レビューを通してファンと長く、深くつながる ミレーが「ReviCo」を選んだ理由
ECサイトにおける「レビュー」の重要性は認識しつつも、「なかなかレビューが集まらない」「質の高い投稿を増やしたい」「ツール導入を検討しているが運用負担が気になる」……。そんな課題を抱えている事業者は多いのではないだろうか。
ユーザーからの商品レビューは、売上向上だけでなく、ブランド価値を高め顧客との関係構築に貢献するポテンシャルを秘めた、いわば“宝の山”だ。そこで今回は、レビューマーケティングプラットフォーム「ReviCo」を導入し、レビューを有効活用するアルパイン(登山)ブランド「ミレー」の事例をお届け。レビュー投稿数を約3倍に伸ばし、コンバージョンにも好影響を与えたミレーの事例を通じて、レビューの持つ可能性とその効果を最大化する方法を探る。
ツールを積極導入し、自社サイトに注力
――まず、ミレー様の事業概要と、EC事業の位置づけについて教えてください。
ミレー・マウンテン・グループ・ジャパン株式会社 営業部 イーコマース・マネージャー 奥村武氏(以下、ミレー 奥村) 「ミレー」はフランス発のアルパイン(登山)ブランドで、当社はその日本法人として事業を展開しています。日本でのビジネスは卸売が約7割、残りの3割がECと直営店舗という構成です。
――EC事業はいつ頃から始められたのですか。
ミレー・マウンテン・グループ・ジャパン株式会社 営業部 イーコマース・マーケティングスペシャリスト 松浦洋氏(以下、ミレー 松浦) 日本でのEC展開は2017年からです。最初は「直販を始めると小売店の売上に影響を与えるのでは?」という社内の懸念もありましたが、同業他社もECを活用していたこともあり、次第に理解が進みました。特に2020年頃のコロナ禍は大きな転機でしたね。
ミレー 奥村 コロナ禍で卸先の店舗が休業し、納品ができない状況になりました。また、直営店もクローズせざるを得なかった。その中でも販売が継続できたのが自社ECでした。そこで社内の理解が一気に進み、本格的にEC事業の強化に取り組むことになりました。
――ECの売上比率は、どのようなバランスになっていますか。
ミレー 奥村 自社ECが約6割、楽天市場やYahoo!ショッピングなどのモールが4割です。当社としては自社ECを優先しています。モールは集客力がある一方で、お客様との直接的な関係を築くのが難しい。また、利益構造の面でも自社ECの方が有利です。そのため、意識的に自社ECを伸ばす戦略を取っています。
――ECサイトのシステムは「futureshop」を利用されているそうですね。
ミレー 松浦 はい。2020年に「futureshop(※1)」に切り替えました。それ以前は収益性の悪いカートシステムを使っていたため利益が残りにくい構造になっており、機能面とコストのバランスを考えて「futureshop」に移行しました。
――ミレー様はEC運営において、外部ツールを積極的に導入されていると聞いています。
ミレー 奥村 そうですね。(直営店は)店舗数が限られているため、オンラインでも購入しやすい環境を整えることが重要です。そのために機能の拡充や改善は積極的に行っています。例えば、「unisize(※2)」のフィッティングツールを導入し、サイズ選びの不安を解消するなどの工夫をしています。
ミレー・マウンテン・グループ・ジャパン株式会社 営業部 イーコマース・マネージャー 奥村武氏
豊富な機能でECの成長に貢献する「ReviCo」
――レビューツールとして「ReviCo」を導入した理由について教えてください。
ミレー 奥村 機能と価格のバランスが良かったこと、「futureshop」との連携実績が豊富だったことが決め手です。最初はEC事業者向けのイベントで「ReviCo」のことを耳にして、興味を持ちました。すでに導入されている企業様の事例を見て、これを自社のECで再現するだけでほぼ完璧だと思いました。
――「ReviCo」について、概要と特色を教えてください。
株式会社ReviCo 代表取締役社長 高橋直樹氏(以下、ReviCo 高橋) 「ReviCo」は300以上のサイトに導入いただいているレビューツールで、一番の特徴は、レビュー投稿を促進する機能や施策が充実している点です。例えば当社が運用や費用を負担するAmazonギフト券などのプレゼント企画を常時実施しています。インセンティブを設けることで、消費者がレビューを投稿しやすい環境を作っています。このプレゼントキャンペーン付きのレビュー収集方法は、2024年11月に特許も取得しており、競合優位性につながっています。
収集したレビューはコンバージョン向上をはじめ、さまざまな面で活用できます。レビューを集めてGoogleショッピングやSEOに対応したり、高評価の商品をメルマガで紹介することでクリック率を向上させたりといった施策を、簡単に行うことができます。
単にレビューシステムを提供するだけでなく、EC事業の成長に貢献することを目指しているため、商品レビューを集約したポータルサイト(※3)を運営し、評価の高い商品を消費者に届け、事業者に送客する仕組みも構築しています。
――「ミレー」のサイトに「ReviCo」を導入するにあたり、どのような要件がありましたか。
ミレー 奥村 新シーズンの商品の立ち上げが毎年9月なので、そのスタートに間に合わせることが重要でした。導入スケジュールはかなりタイトだったと思いますが、期間にして1カ月ほどと非常に早く、特に大きなトラブルもなく進行しました。設計面で「どの項目をチャートで表示するか?」といった点を社内で検討した程度でしたね。
ReviCo 高橋 「ReviCo」はカートの構造を変えずにタグを挿入するだけで動作する仕様になっています。そのため、ミレー様のECサイトでもタグを設置し、デザインの調整を行うだけでスムーズに実装できました。また、以前「futureshop」で運用されていたレビューのデータ移行も重要なポイントでした。評価項目やコメントをできる限り引き継ぐことで、お客様が違和感なく利用できるようにしました。
ミレー・マウンテン・グループ・ジャパン株式会社 営業部 イーコマース・マーケティングスペシャリスト 松浦洋氏
レビュー投稿数は約3倍に! 数・質ともに向上
――「ReviCo」導入から約1年が経過しています。導入後の効果を教えてください。
ミレー 奥村 まずレビュー投稿数が約3倍に増え、購入いただいたお客様の約14%に投稿いただいています。「ReviCo」導入前はECシステムに標準装備されているレビュー機能を使ってレビューを書いていただいた方にミレーのポイントを100ポイント付与するといった施策を行っていたものの、なかなか集まらなかったんです。
導入後、投稿を促すメールの送信回数を以前の1回から未投稿の方に2回送るように変更するなど、当社でも投稿率向上の工夫はしましたが、投稿数が増えた大きな要因の一つは、やはりインセンティブの違いだと思います。当社のポイントよりも、(「ReviCo」のプレゼント企画による)Amazonギフト券やPayPayポイントのように“どこでも使える”ものの方が、興味を引きやすかったようです。結果的に、現在はレビュー投稿者への自社のポイント付与は停止しており、停止してもなおレビュー投稿数が約3倍を維持できているため、満足しております。
ReviCo 高橋 キャンペーン内容やインセンティブについては、お客様の反応を見ながらPDCAを回しており、当社でも投稿率の向上を図っています。
ミレー 松浦 あとは運用面でも大幅に楽になりました。現在の運用では週に1度、注文データをまとめてインポートするだけなので、負担はほとんどありません。以前はレビューの運用自体に手をかけられず、ほぼノーチェックで掲載していましたが、今は最低限の目視確認を行いながらも、スムーズに運用できています。
――投稿数だけでなく、レビューの「質」にも変化はありましたか。
ミレー 奥村 明らかに質が向上しました。以前は5段階の評価と自由記載のテキストのみでしたが、現在は身長や年齢、性別などの項目を選択できるようになり、情報の精度が上がっています。属性項目の記入は必須ではありませんが、9割近くの方が入力してくれるので、お客様が参考にしやすいチャートが増えました。さらに写真の投稿数も増え、視覚的にわかりやすいレビューが多くなりました。
ミレー公式オンラインストアより、レビューの一例。チャートの★でフィット感や手触りなどに関するユーザー評価がチャート表示で視覚化されている
ミレー 松浦 レビューを閲覧したお客様のコンバージョン率は、全体と比較して高い傾向にあります。単に投稿数が増えただけでなく、購入の意思決定をサポートする質の高いレビューが増えたことで、売上にも良い影響が出ていると感じます。レビューの内容を見ていると「以前のモデルと比較して」といったコメントも多く、リピーターが増えていることも実感しています。
ReviCo 高橋 レビューの投稿率や質が高いのは、商品や接客が良いというのが前提としてあると思っておりますので、ミレー様のビジネスや商品、日々の運用が素晴らしいところの結果だと思っています。当社としては、お客様がいかにストレスなくレビューを入力できるかを意識しています。例えばサイズやカラーといった評価項目は、購入商品のカテゴリごとに出し分けられるなど、お客様への通知機能や投稿画面のUIなどのブラッシュアップに取り組んでいます。
ミレー公式オンラインストアより、レビューの一例
――レビュー内容が、商品開発や品質改善に影響することもありますか。
ミレー 奥村 レビューはEC担当チームだけでなく、プロダクトチームとも共有しています。例えば、サイズ展開の見直しや、新しいカラーバリエーションの追加など、レビューの内容を反映する機会も増えています。
ミレー 松浦 あるお客様が「もしかしたら人生最後のリュックになるかもしれない」とレビューで書かれていたのが印象的でした。 (年齢はわかりませんが)長く愛用いただく前提で購入されたことが伝わってきて、ブランドとしての責任も改めて感じました。
ミレー 奥村 60代のシニアの方が、フランス規格の細身なウェアをスマートに着こなしているレビューもありました。それがとても格好良くて、こうしたリアルな着こなしを他の方にも参考にしていただけるのは非常に価値があると思っています。
――「ミレー」公式サイトではスタッフレビューも導入されています。その理由や効果を教えてください。
ミレー 松浦 EC担当チームが、お客様からの問い合わせで多かった内容をメインに投稿しています。商品ページに載せていない情報や、“裏技”的な使い方を動画と一緒に掲載することもありますね。
ミレー 奥村 当社の場合はECサイトがブランドサイトも兼ねており、ブランドとしての一貫性を担保するために、商品説明などはガイドラインに沿った“硬め”の表現が多くなってしまいがちです。そのため、スタッフレビューでは自由度を持たせて、例えば「バックパックをコンパクトに畳む方法」や「登山ジャケットの便利な収納方法」といった情報を発信しています。スタッフレビューを活用することで、“硬い”メッセージと“柔らかい”メッセージを共存させられるようになりました。
スタッフレビューの例。商品紹介欄にない情報が“柔らかい”トーンで投稿されている(「ミレー公式オンラインストア」より)
ReviCo 高橋 公式の説明文には書きづらいけれど、お客様が知りたい情報をカバーする役割ですね。ブランドの世界観を守りながら、よりお客様に寄り添った情報発信ができるような仕組みを構築されているのは、とても良いことだと思います。私自身も商品を購入するときに、細かなディテールが気になることがあり、スタッフレビューのような「リアルな声」は非常に参考になります。
株式会社ReviCo 代表取締役社長 高橋直樹氏
レビューを活用し、さらなる顧客体験の向上を
――「ReviCo」の今後のサービス展開や機能改善の計画について教えてください。
ReviCo 高橋 購入者、ファンの声は次の購入者の参考になるだけでなく、ブランドの価値をさらに高める役割も果たします。
「ReviCo」は、サービスを通じてファンの声を多く集められる状態を作れていると思っておりますので、例えば、よりその声を活かしやすく生成AIでまとめる機能やより深いリアルな声を集めやすくする機能など、これまで以上にレビューというファンの声の価値を高める仕組みを強化していきたいと考えています。
――最後に、ミレー様のEC事業の目標を教えてください。
ミレー 奥村 「ECで完結できる体験」をさらに充実させたいと考えています。ウェブ接客ツールを活用するなどして、できるだけお客様が実際に商品を手に取っているのに近い感覚を提供していきたいです。
その上で、レビューは実際の使用感を伝えるという意味で非常に重要です。素材の特性やフィット感など、ブランド側が説明しきれない部分を補完してくれます。詳細なレビューを投稿しやすい環境があれば、ロイヤリティの高いファンとのコミュニケーションも図りやすいでしょう。「ReviCo」を活用して、そういった施策を強化していきたいです。
※1:「futureshop」は株式会社フューチャーショップが提供するSaaS型ECサイト構築プラットフォーム
※2:「unisize(ユニサイズ)」 は、株式会社メイキップが提供するアパレルECサイト向けサイズレコメンドエンジン
※3:「ReviCo ポータル」。同サイトは「ReviCo」を活用してレビューマーケティングを行っている各企業の公式サイトに集まったレビューを集約するポータルサイト