Amazon Ads、Prime Video広告に3つの新フォーマット 動画広告はフルファネル戦略の要に【Amazon Japan Upfront 2025】
Amazon Adsは2025年9月4日、広告事業に関するイベント「Amazon Japan Upfront 2025」を開催。動画広告に関する戦略や最新インサイトを紹介するとともに、日本におけるPrime Videoの新広告フォーマットを発表した。
Prime Video広告の月間平均広告リーチはグローバルで2億人以上(※1)。日本ではPrime Video視聴者の平均93%が毎月Amazon.co.jpでの購入経験があり(※2)、購買シグナルに基づいた的確なオーディエンス設定に強みを持つ。今回発表された3つの新広告フォーマットはそうした強みをさらに強化し、Amazon Adsの特徴であるフルファネル戦略をより強固にするものだ。
視聴者にアクションを促す「インタラクティブ動画広告」
Prime Video広告に追加される1つ目は「インタラクティブ動画広告」だ。動画広告の画面上の囲みに商品情報やQRコードなどが表示され、視聴者がそれをリモコンで選択したりスマホで読み取ったりすると、広告の商品をAmazonのカートに追加したり、ブランドページに遷移したりできる。
視聴者に広告を見せるだけでなく、広告に対して能動的なアクションを促すもので、商品やブランドの認知から購入までの距離を縮められる。Amazonで商品を販売している企業なら、広告から直接購買につなげられるし、そうでない企業、例えば旅行や保険、自動車といった業種の企業でも、資料請求や問い合わせへの導線を作ることができる。また、視聴者のアクションから広告効果を分析し、他の広告キャンペーンに活かすこともできる。「インタラクティブ動画広告」は2026年上半期に提供開始予定となる。
「インタラクティブ動画広告」のイメージ。動画広告に表示された商品をリモコン操作でクリックすると、商品がカートに入る。Amazonで商品を販売していなくても利用できる
※1:Amazon調べ(2024年5月)
※2:Amazon調べ(2023年8月~2024年8月)
“一時停止”の際に表示する「インタラクティブポーズ広告」
2つ目は「インタラクティブポーズ広告」。これは視聴者が、視聴中の動画コンテンツを一時停止した時に広告を表示するフォーマットとなる。リモコンなどで一時停止ボタンを押すと、画面上にブランドメッセージとイメージ画像で構成された半透明の広告が表示され、そこからAmazonのカートに商品を入れたり、商品やブランドの情報をメールで受け取ったりできる。動画視聴を一時休む時に表示されるので、視聴を邪魔することなく広告を届けられるのが特徴。「インタラクティブポーズ広告」は2026年上半期に提供開始予定となる。
これらのインタラクティブ広告により、米国では視聴者からの認知が30%向上、購入意向は28%向上、カートへの追加率は6.3倍になり、最終的な注文は2.5倍に増加といった効果が出ているという(※3)。
※3:「認知」はKantar社の調査、米国、2024年3月8日~3月24日/「購入意向」はKantarインタラクティブ広告コンテキストラボ調査、米国、2024年3月7日~3月23日/「カートへの追加」「注文」はAmazon Internalデータ、米国、2024年10月~2025年4月
“その日”を狙って視聴者にリーチする「FITO」
3つ目は「FITO(ファーストインプレッションテイクオーバー)」だ。視聴者がPrime Videoを起動し、その日初めてコンテンツを再生する際に表示されるプリロール広告枠に独占的に配信できるフォーマットとなる。
FITOは視聴開始前のプリロール広告枠に確実に配信できるもので、視聴開始時の印象に残りやすいタイミングで、幅広い視聴者へリーチできるのが特徴。高いブランド認知の獲得や記憶への定着が狙えるので、例えばキャンペーン開始日に一斉に注目を集めたい場合などに向いている。「FITO 」は2025年内にβ版を提供開始予定だ。
Amazon Japan Upfront 2025に登壇した、Prime Video VP, Global Prime Video Advertisingのジェレミー・フェルファンド氏
Amazon Adsによる「フルファネル戦略」
マーケティングにおいて認知を獲得するのは大事だが、そこからいかに商品の購入やサービスの利用につなげていくかも重要になる。つまり、新しいオーディエンスにリーチしてブランドの“認知を高め”、商品の“検討”を促して“コンバージョン(商品購入やサービス利用、資料請求などの行動)”につなげ、リピート購入やブランドへの信頼といった“ロイヤルティ”を育てるという、カスタマージャーニーに沿って考える必要がある。
Amazon Adsは、そのカスタマージャーニー全体に併走して提供する「フルファネル戦略」を軸としており、Prime Video広告やTwitch広告などの動画広告はその要になる。
Amazon Japan Upfront 2025に登壇した、アマゾンジャパン合同会社 Amazon Ads ジャパン カントリーマネージャーの石井哲氏
アマゾンジャパン合同会社 Amazon Ads ジャパン カントリーマネージャーの石井哲氏は、「Amazon Adsのフルファネル戦略は、予算の規模や事業の大小にかかわらず、あらゆる規模の事業会社のためにある。対象となるお客様も年齢性別を問わない」と語る。
「朝起きてAlexa対応のスマートディスプレーに話しかけ、通勤通学の間はスマートフォンでPrime VideoやAmazon Musicを楽しみ、日中はAmazonのサイトで買い物をしたりライブ配信のTwitchを視聴したりと、生活のあらゆる場面でAmazonと接する機会、タッチポイントがある。その中でAmazon Adsは、最適な広告を最適な場所で効率的に提供し、ブランドとお客様をつなぐ機会を提供できる」(石井氏)
没入感や臨場感を出しやすい動画広告を、フルファネルのあらゆるポイントで使い、エンゲージからコンバージョンまで提供する。このフルファネル戦略は時代の流れとも言える。
「スマホやパソコン、コネクテッドテレビの画面で動画を視聴する時間がどんどん伸びている。動画配信サービスの利用率は2019年の17.4%から、2022年は52.1%に増えた(※4)。動画広告市場も右肩上がりで推移しており、2024年は7249億円となっている(※5)。視聴デバイスで伸び率が高いのは、テレビ画面で動画配信サービスを視聴できるコネクテッドテレビで、今後もさらに伸びるとみられる」(石井氏)
※4:出典/動画配信サービスの利用率…「令和4年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」(総務省情報通信政策研究所)2024年
※5:出典/動画広告市場規模…「2024年国内動画広告の市場調査」(株式会社サイバーエージェント)2025年2月
“複数の”動画広告フォーマットを使うのが効果的
Amazon Adsには、今回3つの新フォーマットが追加されたPrime Video広告をはじめ、FireTV広告、Twitch、Amazon DSPで配信される動画、Amazon Liveなど複数の動画広告がある。これら複数の動画広告の相乗効果を生かしたフルファネル戦略は、すでに大きな成果を挙げている。
「単一の動画広告フォーマットを使う場合と、複数の動画広告フォーマットを使う場合のアップリフト率を見ると、認知や好意度といったブランドリフトは182%増加、つまり3倍近く(2.82倍)になった。さらに検討促進は56%増加。その先の購入率は176%増加。購入・利用してくれる顧客を新規に獲得できたかどうかを示すKnew to Brand(新規顧客獲得)は230%増加になった。(※6)
Amazonの動画広告フォーマットを複数使うと、1つしか使っていない場合に比べ、ブランドリフトや購入率などが大きく向上する
これらの数字からもわかるように、Amazon Adsとしては動画広告フォーマットを1つだけ使うのではなく、適切なタイミングで、適切なコンテキストで、2つ以上使っていくことをおすすめしたい。それによって広告主側が求める指標が改善され、最終的にマーケティングにおけるROI(投資対効果、投資利益率)を高められる」(石井氏)
Amazonの特徴は、前述のように多様なサービスやデバイスを通じて様々なタッチポイントがあることだ。そこから数兆規模のシグナル(※7)、言い換えるならユーザー行動のデータを得て、そのデータに基づき最適な時間や場所に適切な広告が出せるのが、Amazon Adsの強みと言える。
さらにAIによって、広告のプランニング、実施、分析、最適化のいわゆるPDCAサイクルを回し、投資対効果の高い広告キャンペーンが打てるようにしていく。広告キャンペーンを実施したときに、顧客がどんな経路を経てコンバージョン(購買)に至ったのかという、リーチ経路別の購買率もわかる。
例えば、日本のAmazonのストアに出品しているあるメーカーの事例では、スポンサー広告のみの場合(この場合はAmzon.co.jp内だけで広告を打った場合)を基準にすると、購入率が一番高かったのは最初にPrime Video広告に接触してスポンサー広告に入り、そこからまたAmazon DSPに来るという経路で、実に+933%になったという(※8)。それだけPrime Video広告は販促の入り口として強力だと言える。
Amazon Adsの動画広告ソリューションは今回追加された3つの新フォーマットでさらに強化され、Amazon.co.jpに出店している事業者だけでなく、そうでない企業にとっても非常に魅力ある広告サービスとなりそうだ。
※6:Amazon内部データ/日本/2025年4月8日~2025年7月30日
※7:「シグナル」とは、Amazon DSP の機械学習モデルが関心や親和性を予測するのに役立つ、購入までの過程における様々な消費者イベントや行動を集約したものを指す
※8:Amazon調べ(2025年4月~2025年5月)による、個別事例の分析結果