中川政七商店はなぜ「ReviCo」を選んだのか? ものづくりと顧客の声をつなぐレビューの力
日本の工芸をベースに、全国約800のメーカーと協業した生活雑貨を実店舗とECで展開している株式会社中川政七商店(以下、中川政七商店)。同社はレビューマーケティングプラットフォーム「ReviCo」の導入後、公式サイトにおける商品レビュー数が急増し、さまざまな好影響があったという。300年の歴史を持つ中川政七商店は、「ReviCo」で集めたレビューをどのように事業に活かしているのだろうか。その取り組みについて、同社 コミュニケーションデザイン室 中田勇樹氏と「ReviCo」を提供する株式会社ReviCoの代表取締役 高橋直樹氏に聞いた。
ABテストでレビューの重要性を認識
――(中田氏に)まず中川政七商店が現在手掛けている事業について教えてください。
株式会社中川政七商店 コミュニケーションデザイン室 中田勇樹氏(以下、中川政七商店 中田) 1716年に創業し、奈良晒(ならざらし)の卸問屋として商いを始め、近年は「日本の工芸を元気にする!」をビジョンに、工芸業界初のSPA(製造小売り)業態を確立し、全国に約60の直営店を展開しています。その他には産地支援事業として、工芸メーカーのコンサルティングや、教育支援、合同展示会「大日本市(だいにっぽんいち)」の開催など多角的に取り組んでいます。
――ECを始められたのは、いつ頃からでしょう。
中川政七商店 中田 ECというには名ばかりの感じではあったのですが、2007年頃からスタートし、楽天市場に出店していた時期もありましたが、「販路をなるべく自社で集約させていきたい」という方針で、2016年頃から「ecbeing」を導入して自社サイトをきちんとしたかたちで立ち上げました。2019年にサイトを大幅にリニューアルし、その後「ecbeing」と同じグループ(※)から提供されている「ReviCo」を導入しました。
――「ReviCo」を導入した背景と、それまでの経緯を伺わせてください。
中川政七商店 中田 元々「もっとレビューを大切にしたい」という声は、社内でもありました。ただ、弊社が商いにしている工芸は大量生産ではないために、大半の商品が売り切ったところで商品ページを閉じてしまいます。したがってレビューに力を入れても、それがすぐに他のお客様の目に触れる機会が少ないのです。とはいえサイト画面からは消えても、裏側ではデータとして残っていますので、それを基に商品の改善や開発の参考にするということには役立つのですが……。
そうした状態の中で“レビューをためること”にどれだけ意味があるのかについて、社内で議論が続いていました。「レビューがあることでお客様が商品を選ぶ際の参考になり、より満足度の高いお買い物ができるのではないか」という意見も、ずっとありました。そこで試しに、当時Googleで提供していた無料でABテストができるツールを使って検証してみたんです。手動でレビューを表示したり消したりするものだったので、大量の商品ではできず3商品ほど試してみたのですが、PVが5000から6000ほどたまったタイミングで確認したところ、レビューがあったほうがコンバージョン率(サイトに来訪したユーザーが利益につながるアクションをすること)が0.2から0.5ポイントほど高い結果となりました。2週間から1カ月ほど続けてコンバージョン率はずっと高いまま変わらなかったので、レビューが購買行動に寄与していることがわかりました。そこでレビューの改善施策を進めるために、「ecbeing」のパッケージを補うかたちで「ReviCo」を導入したというのが始まりです。
※「ecbeing」は株式会社ecbeingが提供するECサイト構築プラットフォーム。株式会社ReviCoはソフトクリエイトホールディングスグループのグループ会社で、株式会社ecbeingは関連会社にあたる
中川政七商店の定番品(中川政七商店公式オンラインストア「特集」ページより)
高いレビュー投稿率を実現しつつセキュリティーも担保
――(高橋氏に)「ReviCo」の機能について教えてください。
株式会社ReviCo 代表取締役 高橋直樹氏(以下、ReviCo 高橋) 私どもはecbeing社の関連会社で、レビューマーケティングプラットフォームである「ReviCo」を提供しています。レビューが多く集まれば集まるほどコンバージョン率が上昇するということはデータから明らかなのですが、一番の課題はレビューを能動的に書いてくださる方が少ないという点です。そこで自動でレビュー依頼メールを送ったり、ログインなしでレビューを投稿できるような導線を作ったり、また投稿した方にReviCoで運営するインセンティブ付きのキャンペーンを案内したりと、投稿を集めやすくするさまざまな機能を「ReviCo」で提供することで、平均して購買者の10%前後、約10人に1人がレビューを投稿してくださっているという結果が出ています。実際、中川政七商店様でも10%近い投稿率を実現しております。
――レビュー投稿率が約1割というのは驚きの数字ですが、投稿を促すために重視していることやサービスの特徴を教えてください。
ReviCo 高橋 投稿に対してインセンティブを付与する施策は非常に効果的なのですが、会社様の規模によっては、インセンティブ付与のコストを負担する余裕がない場合もあります。そこでご導入いただいた会社様を横串で支援させていただくかたちとして、弊社が費用を負担してギフト券をプレゼントするといったキャンペーンを常に実施しています。また親会社であるソフトクリエイトホールディングスグループはセキュリティーを非常に重視しており、「ReviCo」も同等のセキュリティー基準を担保しています。それによってJR東日本様、コーセープロビジョン様といった大手企業の厳しいセキュリティー基準をクリアしています。
――(中田氏に)「ReviCo」導入の過程でこだわったポイントをお聞かせください。
中川政七商店 中田 サイトにレビューの仕組みを入れてポイント連携までしようとすると、結構な工数がかかります。その間サイトが止まってしまうため、できるだけ早く導入できるということを重視しましたが、ReviCo様は、導入までがものすごく早かったので、助かりました。またUIも非常にわかりやすく、弊社のサイトとも違和感なくなじむ仕様でしたので、そのあたりも加味して選ばせていただきました。また、リソース的にもセキュリティー専門の部門を設けるのがなかなか難しいので、高橋様のお話しにあったセキュリティーの部分は非常に助かっており、とてもありがたいです。また弊社は実店舗を軸としているために、店舗で購入された方のレビューも収集し活用していきたいと思い、それが容易に実現できる点も考慮し、ReviCo様を採用いたしました。
ReviCo 高橋 店舗の売上に関しては先に導入されていた「ecbeing」でしっかりと顧客データを管理していたので、スムーズに連携しながら実店舗での購入者様にもレビューを書いていただける仕組みを作ることができました。レビュー投稿率は、ECで購入されたお客様のほうが高いのですが、実店舗で購入されたお客様のレビューも、非常に多くの件数が集まっています。
導入直後から格段に、しかも商品ごとの偏りなくレビューが増えた
――(中田氏に)「ReviCo」導入後、どういった効果がありましたか。
中川政七商店 中田 わかりやすいのはレビューの量ですね。「ReviCo」導入前は対象がECで購入された商品のみだったこともあり、1カ月のレビュー数が100から200くらいでした。でも「ReviCo」を導入してから格段にレビュー数が増え、導入翌月の計測では1週間で600から800ほどになり、量の面でそれまでと違う次元になりました。また導入以前はどうしても特定の人気商品にレビューが多く付く傾向にありましたが、導入後はどの商品にもある程度まんべんなくレビューを書いていただけるようになりましたね。これだけ集まるようになった理由はやはり丁寧なレビュー依頼メール。文章を手紙のように変えていたり、サイトにログインせずとも依頼メールから直接投稿ができるので、お客様がレビューを投稿しやすくなっているのだと思っています。
――それだけ格段にレビューが増えると、それをチェックするのも大変なのでは。
中川政七商店 中田 今、平均して週に800件前後、月に3600件ほどのレビューがありますが、生成AIも使ってチェックしています。全部を一度生成AIに読み込ませて、特定のキーワードを含んでいるものを見つけるというやり方をしているので、レビューのチェックにかかる時間は週に1度、30分ほどです。「ReviCo」導入前は全てのレビューを見ていたのですが、導入後、ありがたいことに予想以上に増えたので全件を目視で正確にチェックするのは厳しくなったことで生成AIの活用というアプローチを検討した面もあります。このようにチェックの仕方を見直す機会になったことも、「ReviCo」を導入したメリットの一つかもしれませんね。
また生成AIで全レビューをチェックすることで、商品の不具合の可能性にもより早く気付くことができるようになりました。その場合には購入者様にいち早く安心いただけるためにもできるだけこまやかに対応したいと考えており、弊社ではさまざまな用途でレビューを活用しています。
――中川政七商店の商品を長年愛用している方、リピート購入されている方も多いと思います。レビューの内容を商品開発の参考にすることはありますか。
中川政七商店 中田 弊社は基本的にプロダクトアウトの視点でものづくりを行っていますが、レビューにあるお客様の気付きなども取り入れながら、より使っていただきやすい商品を模索できていると思います。
また、レビューの大切さを再認識したきっかけとして私たちが行ったことをお話しさせていただくと、「ReviCo」導入後に、お客様が商品ページの中をどの順番で見ているのかを、外部ツールを使って調べました。すると、まず商品写真を見て、次に「レビューを見る」を押してレビューエリアにスクロールし、商品詳細よりも先にレビューを読む方が多かったんです。レビューを見終わり、興味があればページ上部(の商品説明エリア)に戻ってくるという流れで、どのページでもだいたい同じ導線でした。これは私たちも気が付かなかったのですが、改めて考えれば、自分も他のECサイトで同じように見ているなと。お客様が見る順序がわかったことで今まで以上にレビューの大切さを感じ、現在もUIの改善も含めて取り組んでいます。
――多く集まると否定的なレビューもゼロではないと思います。それらへの対応はどのようにされていますか。
中川政七商店 中田 弊社では、レビューの公開は全て自動承認です。マイナスの印象を持たれるレビューが表示されるリスクはもちろんありますが、それらは「早く直したほうがいい」という大切なお客様の声として捉えています。(前述のように)そもそも1商品の数が少ないために、売り切れる前に迅速な改善が求められるため、弊社のものづくりの特性を鑑みても、いち早くお声をいただくことは必要だと考えています。
――(お2人に)最後に、レビューに関する今後の取り組みについて教えてください。
中川政七商店 中田 レビューは、販売する側にとってのメリットはもちろんありますが、お客様にとって、ご自身で購入されたものについて文章にすることで、より愛着を持っていただく意味もあると考えています。ただ弊社は商品の切り替えが多いので、「とても気に入っていたものにレビューを書いたのですが、商品ページが閉じてしまって見られなくなったのが悲しい」というご意見もいただいています。そこで今、そうした声にお応えできるように、商品とは別のページでレビューがまとめて読める仕組みを作ろうと思っております。また、レビューは世の中的にも注目されて情報価値が高いものになってきていると思いますが、だからこそ誰が書いているかの重要性が高くなってきていると思いますし、企業側がそのハンドリングをやっていかないといけないと思っています。
おかげさまでレビューが非常に増えたので、今後は見ている方にとって価値が高い、最適なレビューをお届けできるようにReviCo様と一緒に取り組んでいきます。
ReviCo 高橋 近年、レビューを“購買後の次のアクションを起こしてもらうためのデータ”として活用される会社が増えています。弊社もそこに着目しており、例えばある商品のレビューを見ている人に、類似する商品を推奨するような機能を今後提供していくため、それに先立ちレコメンドサービスを2024年10月から開始しております。これは一例ですが、今後もレビューを定量データとしてだけでなく定性データとして生かしていく、取得できたデータをブランドや商品のファン化の促進に活用していただくといったかたちでも、導入企業様を支援できるのではと考えています。