Brazeが「Yappli」「Shopify」との連携強化で顧客体験のパーソナライズを加速

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大矢根 翼

Braze株式会社(以下、Braze)は2025年8月25日、新たな顧客エンゲージメント基盤「Braze Data Platform(ブレイズ・データ・プラットフォーム)」を発表。記者会見ではBrazeの事業戦略や「Braze Data Platform」の製品解説に加えて、「Yappli」「Shopify」との連携を強化したことによって可能になる顧客体験が紹介された。

会見にはBrazeの代表取締役社長 水谷篤尚氏、同社 日本市場製品責任者 新田達也氏、株式会社ヤプリ 取締役執行役員COO 山本崇博氏、Shopify Japan株式会社 日本カントリーマネージャー 馬場道生氏が登壇。それぞれの立場から「Braze」のアップデートで創造される新たな価値を語った。

社会の変革に対応する「Braze Data Platform」

2011年に創業されたBrazeは2020年に日本へ進出し、顧客接点を強化するオムニマーケティングソリューションとして、2025年時点で国内100社以上に導入。2.7億人以上のMAU(月間アクティブユーザー)に対して、月間299億通以上のメッセージを配信している。利用事業者の業態はECからオフラインの店舗や金融まで幅広い。

会見で水谷氏は、Brazeが成長を続けている要因=Brazeが求められる市場変化と背景について、以下の5点をあげた。

【01】マスメディアからスマホなどへと情報提供手段が変化した「社会・技術の進化
【02】消費者と企業が双方向につながってコミュニティを形成する「消費者と企業の関係
【03】「売る」力から顧客に「使われる体験」にシフトした企業の「提供価値
【04】データとロジックを使って施策を実行できる仕組みを作る「施策の戦略性
【05】人手不足をAIなどで自動化することによって確保する「施策の実効性

株式会社Braze会見資料より

こうした環境においてBrazeは、適切なタイミング(Right Timing)で適切なメッセージ(Right Message)を、適切な文脈(Right Context)、適切なチャネル(Right Channel)で届ける、「4R」で応えると水谷氏は語る。

技術的には、顧客エンゲージメント基盤「Braze Data Platform」により、データの統合(IN)、活用(Process)、配信(OUT)を瞬時に実行し、多様なSDKやAPIを介してデータの統合や配信が可能となる。新田氏は「消費者の購買パターンが読みづらく、企業のコスト意識も高い現代では、あらゆるデータソースを低コストかつ高速に組み替えてPDCAを回す必要がある」と語った。

「Yappli」との連携強化で顧客体験を進化

今回Brazeとの連携の強化が発表されたヤプリ株式会社の「Yappli」は、ノーコードでネイティブアプリを制作できる国産SaaSだ。Brazeとの連携強化により、購買情報やイベントデータを活用してフォロー通知や商品紹介が可能になる。

Brazeを通じて『Yappli』のアプリでプッシュ通知やアプリ内メッセージを配信し、より濃いコミュニケーションが可能になります。また、ヤプリのアンケート機能やアプリ内行動データ、位置情報などを『Braze』に返すことで、新しい顧客体験を実現できます。これが開発不要でできるのが大きな強みです」と山本氏は語る。

株式会社Braze会見資料より

続けて山本氏はプッシュ通知の重要性を強調した。機械学習によって配信時間を最適化することで、最適なタイミングでの配信が可能になるという。

アプリを通じてロイヤルティを高める取り組みも可能です。例えばアプリの行動データをもとに会員ランクを通知し、エンドユーザーと企業双方の体験を最大化します。両社のプラットフォームを活用しながら、顧客体験をどんどん進化させていきたいと考えています」(山本氏)

「Shopify」との連携強化によるユニファイドコマースの実現

続いて発表されたShopifyとの連携強化は、双方のコネクタ連携の強化だ。Shopifyはオンライン、実店舗、国内外展開など、多様なチャネルにAIやデータ活用サービスを展開している。「『Braze』と『Shopify』のシナジーはTime to Valueの大幅な短縮になる」と馬場氏。

株式会社Braze会見資料より

時間を価値へと変換するためのポイントとして馬場氏が掲げたのは、顧客接点のデータを統合し、顧客ごとの購買体験を最適化するユニファイドコマースの迅速な立ち上げと、データを活用したパーソナライズ体験の実現だ。

コマース基盤の『Shopify』、エンゲージメント基盤の『Braze』が融合することで、顧客ごとのストーリーを持つ新しい体験が創造されます」と馬場氏は語る。

2029年に年間売上100億円を目指すBraze

Brazeは現在の高い成長率を維持しながら、2029年に年間売上100億円を目指すという。水谷氏はこの目標達成に向けた「3つのフォーカス」を紹介した。

1つ目は各産業でリーダーポジションを確立することです。我々が注力する産業で完全なリーダーになること。2つ目はパートナー協業による成長支援です。大手企業の採用が増えており、Braze単独ではできない変革をパートナーと伴走しながら支援します。 3つ目は国内市場への対応です。国内の要望を製品開発に反映させ、日本市場で大きなマーケットを持つ企業様との連携を進めていきます」(水谷氏)

株式会社Braze会見資料より

データドリブンで施策を立て、それを確実に実行していくプロセスは「言うは易く行うは難し」だ。また、内製化したプログラムは開発者に属人化しやすい。人口動態的に人材難は深刻化する一方だ。ノーコードでナレッジシェアが容易なデータプラットフォームの採用は、EC事業者にとって重要な施策になってくるだろう。

●参考:Braze公式サイト(Braze株式会社)


記者プロフィール

大矢根 翼

2018年法政大学卒業後、自動車部品メーカーに就職。
ブログ趣味が高じてライターに転身し、モータースポーツメディア『&Race』を副編集長として運営。
オウンドメディアの運営、記事制作など、複数ジャンルで記事制作をメインに活動している。

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