2035年には80兆円になるリユース市場で、顧客体験を改善し続ける2nd STREETの取り組み【株式会社ゲオ セミナーレポート】
2024年12月10日〜13日の4日間、awoo株式会社主催の「ファッションECカンファレンス2024」が開催された。9つ目のセッションでは、レンタル事業のみならずリユースの「2nd STREET」や時計・バッグを取り扱う「OKURA」、1.5次流通の「Luck Rack」を展開する株式会社ゲオホールディングスが登壇した。
リユース市場が活性化する中、企業は変革を求められており、同社は顧客体験を継続的に改善している。「2nd STREET」の取り組みについて話された、株式会社ゲオ WEB事業部 Digital strategy director 竹中真幸氏と、株式会社Sprocket 代表取締役 深田浩嗣氏のパネルディスカッションの模様をお届けする。
2035年、海外のリユース市場は80兆円規模にまで成長する
株式会社Sprocket 代表取締役 深田浩嗣氏(以下、Sprocket 深田) 国内のリユース市場をゲオ様はどのように捉えているのでしょう。
株式会社ゲオ WEB事業部 Digital strategy director 竹中真幸氏(以下、ゲオ 竹中) 国内の人口減少が懸念される中、2035年には2015年比で小売市場が83%にまで下がる試算が出ています。一方で、海外に目を向けるとサステナビリティに対する関心が高まっており、欧米のみならず中国でもSDGsに配慮した商品を購入する意識が高まっています。
それに伴い、リユースの市場は2026年で39兆円、2035年に80兆円の売上規模になると予想されています。国内のリユース市場も伸びてきましたが、今後は海外が伸び続けていくので、海外のマーケットも魅力的だと感じています。国内は2030年までは伸びると言われていますが、CtoCのマーケットが伸びなくなってきているので、私は上限に近づいていると感じていますね。
Sprocket 深田 ゲオ様はCtoCのプラットフォームを競合だと捉えているのでしょうか。
ゲオ 竹中 競合だと思ったことはありません。むしろリユースに参加する事業者が増えるのはマーケットが広がるので良いことだと捉えています。また、ラグジュアリーブランドがセカンダリー商品を自社で展開する取り組みも見られますが、私はそのような傾向も大歓迎です。ラグジュアリーブランドも参入してきてくれないと、なかなかリユースの文化を形成するのは難しいと考えています。
※カンファレンス登壇資料より
Sprocket 深田 海外市場が伸びていく中、2nd STREETの出店も強化されるのだとか。
ゲオ 竹中 2023年の海外店舗が52店舗で、2024年は100店舗を超えました。これからも年間で30〜50店舗を出店していく予定です。そこで重要な役割を果たすのが、全世界共通で使っている「チェーンマネジメント(基幹システム)」です。
世界には「Used in Japan」という言葉があり、日本のリユース商品は非常に高い評価を得ています。そのため、海外出店の際の初期商品は日本から供給し、売れ筋などを見ながら地産地消できるモデルを確立していく動きをとっています。今は日本からの供給のみですが、今後は越境ECをうまく活用しながら、越境で在庫の最適化が図れる体制を構築していきたいですね。
※カンファレンス登壇資料より
店舗を補完する付加価値としてECは重要
Sprocket 深田 ゲオ様では概況の変化をどのように感じているのでしょう。
ゲオ 竹中 物価高とお客様の価値観の変化によってリユース市場は活性化しています。これまでは店舗数を増やすことに注力してきましたが、今後はデジタルで付加価値を付けることにも力を入れていきます。
もちろん店舗を増やすことは会社の成長のために重要な施策なので継続していきますが、コストを下げていかないと「高く買い取って安く販売する」というリユースの根幹が維持できません。しかし、コストを追求すると面白さがなくなってしまうので、オンラインでどのように補完するのかを考えています。
その取り組みの一つとして、ホビー専門の「セカストHOBBY」のようなオンライン専門店を作っていく予定です。オンライン専門店では、実店舗の補完として専門的な知識を持ったスタッフが接客したり、コミュニティを作ったりする環境の整備を進めています。
また、私たちは店舗だけでは表現しきれない付加価値として店舗併売を行っています。リユースは1点物なので「近くの店舗で見てみたい」というお客様は多く、毎日5000点以上の商品がアップされている商品をお取り寄せ注文できるようにしました。その結果、EC全体の売上が120%の伸びを見せる中、店舗取り寄せは約280%も伸びています。オンラインとリアルでは求められている商品の属性が異なるため、お取り寄せ注文はオンラインで買いたい商品にリアルの力を活用して販売する方法だと考えています。
※カンファレンス登壇資料より
Sprocket 深田 現在は「売る、買う、巡る」循環型OMOを実現するための課題を感じていたのだとか。
ゲオ 竹中 これまでは店舗とECでお客様のニーズが異なるため、それぞれの導線を分けていました。しかし、両方を活用したいお客様もいると考え、ウェブサイトのリニューアルを実施しています。基本的にサイトリニューアル後はCVが下がるのですが、ABテストを綿密に行った結果、買い取りが2倍ほどに増加しました。
また、通常はPVを増やすことを考えるのですが、2nd STREETでPVが増えることは、お客様が思っていた商品と違ったことを意味します。そこでスムーズな買い物体験ができるように表示を工夫したところ、CVを担保しながらセッション内PV数を減らすことにも成功しました。
最終的に、70%のお客様がリピーターである2nd STREETのサイトリニューアルでCVを上げることができ、新規ユーザーも増えているので非常に良い効果が表れています。
今後は一次と二次を組み合わせて販売するのが主流になる
Sprocket 深田 最後に、今後の展望をお聞かせください。
ゲオ 竹中 リユースの市場が伸びて一次の市場が縮小していく中、一次と二次が混ざりながらファッションを提案していくのは、どのブランドでもあり得ると感じていますしトレンドになるでしょう。
私たちは、一次と二次を組み合わせながら提案できるメーカーさんやブランドさんを増やしたいと考えています。公式のオンラインショップでリユースが販売できるように、私たちが裏方を担いながら一緒にリユース市場を広げていければうれしいですね。