スペシャライズドのOMO戦略 ~200万円のロードバイクをどう売るか?~ 【スペシャライズド・ジャパン セミナーレポート】

ECのミカタ編集部

2024年12月10日~13日の4日間にわたって開催された、awoo株式会社主催の「ファッションECカンファレンス2024」。その2日目のセッションに、アメリカのカリフォルニア州に本社を置き、「Pedal the Planet Forward (ペダルを回して地球を前に進めよう)」をミッションに掲げるスポーツ自転車ブランドのスペシャライズド・ジャパン合同会社が登壇した。

200万円の高級バイクを販売する戦略やブランドロイヤルティを高める施策について語られた同社 シニアデジタルコマースマネージャー 谷口幸生氏と、本カンファレンスの協力企業のひとつでもあるニフティライフスタイル株式会社のチームリーダー 早瀬和希氏のパネルディスカッションの模様をお届けする。

800円から200万円以上の幅広い商品を展開している

ニフティライフスタイル株式会社 チームリーダー 早瀬和希氏(以下、ニフティライフスタイル 早瀬) まずは、スペシャライズド・ジャパン様のECサイトについてお聞かせください。

スペシャライズド・ジャパン合同会社 シニアデジタルコマースマネージャー 谷口幸生氏(以下、スペシャライズド・ジャパン 谷口) 私たちは、ECサイトとブランドサイトの2サイトを運営しています。ブランドサイトはディープなコンテンツやプロダクトストーリーを掲載し、ECサイトでは購買体験がスムーズになるように新着アイテムや売れ筋ランキング、最新情報などをわかりやすく配置しています。私たちのECサイトの特徴は、800円ほどのチューブから200万円以上のバイクまでを取り揃えている点ですね。

ニフティライフスタイル 早瀬 実際に200万円もするバイクは売れているのでしょうか。

スペシャライズド・ジャパン 谷口 ありがたいことに売れています。株式会社KINTOのリサーチによると、ECで10万円以上の買い物をしたことがある人は半数以上いることがわかりました。ECでの購入の幅は広がっていると感じます。

販売につなげるために、OMOを含めたあらゆる戦略を実施

ニフティライフスタイル 早瀬 スペシャライズド・ジャパン様のリテンションに対する取り組みとして、メルマガの運用についてお聞かせください。

※本記事内で掲載の画像はカンファレンス登壇資料より (以下同)

スペシャライズド・ジャパン 谷口 流入が多いのはGoogle広告やオーガニックの検索ですが、私たちはロイヤルティが高いお客様が多く、レスポンスが早いのはメルマガです。受注額や平均滞在時間もメルマガ経由のお客様の方が良い数字が出ています。メルマガ配信の際は、できるだけ文面をコンパクトにしてECサイトに流入させることや反応の良い配信タイミング、SNSの投稿との連動性を意識しています。その結果、開封率は40〜50%と高い数字を維持できていますね。

ニフティライフスタイル 早瀬 今後はステップメールにも力を入れていきたいと伺いました。

スペシャライズド・ジャパン 谷口 当初はカートに入れたままで購入に至っていないお客様のかご落ちを防ぐために導入しました。配信を開始したところCVRは30%向上しました。かご落ち以外では、休眠顧客の掘り起こしや、会員登録後の未購入のお客様に対してメールを配信しています。また、特定の商品を購入した1カ月後に関連商品の案内メールを送ることも予定しています。

ニフティライフスタイル 早瀬 今後はアプリも導入されるそうですね。

スペシャライズド・ジャパン 谷口 アプリは本国のアメリカでスタートしており、順次日本でも導入予定です。ECに特化したものというより、ブランド全体の顧客体験を高めるものだと認識しています。アプリのメリットにはプッシュ通知を送れることやスマートフォンの画面にロゴを配置できることもありますが、私たちは購入から一定期間が経過したお客様にメンテナンスの案内を送ることなどを想定しています。

ニフティライフスタイル 早瀬 続いて、高額商品を売るためのコンバージョンに関する施策をお聞かせください。

スペシャライズド・ジャパン 谷口 まずは受取方法を「店頭受取」と「自宅配送」から選べるようにしています。ご自宅の近くに店舗があったり組み立てに不安だったりする人は「店頭受取」にし、スポーツバイクに慣れていたり近くに店舗がなかったりしたら「自宅配送」がおすすめです。

ニフティライフスタイル 早瀬 UGCについてもお聞かせください。

スペシャライズド・ジャパン 谷口 高額の買い物になるので、お客様はサイト内外で多くの情報を吟味されると思います。そこでCVを高めるためにUGCを活用しています。サイクリングには自分の体験や達成したことをシェアするカルチャーがあるので、Instagramで「#️スペシャライズド」と付いた投稿などをECサイトのトップページに配置しました。投稿から該当する商品のページに遷移できますし、商品ページにもUGCの投稿が並んでいます。UGCの投稿を経由したお客様はCVRが2倍になるという結果も出ています。

実際に自分の投稿が弊社ECサイトに掲載されたお客様が、その画面をスクリーンショットしてご自身のInstagramに再度投稿しているケースも多く見られます。非常に良いコンテンツになっていますね。

ニフティライフスタイル 早瀬 オフラインでの試乗も特徴的だと感じます。

スペシャライズド・ジャパン 谷口 店舗で試乗していただいた後に検討してECで購入もできますし、ECで興味を持った商品の色違いを店舗で比べて購入することもできます。今後もOMO戦略は加速させていきたいですね。

※本記事内で掲載の画像はカンファレンス登壇資料より

ニフティライフスタイル 早瀬 直接購入につなげるためのキャンペーンも実施されましたよね。

スペシャライズド・ジャパン 谷口 2024年は無金利ローンのキャンペーンを2回実施しました。キャンペーンはお客様に伝えることが大切なので、サイトトップや商品名にも明記し、確実に伝わる環境を整えています。また、データフィードを活用しているので、商品名にキャンペーンを明記すると自動でXやMeta、LINEなどの広告表示にもキャンペーン名が反映されます。

ニフティライフスタイル 早瀬 集客方法は、谷口様が入社されてから変化はありましたでしょうか。

スペシャライズド・ジャパン 谷口 私が入社後はサイトのフルリニューアルと広告配信の最適化を実施しました。ブランドの強さもあったのでSEO対策やSNS運用は確実に実施し、広告はGoogleとYahoo!のリスティングやMeta広告、Criteo広告などを回しています。今は配信先が広がっており、数人で管理するのは大変です。今はデータフィードを活用して効率的に配信できていますが、自分たちが意図しない画像が媒体側で勝手にAI生成されて表示されたことがあったので、効率化しつつもブランド保護のために適切に管理することは大切です。

広告のKPIはROASだけを見るのではなく、目的ごとに設定しています。例えば、ブランド認知が目的であればインプレッション数とクリック数、売上を上げるためならCVやCVRをKPIとします。

ニフティライフスタイル 早瀬 OMOについては、私たちもGoogleローカル検索広告でサポートの準備を進めています。Googleローカル検索広告とは、データフィード連携することで、Googleショッピングでオンラインだけでなく実店舗での購入も選択できる仕組みです。OMO戦略について谷口様の思いをお聞かせください。

スペシャライズド・ジャパン 谷口 EC担当者の中には、EC在庫と店頭在庫、倉庫在庫が分かれていれることに苦労している人が多いかもしれません。お客様からしても、オンラインでは買えるけど近くの店舗では買えないなどの経験もあるでしょう。このようなギャップを埋めるための施策としてGoogleローカル検索広告に取り組んでいます。

リアルとオンラインのずれが生じない顧客体験を提供していきたい

ニフティライフスタイル 早瀬 最後に、スペシャライズド・ジャパン様の今後の展望をお聞かせください。

スペシャライズド・ジャパン 谷口 店頭受取や自宅配送、店頭在庫広告などの取り組みを進め、顧客体験をデジタルでリードし、オムニチャネルのリーダーとしてスペシャライズドを確立したいです。施策を進める中では、リアルとオンラインのズレといった課題も生じると思いますが、ユーザー本位の顧客体験を提供できる取り組みを続けていきたいと考えています。

※本記事内で掲載の画像はカンファレンス登壇資料より


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