EC売上123%を達成したリーバイ・ストラウスジャパンのCRM・OMO戦略とは 【リーバイ・ストラウスジャパン セミナーレポート】

ECのミカタ編集部

2024年12月10日~13日に開催されたawoo株式会社主催の「ファッションECカンファレンス2024」に、150年以上の歴史を持つ「リーバイス®」ブランドを扱うリーバイ・ストラウスジャパン株式会社が登壇。同社はDTCの強化に取り組む一環としてCRMをリニューアルし、成果を出している。

CRM施策や他国との取り組みの違いについて語られた、リーバイ・ストラウスジャパン株式会社 E-Commerce Manager 佐竹良介氏と、同社も活用するスタッフDXサービス「STAFF START(スタッフスタート)」を提供する株式会社バニッシュ・スタンダード Head of Sales 薄井崇史氏のパネルディスカッションの模様をお届けする。

ファッションEC上位の平均成長率を超える123%の伸びを達成

株式会社バニッシュ・スタンダード Head of Sales 薄井崇史氏(以下、バニッシュ・スタンダード 薄井) リーバイ・ストラウスジャパン様の日本独自の取り組みをお聞かせください。

リーバイ・ストラウスジャパン株式会社 E-Commerce Manager 佐竹良介氏(以下、リーバイ・ストラウスジャパン 佐竹 バニッシュ・スタンダード様のサービスである「スタッフスタート」を活用しています。スタッフのコーディネート投稿機能「SNAP PLAY」やスタッフレビュー機能などを使い続ける中、売上やトラフィックが増加しており、グローバルでも注目を集めています。

店舗スタッフも積極的に使っており、ららぽーとTOKYO-BAYのスタッフは令和のカリスマ店員を決める「STAFF OF THE YEAR 2024」でファイナリストに選ばれました。

バニッシュ・スタンダード 薄井 リーバイ・ストラウスジャパン様は人材輩出のみならす、EC売上でも成果を出しています。「日本ネット経済新聞」によるファッションEC売上高ランキングTOP50の平均成長率が110%のところ、リーバイ・ストラウスジャパン様は123%の成長を達成しました。この数字を出した要因がOMO施策やCRM施策だと伺っています。

Eコマースの成功は、OMOとCRMが鍵を握る

Eコマースの成功は、OMOとCRMが鍵を握る※カンファレンス登壇資料より

バニッシュ・スタンダード 薄井 他社では「店舗とECを両方利用しているお客様」と「店舗のみ」または「ECのみ」で購入するお客様を比較すると、年間購入金額が両方利用しているお客様の方が高い数字が出ています。リーバイ・ストラウスジャパン様でも同じ傾向にあるのでしょうか。

リーバイ・ストラウスジャパン 佐竹 クロスユーザーは店舗またはECのみのお客様と比べて年間購入金額が約4倍です。会社としてもクロスユーザーの売上を伸ばすことが、今後の成長の鍵を握ると認識しています。

バニッシュ・スタンダード 薄井 社内でOMOに取り組むための意識はどのように高めているのでしょう。

リーバイ・ストラウスジャパン 佐竹 コロナ禍のタイミングでデジタルシフトの意識を持ち始めました。しかし、OMOは店舗スタッフやIT部門など、部門をまたいで連携する内容が多いのが課題です。私たちは2021年に組織体制が変わり、Eコマースと店舗の部門が統合されたことで、デジタルシフトを一気に加速させることができました。

また、店舗とECの売上を合計すると会社としても大きな数字になるので、IT部門やグローバルのチームにも動いてもらいやすいですね。

バニッシュ・スタンダード 薄井 今後の戦略はどのように考えているのでしょう。

リーバイ・ストラウスジャパン 佐竹 Eコマースで成長している会社はOMOやCRMに力を入れていると感じます。そこで、私たちも2024年9月にCRMプログラムをリニューアルし、お客様一人ひとりに適した体験を加速させていくことを考えています。

2025年はカスタマージャーニーを見直します。その後、2026年から2028年では構築した基盤をもとにロイヤルティプログラムを機能させていく予定です。

バニッシュ・スタンダード 薄井 リーバイ・ストラウスジャパン様は、直販とホールセールの売上が過去と比べると逆転して直販が多くを占めていますよね。そこで大切なのがお客様を知ることであり、そのためには会員プログラムやCRMの見直しをしなくてはならないと理解できました。

日本と海外では、CRMやOMOの施策に大きな違いがある

日本と海外では、CRMやOMOの施策に大きな違いがある※カンファレンス登壇資料より

バニッシュ・スタンダード 薄井 CRMのリニューアルやOMOを推進する際、リテール部門や本国の協力はどのように得たのでしょう。

リーバイ・ストラウスジャパン 佐竹 まずは具体的な数字やデータを示すことが大切です。日本の売上は他国と比べて突出しており、非常に強い説得材料となりました。

また、「スタッフスタート」のように現場の店舗スタッフも巻き込む施策になると浸透は困難です。正社員のみならず契約社員やアルバイトで店舗を回している忙しい中、なかなか新しい取り組みに時間を割くことはできません。実際に私たちも「スタッフスタート」の投稿数が月間で17にまで減った時期がありましたが、店長を含めた現場の人も定期的な議論に加わってもらい、取り組みを自分ごと化してもらいました。その結果、新たな文化の醸成につながっています。

当初、バニッシュ・スタンダード様にサポートに入っていただいた際も現場のスタッフは大変そうでした。しかし、今は他ブランドの「STAFF OF THE YEAR 2024」を受賞したスタッフの話を聞くと、「もっと聞きたい」と前向きな姿勢を見せるようになりました。

バニッシュ・スタンダード 薄井 グローバルが注目する日本のサービスやツール、またはグローバルで成功している施策などをお聞かせください。

リーバイ・ストラウスジャパン 佐竹 グローバルと日本の会員ランクでは大きな差があります。日本は5つのランクに分けている一方、東南アジアは3つのランクですし、アメリカではランク分けされていません。

日本以外で興味深い取り組みには、ヨーロッパでは自社ECで得られる会員特典をモールでも同じように得られることや、中国ではWeChatでのカウンセリングサービスなどを自社ECにカスタマイズしてロイヤリティ会員に提供できたりすることがあります。どの国もお客様とのタッチポイントが多いところに注力しているのは共通していますね。

※カンファレンス登壇資料より

バニッシュ・スタンダード 薄井 日本では必要不可欠な「店舗スタッフのスタイリング」について、グローバルでの反応や評価をお聞かせください。

リーバイ・ストラウスジャパン 佐竹 「スタッフスタート」の撮影風景を海外のスタッフに見せると非常に驚かれます。海外はUGCの文化が強いので、基本的にスタッフが撮影することはありません。しかし、日本で数字が伸びている事実を伝えると興味を持ち、自国でも導入しようとの動きが進んでいます。

今後もベンダーとの連携を増やし、売上を高めていきたい

バニッシュ・スタンダード 薄井 現在は10年前のホールセール中心のビジネスから大きく変化し、リーバイ・ストラウスジャパンではDTCを強化されています。そのためにも会員プログラムをリニューアルしてOMOのサービスを加え、クロスユーザーを増やそうとしているとわかりました。今後の展望についてもお聞かせください。

リーバイ・ストラウスジャパン 佐竹 「スタッフスタート」の利用中機能の中でも、スタッフレビュー機能は大きく売上に貢献しています。よりスタッフレビューを活かすために、awoo株式会社様と連携して投稿のキーワードを軸に商品やスタイリングを検索できるようにしています。今後も連携を広げていきたいですし、テスト段階のデジタルサイネージ機能も効果的に使っていきたいですね。


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