CRMにおけるデータを活用し、複数ブランドで売上向上を目指すマッシュホールディングスの施策 【マッシュホールディングス セミナーレポート】

ECのミカタ編集部

2024年12月10日~13日の4日間、awoo株式会社主催の「ファッションECカンファレンス2024」が開催された。3日目のセッションに登壇したのは、1998年にグラフィックデザインの会社として設立して以降、2005年にファッション事業へ参入し、ビューティ、フード、スポーツなどの業界で事業を行っている株式会社マッシュホールディングスだ。

ここでは、幅広い商品を展開する同社のMD戦略やCRMにおけるデータ活用について話された、同社 経営企画部 改革推進室 CRM推進課 課長 野中貴章氏と、メール配信システム「Mail Publisher」やMAツール「Engage Cros」などCRM領域全般をカバーできるサービスを提供するエンバーポイント株式会社 営業部 部長 原武ふく美氏のパネルディスカッションの模様をお届けする。

ファッションやビューティ、フードなど幅広い事業を展開

エンバーポイント株式会社 営業部 部長 原武ふく美氏(以下、エンバーポイント 原武) マッシュホールディングス様ではどのようなファッションブランドを展開されているのかお聞かせください。

株式会社マッシュホールディングス 経営企画部 改革推進室 CRM推進課 課長 野中貴章氏(以下、マッシュホールディングス 野中) 幅広い人にご愛用いただいている「gelato pique」や、20代の女性を中心に人気のある「SNIDEL」「FRAY I.D」「Mila Owen」があります。また、メンズでは「AOURE」「SOFTHYPHEN」、ライセンス事業の「Barbour」などを展開しています。

最近ではキッズ&ベビーブランドの「JAMIE KAY」や、ニューヨーク発のバッグブランド「LeSportsac」がグループの仲間入りを果たしました。

エンバーポイント 原武 ビューティやフードブランドについてもお聞かせください。

マッシュホールディングス 野中 オーガニックコスメの「Cosme Kitchen」「Biople」を中心に、2024年は欧米で人気のラグジュアリーヘアケアブランド「INNERSENSE」もグループ入りしました。

データ活用でブランド間の相乗効果を生み出す

エンバーポイント 原武 CRM推進課のミッションやデータ活用についてお聞かせください。

マッシュホールディングス 野中 私たちのミッションは「顧客データによって、モノづくりにおける発想やクリエイティビティを刺激する」です。グループ全体にCRMの考え方や文化を広げ、根付かせていく部署を目指しています。

まずデータ活用で取り組んだのは、顧客のKGIとKPIの定義です。会員数と会員売上に分け、さらに会員売上は人数と1人あたりの売上に分解して「単価と回数」、単価を「アイテム単価とアイテム数」のように構造化をしています。私たちはブランドが多いため、レイヤーに応じて報告すべきKGIとKPIは絞っているのですが、各ブランドがKPIを達成するための施策がわからないという課題もありました。

※カンファレンス登壇資料より

そこで、KPIの管理をブランド分析と組み合わせています。会員軸に商品軸や店舗軸を加えてシーズンごとにブランドの分析結果をまとめ、レビューしています。これはブランド側も好意的に受け止めてくれました。その理由は2つあり、1つは「商品観点で企画意図の検証ができたこと」であり、もう1つは「提案やセット率など、今後の施策につながるようなヒントを抽出できたこと」です。

エンバーポイント 原武 具体的な施策と成功事例についてもお聞かせください。

マッシュホールディングス 野中 分析から施策につながった事例では「デニムを購入したお客様に500ポイントを付与する」というものがあります。売上に悩んでいたブランドで新規のお客様に課題があったため、EC化率が低く、色違いで複数購入される傾向のあるデニムの新商品に合わせて実施を決定しました。

その結果、デニムカテゴリーの売上が前年同期比で150%と、全体の伸び率よりも良い数字を出すことができました。

エンバーポイント 原武 素晴らしい事例ですね。一方でCDP構築における課題もあったと伺いました。

マッシュホールディングス 野中 マッシュホールディングスでは会員管理とEC運用でシステムが分かれており、それぞれのテーブル間のリレーションを組むのに苦労しました。特にメルマガフラグの統合に苦労し、施策の開始まで1年ほどかかっています。

※カンファレンス登壇資料より

エンバーポイント 原武 ブランド間で共通して活用できるデータや、ブランドごとの違いはどのように管理されているのでしょう。

マッシュホールディングス 野中 共通の指標としては「新規と既存別の会員数・売上・客数」を見ています。一方で客単価や顧客属性はブランドのターゲットごとに異なるので、個別の指標として捉えています。

実際に、15年以上の歴史があるブランドで一定の年齢層のお客様に支持され続けているとのコメントもいただきました。しっかりとブランドのメッセージを届けられていると感じましたし、これからも発信を大切にしていきたいですね。

エンバーポイント 原武 今後データ活用を進化させていくうえで「BIの導入」と「ブランド間でのクロスセル」に取り組みたいと伺っております。これらの詳細についてお聞かせください。

マッシュホールディングス 野中 現在はKPIのモニタリングやブランド分析をエクセルで管理している状態です。BIを導入すれば、分析からアウトプットまでの工数を削減できると考えています。また、共有が楽になればデータへの興味関心が強まり、活用が広がることも期待しています。

例えば、初回購入と2回目の購入商品で発生しやすい組み合わせを算出して店舗スタッフが見られるようにすれば、セット率や客単価の向上が見込めると考えていますね。

「ブランド間のクロスセル」については、これまでもファッションとビューティなどでいずれかのレシートを見せるとポイントを付与するといった施策を実施しましたが、想定したような効果が得られませんでした。改めてお客様の属性や趣味嗜好を踏まえたうえで、買い周りを促進できるアプローチをしていきたいですね。

デジタルの力で店舗の接客をECでも体験できる環境を整えたい

デジタルの力で店舗の接客をECでも体験できる環境を整えたい※カンファレンス登壇資料より

エンバーポイント 原武 最後に、今後の展望についてお聞かせください。

マッシュホールディングス 野中 現状はECのカートシステムやMAツールなど、多くの優れた機能にあふれており、なかなかECやアプリ、メール、LINEといったコミュニケーションで差が出にくいと感じています。

その中で、マッシュホールディングスはデジタルマーケティングに課題があるものの、EC化率は高いという数値も出ています。店舗スタッフが自分のコーディネートをサイトにアップしてお客様が検討するといった事例もあるため、店舗の接客力をデジタルのECでも同じように体験できる状態を目指していきたいですね。


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