

一方、「ネコサポ戸塚中央店」のスモールEC支援サービスは、保管庫、作業スペース、発送場所が一体になっているのが最大の強み。特に小規模のEC事業者にとっては、さまざまな手間を抑えつつ月額で手軽に使えるサービスといえる。例えば副業としてECをやっている人の場合は、商品をここに保管しておき、勤め先からの帰りに立ち寄って出荷作業するなど、夜間も含めたすき間時間を有効に活用できるだろう。

ただし制約もある。例えば冷蔵・冷凍設備はないので、要冷蔵などの温度管理が必要な食品等は保管できない(※4)。現状、向いている商材としては常温で保管でき、そこまで高額ではないもの、例えばアパレルや家電、AV機器といったものが想定できそうだ。

ヤマト運輸が「ネコサポ戸塚中央店」でスタートした本サービスは、まだ始まったばかりで実証段階にある。同社では利用者の意見を集め、ニーズを検討しつつ、設備や料金、保管庫の広さなどを見直していきたいという。さまざまな用途で活用できそうなサービスだけに、ブラッシュアップによって、ここから全国に広まっていくのか、今後の展開に期待したい。

※1:「ネコサポ戸塚中央店」営業時間/宅急便受付 8:00~21:00(年中無休)、保管・作業スペース 24時間(年中無休)
※2:「ネコサポ」で提供するサービスは店舗によって異なる。詳細は公式サイト
※3:「PUDOステーション」の詳細は公式サイト
※4:常温では保管できない物、禁忌品や危険品、貨幣や紙幣といった収納禁止品が定められている。詳細はヤマト運輸に問い合わせを


記者プロフィール

湯浅 英夫

フリーライター。新潟県上越市生まれ。1992年、慶應義塾大学理工学部機械工学科卒。PC、スマートフォン、ネットサービス、デジタルオーディオ機器などIT関連を中心に執筆。主な著書に「挑戦すれば必ずできる 自作パソコン完全組み立てガイド」(技術評論社)、「大きな字だからスグ分かる!エクセル2013入門 Windows 8対応」(マイナビ)、「Excel2000 300の技」(技術評論社)がある。

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