Yahoo!×パルコが示す2015年「オムニチャネル」と「ECの未来」
ECビジネスの最新事例から学ぶデジタルマーケティング
株式会社マイナビが主催する「ECビジネスの最新事例から学ぶ!デジタルマーケティングセミナー」が開催された。
今回のセミナーは現場のキーマン向けに実践的な内容を盛り込んだ形となっており、オムニチャネル戦略はどのように実践されるのか、ECビジネスの未来はどうなるか、といったテーマで基調講演が組まれている。
「ヤフーとパルコが示すマーケティングの未来とは?」と題された同イベントは、「eコマース革命」以降EC分野での勢力を急速に拡大し続けているYahoo!ショッピング、「24時間PARCO」「オムニチャネル」などをキーワードに国内でのオムニチャネル化実践にいち早く成功をみせている商業施設パルコに加え、マーケティングのシステムコンサルに特化したTIS株式会社の三社が一堂に介し、マーケティングを切り口にしたセミナーとなった。
アジェンダは以下のとおり。
◆ECの今後と「Yahoo!ショッピング」の戦略
講師:ヤフー株式会社ショッピングカンパニー営業本部本部長 畑中 基氏
◆店頭の力を活かすオムニチャネル「店頭キュレーションEC~カエルパルコ」
講師:株式会社パルコWEBコミュニケーション部課長 唐笠 亮氏
◆次世代全社マーケティングの実践を支える、組織を超えたIT活用の勘所とは?
講師:TIS株式会社産業事業本部 東日本産業事業部ストラテジックソリューション営業部 シニアエキスパート 秋野 隆氏
ECの今後と「Yahoo!ショッピング」の戦略
最初の講演では、ヤフー株式会社ショッピングカンパニーの営業本部本部長である畑中氏が、EC市場の今後を予測し、そこに「Yahoo!ショッピング」がどのように対応していくのかが語られた。
「消費者が商品を探す際、検索エンジンから探すのではなく、まず行きつけのモールに入りそこから探すように変化していっている。今後はそれがアプリになり、モノを探す第一歩がアプリの起動になる。そうなった場合、消費者のモバイル端末の画面に自社アプリをいかに入れていけるかということがキーになっていくだろう」
と畑中氏は語る。
注文の自動化やパーソナライズの進化、キュレーションの細分化から物流と決済の未来まで、ECに関わる幅広い事項を包括的に予測し、講義を行う。
「Yahoo!JAPANはeコマースの未来に投資をしています」
として、講演を締めくくった。
店頭の力を活かすオムニチャネル「店頭キュレーションEC~カエルパルコ」
消費者の購買行動の変化や多様化する販売チャネルへの対応として、積極的に新しいECの形を提唱している商業施設パルコからは、WEBコミュニケーション部課長の唐笠氏が講演を行った。
販売チャネルが複雑になることにより、成果の可視化は難しくなる。現場への落とし込みに至らずに、いわゆる「成果の横取り」のようなことが起こりがちのため、オムニチャネル施策の浸透は難しいとされてる。
パルコのケースでは、テナントスタッフのブログから直接購入可能な「ショップブログシステム」などを取り入れる事により、商品がどのチャネルから売れたのかを可視化し、成果の見える化を実現した。同社が大々的に展開する、ショップスタッフの接客力や発信力を活かした店頭キュレーションEC「カエルパルコ」を例に、オムニチャネルについて解説を行った。
スタッフのキュレーションによる目利きを活かすショップブログを展開することで、より店頭に近い接客が可能となり、友達感覚でスタッフのファンを作ることにも成功し、成果を感じたスタッフのモチベーション向上へもつながったということが、同社の施策が成功をおさめている要因として大きいだろう。
「オムニチャネルとは、チャネル整備ではなくCRM的アプローチ。ネットとリアルを縦横無尽に行き来するお客様へ積極的に関与することだと思います」
と唐笠氏。
カエルパルコは開始当初、限られた店舗のみの参加であったが、現在では約120の店舗にまで拡大しており、今後さらに地方などにも進出し、拡大路線で展開していくと述べた。
次世代全社マーケティングの実践を支える、組織を超えたIT活用の勘所とは?
最後の講演では、TIS株式会社ストラテジックソリューション営業部のシニアエキスパート、秋野氏が登壇した。
昨今、消費者の購買行動には著しい変容が見られている。市場競争において企業が勝ち抜くためには、社内の様々なチャネルを統合し活用するための、全社横断型のオムニチャネルに対応したマーケティング基盤の構築は避けて通れないと氏は語る。顧客接点の統一化がオムニチャネル成功の一つのキーであるとし、次世代全社マーケティング基盤を実現するため、今何に取り組まなければならないか、実例を織り交ぜ講演を展開した。
「マーケティングのシステムはスピード感が重要で、スピード感のある高度な経営判断が必要です。
本日お話ししたのはシステム構築からみたマーケティングで、システム構築はゼロイチ以外を許してくれません。どうやってゼロイチに落としていくか、という観点で述べさせていただきました。これだけ消費者は多様化し、あるいはグローバルもターゲットになっている中で、やはりゼロイチで語るデータドリブンがマーケティングというものを大きくしていかなければいけない。そのためにはシステムやツールを営業に活かしていきましょうということです。また、いきなりシステムを作るのではなく、関連部署で全社統合のマーケティング組織や戦略を作り、動かす組織にも人や予算のしっかりした配分が必要です」
と秋野氏は語った。
現場の人間とマーケティングの人間の認識と意思の疎通をしっかりと行う重要性を説いて、講演を締めくくった。
次回のマイナビ主催、EC特化イベントにも期待大
以上、3つ講演の終了とともにイベントは幕を閉じた。会場内は満席に近い盛況を見せ、熱心に講演に耳を傾ける参加者であふれていた。
数多くのイベントやセミナーを主催するマイナビだが、今回のようにECに特化している内容は珍しいのではないだろうか。EC業界が盛り上がりを見せることに比例し、今後も様々なEC業界に特化したイベントやセミナーは、増えていくことだろう。