楽天SOY 2024で4冠! イルミルドに聞く、楽天市場で成果を出すCRM戦略

ECのミカタ編集部

楽天市場をはじめとするECモールでの成功には、単なる価格競争ではなく、データを活用した戦略的なCRM施策が欠かせない。出店事業者として、新規顧客の獲得からLTVの最大化までやるべきことは多いが、それだけに「何から手をつけるべきか」わからず、運用担当者の“感覚”に頼りがちなケースもあるだろう。

EC事業におけるCRM戦略をテーマにした対談シリーズの第2回は、コスメやビューティーのブランドを展開し「楽天ショップ・オブ・ザ・イヤー2024」で4冠(※1)、Amazon.co.jp マーケットプレイスアワード2024でも2年連続となるタイムセール賞を獲得したイルミルド株式会社の神田真伴氏に、データを駆使したCRM施策について聞いた。インタビュアーはCRMツール「うちでのこづち」を提供する株式会社E-Grantの榎佳祐氏。イルミルド社も「うちでのこづち for 楽天」を導入し、楽天でのCRMに取り組んでいるという。

※1:楽天市場のイルミルド公式ショップは「楽天ショップ・オブ・ザ・イヤー2024」において、総合10位、「美容・ヘアケア・ネイル」ジャンル大賞、ROOM賞、ラ・クーポン賞(サービス賞)の4つを受賞した

●対談シリーズ第1回(第一三共ヘルスケアダイレクト株式会社)はこちら

地道にPDCAを回して楽天SOYに輝く

株式会社E-Grant マーケティング部 部長 榎佳祐氏(以下、榎) 本日はよろしくお願いします。まずは「うちでのこづち for 楽天」を導入いただいた経緯をお聞かせください。

イルミルド株式会社 企画開発部 楽天販促チーム 主任 神田真伴氏(以下、神田) 楽天市場のCRM分析が非常に難しかったのが大きな理由です。社内にデータ解析の専門家がいるわけではなく、受注データを十分に活用できていませんでした。楽天市場ではセールを中心とした販売手法が一般的ですが、それが本当に持続可能な戦略なのか疑問を感じていました。そこで、データを活用しながら、長期的に利益を出せる販売方法を模索しようと考えました。

 Amazonと楽天市場の違いについては、どのように感じていますか。

神田 楽天市場はページデザインや店舗トップの作り込みが、Amazonに比べて自由度が高いですが、その分、何を優先すべきかの判断が難しくなります。また、広告の効果測定の仕組みも異なります。Amazonは即座にデータが反映されますが、楽天市場は購入までに時間差があるため、分析の難易度が上がります。

 2024年は楽天市場のショップ・オブ・ザ・イヤーに選ばれましたね。何か意識されたことはありますか。

神田 コツや裏技などは特にないと思っていまして、地道なことをずっと続けてきました。新規獲得のオファーにどれだけ予算を使うかをシミュレーションしたり、バナーのクリエイティブや掲載順を変えたりと、それぞれの施策でどれだけ伸びたのかPDCAを回しました。楽天はそういった施策の結果が出やすいモールだと思っています。

美容・コスメジャンルでの成果を重視していましたが、結果としてショップ・オブ・ザ・イヤーの総合賞も獲得することができました。これまでの積み上げが形になったことがうれしかったですね。

シャンプー、トリートメント、ヘアオイルなどが主要商材なのですが、ブランドの認知も拡大して、多くの方に手に取っていただける状態になりました。競合他社もいるなかで、軸になる商材を少しずつ育てられたと思っています。

イルミルドのブランド「ALLNA ORGANIC」。主力商品のヘアオイル(ヘアエッセンス)は楽天ベストコスメ2024において殿堂入りを果たした

楽天市場のデータ分析とLTV管理

 「うちでのこづち for 楽天」を使ってみて、面白いと感じた点はありますか?

神田 過去に販売していたサンプルパウチ(お試しタイプ)の販売データですね。今まで何となく売り場に置いていただけだったのですが、実際にどの商品への転換率が高いのかを可視化できるようになり、フックとなる商材の開発や、新商品の販促に活かせると感じました。サンプル販売に関しては在庫管理の面で課題もあるので、プランニングをしっかりする必要があると思っています。

 楽天市場とのデータ連携の難しさについてはどのように対応されていますか。

神田 楽天市場ではAPIの開放が進んでいますが、システム開発やデータ連携が追いつかないケースはよくあります。特に、広告効果の分析やLTVの算出には手作業が多く、効率化が求められています。「うちでのこづち for 楽天」の導入によって、データ活用がスムーズになりました。

 楽天市場ではクーポンやメルマガや広告など打てる施策がいろいろありますが、アクションごとのLTV管理も課題ですよね。

神田 そうですね。例えば新規向けのクーポンを使った後、そのお客様がどのような行動を取るのか、どの商品を購入するのかが見えにくい、というケースはよくあります。CRMツールを駆使するなどしてデータを深堀りすることで、「新規クーポン利用後のリピート率がどれくらいか」「次に購入した商品は何か」といった分析が可能になります。これによって、次の施策がより明確になり、有効なアプローチが取れます。データをしっかり分析することで「この商品のLTVが高いから、積極的に予算をかけていこう」といった判断もできるようになります。

新規顧客の獲得後、F2転換(2回目購入)をいかに増やすかは常に課題感を持っています。データを活用しながら、効果的な施策を組み立てていきたいですね。

イルミルド株式会社 企画開発部 楽天販促チーム 主任 神田真伴氏

コミュニケーションツールやクーポンの活用をさらに進めたい

 今後のCRM施策について、どのように考えていますか?

神田 現在、LINEの活用を模索しています。現状はメルマガでセールなどの情報発信を行っていますが、これをどこまで細かくセグメントを切るか、どういったシナリオ構造で配信するかは常に検討しています。

データを見ていると、楽天市場のお客様にアプローチするにはメルマガは有力なチャネルです。クリエイティブの自由度が高いので、ブランドの表現やオファーはしやすいと思います。LINEとメルマガの両方を使い分けながら、それぞれの特性を活かしたコミュニケーション戦略を立てる必要があると考えています。

株式会社E-Grant マーケティング部 部長 榎佳祐氏

 クーポン施策についてはいかがですか?

神田 楽天市場では最近、新規限定クーポンとリピーター向けクーポンのセグメントができるようになりました。弊社でも新規向けに割引クーポンなどを試し、効果測定をしながら最適なオファーを検証しています。

 その費用対効果はどう見極めていますか。

神田 これはクーポンに限らずですが、いろいろなKPIがあるなかで、弊社では限界CPA(獲得単価の上限)を重要視しています。例えば、ある商品をプロモーションする際に、過去のデータを基に「このCPAなら利益が出る」という指標を持つことで、無駄な費用を削減できます。

イルミルドのヘアケアブランド「Q+(クオリタス)」。写真はダメージケアシリーズ

長期的視点に立ったブランド戦略とCRM構築

 楽天市場での販売を通じて、どんなことを長期的に目指していますか?

神田 LTVを意識してクロスセル・アップセルが見込める仕組みづくりを目指しています。楽天市場のロイヤリティが高いユーザーはお買い物上手で、セールで色々なショップのアイテムを上手に購入している印象があります。ですが弊社としてはセール依存の販売ではなく、ブランドとして長く愛されるための施策を重視したいです。適正な価格で、お客様のエンゲージメントを高めながら、「いい商品を扱う会社」として継続的に選ばれるブランドにすることが目標です。

 そのためにはCRMの概念は欠かせないと思います。

神田 そうですね。CRM施策については割引のオファーだけではなく、楽天市場内でのセグメント別施策の展開と、それに基づいたコミュニケーション設計に力を入れていきたいです。購入後フォローとしての同梱物の充実や、TikTokやライブコマースといった動画コンテンツなどにも注目しています。ただ、先ほどの限界CPAの考え方からすると、費用対効果が合うかは検討の余地がありそうですね。

とにかく安くすれば売れるという短期的な視点ではなく、お客様と長期的な関係を築くための戦略を練っていきたいです。

【日本発総合CRMカンパニー】株式会社E-Grant
1000社以上の支援実績により培ったCRMのノウハウを最大限活かし、CRMを起点として、ブランド立ち上げ~新規獲得~CRMまでDtoCバリューチェーンの全体にソリューションを提供している。