“プレイヤー目線”で世界とつながる―― 人生を変えた山田写真機店のeBay活用法
学生時代から写真が大好きだったという山田真央氏は2019年、eBayで中古フィルムカメラの販売を始めた。同氏を突き動かしたのは、強い独立心と「カメラが好きだ」という真っすぐな思い。eBayの中でもライバルが多く、レッドオーシャンと言えるカメラを商材に、山田氏はどのようにビジネスを拡大させてきたのだろうか。現在、山田写真機店のオーナーとしてさらなる飛躍を期す山田氏に、eBayを始めたきっかけや運営ノウハウ、今後の展望について話を聞いた。
どん底の人生で見つけた「趣味で稼ぐ」方法
――山田様はeBayでどのような事業を展開されているのですか。
私がオーナーを務める山田写真機店では、中古のフィルムカメラやレンズ、各種アクセサリーなどを取り扱っています。eBayに初めてカメラを出品したのは、私が大学生だった2019年。それ以来、海外向けの販売はeBayだけで行っています。当時は米国向けが中心でしたが、現在では欧州やオーストラリアなどへの販売が増えています。
――中古カメラの販売を始めたきっかけは何だったのでしょうか。
学生時代から写真を撮るのが趣味でした。中古のカメラを購入して撮影を楽しみ、新しいものが欲しくなるとそれを売ってまた集めるという繰り返しで。そんなとき偶然にeBayの存在を知り、自分が好きなフィルムカメラの素晴らしさを世界の人々にも知ってほしいと考えたのが、事業を始めるきっかけでした。
――もともと独立志向は強かったのですか。
私は高校卒業まで児童養護施設で暮らし、新聞配達をしながら大学に通っていたんです。実家もなく、教育もろくに受けられない状況でしたので、他の人と同じように就職していてはビジネスでは勝てないと考えるようになりました。人生において明らかにマイナス要因が多かったので、昔から独立志向は強かったと思います。
――海外向けの販売は当初から考えておられたのですか。
そうですね。海外は国内よりも圧倒的にマーケットが大きいですし、調べてみるとeBayで中古カメラが高額で売買されている事実もあったので、最初から越境ECを考えていました。同じ商品なら、より利益率の高いマーケットで販売した方がもうかるのは当然ですよね。運転資金は当時の貯金額10万円と定め、この範囲でまずはやってみようと思いました。
――ビジネスはすぐに軌道に乗ったのでしょうか。
eBayを知った翌日に、まずは手持ちのフィルムカメラを5品ほど出品してみました。すると3日後、3000円で購入したカメラが99ドルで売れたんです。結局初月は2万円ほどの利益が出せ、この成功体験が大きな自信につながりました。もともとカメラに関する知識や仕入れのノウハウは持っていたので「eBay一本でやっていける」と確信し、大学卒業後は就職せず、eBayでの販売を本格化させて今に至ります。
“プレイヤー目線”が買い手の安心感につながる
――eBayでビジネスをして“壁”を感じたことはありますか。苦労した点や難しいと感じたことがあれば教えてください。
ビジネスを始めたばかりの頃は、問い合わせやクレーム対応に苦労しました。カメラの使い方がわからず「動かない」とおっしゃるお客様には動画のマニュアルを作成してお送りしたり、詐欺まがいのクレームを寄せる方には「証拠の画像を送ってほしい」と強気に交渉したりもしましたね。当初は英語でのコミュニケーションも苦手でしたが、クレームや問い合わせはパターン化してくるので、経験を積むことで苦手意識は自然に解消されました。
――動画マニュアルは海外のバイヤー(買い手)にとって、心強いケアになりそうですね。では逆に、どのようなことに喜びややりがいを感じていらっしゃいますか。
日本ではまったく人気がなくても、海外で高く評価されるカメラはたくさんあります。そういうカメラを安く仕入れ、その価値を理解している人に向けて販売するというのは、新たな市場を切り開いていくようで非常にやりがいを感じます。また、レンズを購入いただいたお客様が、ご自身で撮影した写真を送ってくださることもあります。そうした売り手と買い手という関係性を超えた密なコミュニケーションができる点もeBayの魅力です。
――バイヤーとのやり取りで、特に気をつけていることはありますか。
商品に傷や不具合などがあれば、包み隠さず全てオープンにすること。eBayは“宝探しのプラットフォーム”と言われるように、基本的には“一点もの”が売買されるので、こうした姿勢は大切にしています。また、日本人は良くも悪くも対応が丁寧すぎて、かえって外国の方に冷たい印象を与えることが少なくないので、よりフランクなコミュニケーションを心がけています。
――eBayで中古カメラ関連製品は非常に人気があります。ライバルのセラー(売り手)も多く、いわばレッドオーシャンの環境の中で、どのように差別化を図っているのでしょうか。
販売においては“プレイヤー目線”を重視しています。山田写真機店で扱うカメラは、マニア向けのコレクション商品ではなく、日常使いできる実用的なカメラです。だからこそ購入者がすぐにカメラを使えるよう、動作確認や不具合の情報共有などはしっかりと行うようにしています。なにより大切なのは、取引に安心感を持ってもらうこと。この安心感がポジティブなフィードバックにつながり、ひいてはバイヤーから選ばれる店舗になると考えています。
イーベイ・ジャパン発表「2024年 第3四半期 越境ECレポート」より。2024年7~9月に日本セラーからeBayに出品されたアイテムのカテゴリーランキング<取引額TOP10>において、カメラレンズ&フィルターが4位、デジタルカメラが9位。デジタルカメラは2023年同期比で2桁成長となった
まずは一歩踏み出す。そして挑戦を継続する
――2024年8月に、本社を岡山から東京に移転されたそうですね。
もともと東京で勝負したいという気持ちが強くありました。東京にオフィスを構えると固定費は増えますが、eBayで安定して利益が出せるようになったので、このタイミングで本社移転を決めました。現在は新しく従業員を4人雇い、積み上げてきた仕入れや販売のノウハウ、ナレッジの共有を図っています。組織拡大の過渡期にあるので、自分自身とてもワクワクしています。
――今後の事業展開や、中長期的な計画・目標をお聞かせください。
夢は都内でカメラ店を開業すること。撮影スタジオを併設した実店舗で、そこで中古カメラの売買も行いたいです。写真好きが集まれる「場」を提供して、カメラに関する全てをサポートする企業を目指します。もちろん経営の軸にはeBayを据えるつもりです。しっかり利益を確保するだけでなく、そこで得られる海外の最新トレンドやユーザーの声をマーケティングに活かし、新たなビジネスにも挑戦したいと考えています。
――最後に、eBayで成功するための秘訣やノウハウ、これからeBayに挑戦する人たちへのアドバイスをお願いします。
これからeBayに挑戦する方は、あれこれと考える前にまずは一歩踏み出してみることが大切です。どんな商材でもとにかく出品してみて、トライ&エラーを繰り返しながら挑戦を継続することが成功への近道です。
すでにeBayを利用されている方は、「当たり前のことが当たり前にできているかどうか」を、改めてチェックしてみると良いと思います。商品のタイトルや説明文に誤字・脱字はないか、文法は正しいか、使用する写真やテンプレートのデザインは適切か――。繰り返しになりますが、大切なのは安心感を持ってもらうことです。eBayでの取引においては、バイヤーの不安要素を可能な限り取り除くよう心がけてみてください。