「DS.INSIGHT」の顧客分析機能が強化 マーケティングの一歩目が“仮説”から“検証”へ
LINEヤフー株式会社 データソリューション企画開発本部 DS.INSIGHT プロダクトリード 田村健氏
LINEヤフー株式会社(以下、LINEヤフー)は2025年7月3日、同社が提供する事業者向けデータ分析サービス「DS.INSIGHT」に追加された「セグメント連携機能」を発表した。ユーザーの検索行動から高精度にニーズを探ることのできる「DS.INSIGHT」は、今回のアップデートでどう進化したのか。
同日に開催された「デスクリサーチツール『DS.INSIGHT』新機能説明会・体験会」では、データソリューション企画開発本部 DS.INSIGHT プロダクトリード 田村健氏が新機能を説明。会の後半では、先行ユーザーとして実際に新機能を利用した株式会社IDOMの村田創氏がその効果を紹介した。
実際のユーザー行動データが検索と連動
2019年にリリースされた「DS.INSIGHT」は日々機能追加のアップデートが実施されている。2025年7月時点ではユーザーの検索ニーズを深堀る「Basic」、検索行動の推移を時間軸で見られる「Journey」、最長で1年間の急上昇キーワードなどを見られる「Trend」、特定の地域や地点の来訪者の特徴を把握できる「Place」、嗜好やデモグラフィックから詳細な人物像を描き出す「Persona」が実装されている。
今回発表された「セグメント連携機能」は「Journey」と「Persona」に搭載され、ユーザーが実際に起こした行動の前後で行った検索が見られるようになった。例えばYahoo!ショッピングで特定の商品を購入したユーザーが前後で検索しているキーワードや、特定のページにアクセスしたユーザーの検索行動などが対象だ。
「『DS.INSIGHT』は競合調査からSNS運用、街づくりの効果測定など、幅広い用途で利用されてきました。従来はペルソナの行動仮説を検索キーワードに変換する必要がありましたが、今後は行動を定義した上で分析を進められます」(田村氏)
抽出できる行動データは「検索データ」「購買データ」「ページアクセスデータ」「Yahoo!広告データ」「位置情報データ」「アプリイベントデータ」の6種類。LINEヤフーに可視化したいユーザーセグメントの情報を送信すると、「DS.INSIGHT」のツール上で分析結果が表示されるようになっており、最大10件のデータを同時に依頼できる。また、自社の「LINE広告データ」および「LINE公式アカウントデータ」との連携開始を7月下旬に見込んでいるという。
画像出典:「『DS.INSIGHT』新機能説明会」発表資料より(LINEヤフー株式会社)
画像出典:「『DS.INSIGHT』新機能説明会」発表資料より(LINEヤフー株式会社)
ガリバーも市場・競合調査に愛用
「セグメント連携機能」の先行利用事例として紹介された株式会社IDOMは、大手中古車売買の「Gulliver(ガリバー)」を運営。同社の村田氏はデータドリブンにマーケティングを行うために「DS.INSIGHT」を活用している。
株式会社IDOM マーケティングチーム 村田創氏
「サイト内の行動は以前も観察していましたが、コロナ禍でユーザーが自社ドメインにアクセスしてくる前後の動きも知る必要が出てきました」と村田氏。日常的にさまざまな機能を利用しているが、特に「Journey」の分析には多くの時間を割いているという。
「『セグメント連携機能』を使うと、ユーザーセグメントごとに細かな粒度で行動が見えます。実際の行動前後で検索されるワードは全然違うので、打つべき施策も変わります」(村田氏)
位置情報や競合サイトでのユーザー行動などを抽出することで「サイトや店舗のコミュニケーションがいかにあるべきか、わかりやすくなりました」と、効果の実感を語った。
村田氏はLINE公式アカウントとの連携で、既存顧客の類似ユーザー探索や、「お友だちキャンペーン」前後での違いなどを観測することで、ROI(投資の費用対効果)の高い施策を打てるようになることを期待しているという。
「『DS.INSIGHTで』マーケティングの大きな方向性を最適化しつつ、今後は認知、判断、行動の各フェーズがAIで自動化されることに期待します」(村田氏)
データを資産として積み上げ消費者を“本質的に”理解
画像出典:「『DS.INSIGHT』新機能説明会」発表資料より(LINEヤフー株式会社)
EC業界での利用方法に関する記者からの質問に田村氏は、「幅広いユースケースがあります。『セグメント連携機能』で、これまで検索ベースだった行動データが施策ベースになるので、ユーザー行動の解像度が上がります」と回答。顧客が本当に求めている情報を取得できる有意性を強調した。
また、既存の機能である「Trend」は特にECと相性が良く、「これから注目度の高まる商品を仕入れることでユーザーの興味を惹きやすい」と田村氏。さらに購買者を「セグメント連携機能」で分析し、プロモーション対象の重点を決める運用方法も紹介した。
「DS.INSIGHT」で2025年7月現在最も利用者が多いプランである「スターター」は、初期費用12万円、月額費用10万円のサービス(それぞれ税抜 ※1)。マーケティング用のSaaSが多く存在する中、「DS.INSIGHT」が他社サービスに対して持つ優位性についても田村氏に聞いた。
「多くのデジタルマーケティングツールは短期的な最適化に特化しているため、消費者の本質的な理解にはつながりにくいケースも見受けられます。『DS.INSIGHT』を使うと、消費者を本質的に理解し、長期的に会社の資産となるデータを獲得できます。デザインTシャツで知られる株式会社グラニフ様はLINE公式アカウントからECへの誘導を目的としたリッチメニューの改善などでご活用いただいています」(田村氏)
また、田村氏はSEOツールとの違いとして、サービスの網羅性と情報源となるユーザーの多さを挙げる。
「一つひとつの機能には競合がありますが、『DS.INSIGHT』はさまざまなユースケースに対応できます。加えて購買や来店といった検索以外のユーザー行動を属性や関心などで絞り込めるため、行動前後の文脈からフォローアップが可能。『セグメント連携機能』でオフラインのユーザー行動にも視野を広げられます」(田村氏)
画像出典:「『DS.INSIGHT』新機能説明会」発表資料より(LINEヤフー株式会社)
発表会後に記者向けに開かれた体験会に参加したところ、「DS.INSIGHT」が映す情報の粒度に驚愕させられた。例えば東京ビッグサイトの特定日における来場者の検索行動を追跡すると、イベント参加者の関心やその後の購買行動などが手に取るように見えた。
自社のユーザーが起こしていると思われる行動の仮説と検証を繰り返して市場を開拓できる「DS.INSIGHT」は、使い方次第でB2CとB2Bを問わず、高いコストパフォーマンスを見せるだろう。
※1:2025年7月現在。DS.INSIGHT料金プラン