メルカリShopsの役割と進化【メルカリ セミナーレポート】

ECのミカタ編集部

消費者が使用するインターネットサービスやデバイスが変われば、ECのあり方もまた変化していく。特に近年はSNSの普及によってソーシャルコマースやOMOの流れが加速し、「個人のメディア化・ストア化」が顕著に表れている。

そうした現状を踏まえて、ECのミカタ主催のオンラインカンファレンスで株式会社メルカリの江川嗣政氏(執行役員 General Manager Shops/Ads)が語ったテーマは、「メルカリShopsの役割と進化」について。事業を多角化するメルカリグループにおいて、法人と個人事業主が商品を販売できる「メルカリShops」はどのような役割を担っているのか。江川氏のセッションから要点をレポートする。

現代のインターネット・AI時代では、各産業が再定義されている

セッションの冒頭で、江川氏は明治維新以降から現在にいたる産業構造の変革をたどりつつ、「個人のメディア化」について見解を述べた。

「1995年以降はインターネットが本格的にスタートし、これまで2045年にAIのシンギュラリティが来ると言われていましたが、AIの進化は非常に速く、10年以内に到来するのではないかと言われています。このインターネット・AI時代において、各産業が再定義されているのはご存知の通りかと思います。モビリティ、アグリテック、フィンテック、メディカルテック、そしてメディア領域ではインターネットメディアが躍進しています」。

インターネットやAIが発展する中でのコマース領域における変化を、江川氏は広告費から読み解く。2023年の日本の広告費約7兆円のうち、約45%(約3兆円)をインターネット広告費が占め、特に目立っているのが1兆円弱にのぼるSNS広告だ。

「Xや、Facebook、LINE、Instagram、TikTokなど、SNSも多岐にわたりますが、個人の発信力が強まっているのが最近の傾向。これは個人のメディア化という流れが加速していると言えるでしょう。特に2010年頃からSNSが急激に国内で成長したことも、個人のメディア化が加速する要因でしょう。インフルエンサーを活用したマーケティングやD2Cの時代になってきたと感じています」。

「個人のメディア化」をコマース視点で捉えれば、それは「個人のストア化」とも言えるだろう。実際に中国のライブコマースでは個人が1回の配信で数億円の売上を作るケースもあるという。日本ではライブコマースが十分に発達していないと言われるが、江川氏は徐々に成長を感じていると語る。

メルカリShopsと他のECでは顧客の“財布”が分かれている

このような変化に伴い、メルカリは2013年の設立以降、次々と新たなサービスをスタートさせ、多くの事業を展開している。2013年 にフリマアプリ「メルカリ」をスタートし、翌年アメリカでもローンチ。2019年にはスマホ決済サービス「メルペイ」を、2021年には「メルカリShops」と領域を拡大し、直近でも2024年にスポットワーク事業「メルカリ ハロ」を、2025年には「メルカリモバイル」を開始。広告事業もスタートしている。

その中でも、今回江川氏がフォーカスしたのが「メルカリ」内にショップを開設し、法人や個人事業主が商品を販売できるEコマースプラットフォーム「メルカリShops」だ。

「メルカリShopsは固定費ゼロ円で、販売手数料のみ、越境販売に強いことも特徴です。また、他のプラットフォームと大きく違う点は、買い物をするお客様の“資金”です。通常のプラットフォームではクレジットカードで決済するお客様が多いですが、メルカリShopsではCtoCである『メルカリ』のフリマで得た売上金をもとに買い物をされるケースがよく見られます。つまりユーザーの“財布が分かれている”ので、(他のECサイトとの)顧客の奪い合いが起こりにくいと言えます」。

画像提供:株式会社メルカリ(カンファレンス登壇資料より)

国内販売と同じフローで越境ECが可能に

江川氏はメルカリShopsを通じて越境ECが簡単にスタートできる点も、出店者のメリットとして強調する。「メルカリShops」では74社とのパートナー連携を通じて約120の国と地域(2024年8月現在)に販売できる。越境EC事業者を通して海外の購入者に販売するため、出店者側では国内販売と同じフローで海外ユーザーに販売できる仕組みだ。

「メルカリShopsでの越境ECは追加コストや手間がかからないため、手軽に海外販売を強化できます。特にご注文が多いのは、タイ、台湾、アメリカなどで、売れ筋はホビーやファッション関連。SNS時代になり、グローバルでも口コミで日本のリユースや一次流通の商品情報が広まり、興味を持って購入していただく方が増えています」。

画像提供:株式会社メルカリ(カンファレンス登壇資料より)

フリマやスキマバイトが次の購買を生む“価値の循環”

フリマアプリでの売上や、「メルカリ ハロ」で得た収入を使って、「メルカリ」や「メルカリShops」で商品を購入できる――。こうして不要だったもの、空いている時間やスキルに価値を持たせることは、メルカリがグループミッションとして掲げる「あらゆる価値を循環させ、あらゆる人の可能性を広げる」ことにつながる。

他のECプラットフォームとは異なるビジョンに立ち、新たなテクノロジーを取り入れながら前進する「メルカリShops」の役割と進化を伝えるセッションとなった。

画像提供:株式会社メルカリ(カンファレンス登壇資料より)

江川 嗣政
株式会社メルカリ 執行役員 General Manager Shops/Ads
楽天株式会社にて支社の立ち上げやファッション領域における事業戦略の責任者を歴任し、グリー株式会社に入社。ゲーム事業やマーケティング事業の責任者を経て、グリーライフスタイル株式会社の代表取締役社長に就任。各種メディア事業やSNSマーケティング支援事業を経験したのち、2024年メルカリ入社。VP / Mercari Business Solutions として主に法人向けの営業強化を担当。