ビィ・フォアードが語る、海外輸送サービス「ポチロジ」拡充の狙いと展望

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大矢根 翼

越境ECによる中古自動車販売で業界を牽引する株式会社ビィ・フォアード。同社が提供する「ポチロジ」は、200以上の国と地域に年間15万台の車両輸送を行う実績とノウハウを活かした海外輸送サービスだ。2025年4月に千葉県東金市に新たな配送センターをオープンし、6月には第二種貨物利用運送事業(国際航空)の認可を取得するなど、事業拡大フェーズを迎える「ポチロジ」について、ビィ・フォアードの海外物流部長 高瀬淳三氏と同 海外物流部の宗藤徹氏に話を聞いた。

自動車輸送で培った流通網とノウハウを活用

「ポチロジ」を運営するビィ・フォアードは、年間15万台以上(※1)の中古車を世界各国に輸出しており、日本のネット通販売上高ランキングでは11位(※2)につける。

創業21年目の同社は、中核事業である自動車輸出で培った国際的な流通網や海外輸送に関するノウハウを活用し、2021年から個人・法人向け輸送サービス「ポチロジ」を提供。小規模な事業者であっても、輸送手続きから現地配送まで一貫して任せられるシステムを作り上げている。

前提として、ビィ・フォアードは物流を直接担当する“キャリア”ではない。そのため「ポチロジ」では海上輸送を行う船会社やDHLやUPSといった国際クーリエ業者と提携することによって、ドア・ツー・ドアの配送サービスを実現している。

このモデルにより、利用者はポチロジ倉庫への搬入手配までを行い、その後の配送完了までの作業を「ポチロジ」側に任せることができる。また、通常の国際輸送サービスでは扱いにくいとされる商品にも対応でき、その配送実績は自動車関連商材から、大型家具、美術品、アルコール類、食品まで多岐にわたる。

※1:中古車輸出台数15万6237台(2024年6月期)
※2:日本ネット経済新聞より(2025年6月発表)

株式会社ビィ・フォアード 海外物流部 ロジスティクスセールスグループ チームマネージャー 宗藤徹氏

「特に食品やアルコールは国や地域によって規制が異なるため、一般的な国内キャリアに配送を依頼しても断られることが少なくありません。一方、我々はDHL様やUPS様の持つ数十年分のノウハウを活用し、それをお客様に還元する形で、食品やアルコールの海外輸送を実現しています」(宗藤氏)

宗藤氏は、アルコールの持ち込み規制が厳しいシンガポールにウイスキーを送る、マダガスカルに進出したラーメン店に現地調達が難しい“かんすい”やグルテン粉を空輸する、海外での展示用に繊細な扱いを要する絵画を送るなど、いずれも大手キャリアでは対応が難しいとされる案件を、「ポチロジ」の海外輸送事例として挙げた。

日本からザンビアに人力車のタイヤを届ける、自社コンテナ便の空きスペースを活用しケニアに卓球台を輸送するといった案件も、アフリカ各国でビジネスを展開するビィ・フォアードの強みの表れだろう。

画像出典:株式会社ビィ・フォアード

「ポチロジ」出荷品目ランキング/集計期間:2020年2月1日~2025年4月30日(画像出典:株式会社ビィ・フォアード)。ちなみにサービス名はクリックするだけで簡単に世界へ荷物を送れるサービス=「ポチっと物流」に由来

ビィ・フォアードならではのスケールメリット

海外輸送を検討する事業者(送り主)にとっては、料金面も気になるところ。たとえば、同じクーリエ業者が輸送するのであれば、直接そちらに依頼したほうが安いのではないか、という疑問も浮かぶだろう。

「大手キャリアは、法人顧客向けサービスに非常に強さを持つものの、個人顧客への対応には一定の制限があります。輸送する内容物が明確でなかったり、規制の確認が不十分だったりすると、発送を断られることもある。我々は法人レベルのサービスクオリティを、個人のお客様にも同じように提供できるという点が、大きな違いです」(宗藤氏)。

つまり「ポチロジ」の場合、ビィ・フォアードが大手クーリエに対して荷送人(運送契約を結ぶ依頼主)の立場でありながら、他社の貨物も取り扱うことによってスケールメリットを生み、運送料金を抑える仕組みとなっている。

現在「ポチロジ」の利用者は約8割が個人。個人で大手キャリアに配送を手配すると高額になりやすいが、「ポチロジ」ではビィ・フォアードが法人契約を結んでいるため、輸送品質・価格ともに競争力のあるサービスを提供できるのだという。

とはいえ、単純に料金のみを比較すれば、「ポチロジ」よりも安価なサービスも存在もする。

「正直に申し上げると、サイズが小さく軽いものであれば、EMS(日本郵便の国際郵便サービス)の方が安いです。ただし、EMSはさまざまな制限があり、種類によっては送れないケースもあります。インボイス作成や送りたい国の規制の確認などを自分で行わなければならないというハードルもあります。

『ポチロジ』ではインボイスの作成支援、規制確認などにも全て対応していますので、特に個人のお客様にはこうした手厚さは大きなメリットになると考えています」
(高瀬氏)

株式会社ビィ・フォアード 海外物流部長 高瀬淳三氏

輸出入に関する規制は国や地域によって多岐にわたり、食品以外でもコスメ商材の成分、ワシントン条約に抵触する象牙やワニ革が使われていないかなど、詳細な確認が欠かせない。こうした規制を含めて、海外輸送に不慣れな事業者や、大きな商材を送りたい人に対して、柔軟な対応をしつつスケールメリットを示せることが、「ポチロジ」の強みと言えそうだ。

直近では1990年代のバンドブームで多く流通したギターを海外に販売する、ハンドメイドのアクセサリーを自社ECを通じて海外に向けて販売するといったケースでも活用されている。また、大きな商材の配送は自動車やオートパーツを主力として扱うビィ・フォアードのお家芸で、輸出コストや納期のシミュレーションも迅速に行えるという。

「ポチロジ」を利用した海外海外輸送事例。左はノルウェーに発送された食品。アメリカやフランスに向けて絵画・アートグッズも送られている(右写真)

認知拡大とシステム拡充で成長目指す

順調に事業を拡大している「ポチロジ」だが、新興サービスであるがゆえに、既存のECプラットフォームに紐づけられる主要輸送サービスとしてのポジション確立に苦労していることは、ビィ・フォアードも認めている。

また2025年は「トランプ関税」による手続きの混乱や、それに伴う米国宛て郵便物の一時引受停止などを受けて問い合わせ数が急増しているため、需要の高まりに対応できるシステム構築を急ピッチで進めているという。

そうした中で「ポチロジ」は法人ユーザーの取り込みにも積極的な姿勢を見せており、その裏付けとして高瀬氏は、他社が販売した車の輸送を月間数百台単位で請け負っていることを挙げた。

「関税・免税制度など、対象となる国別の特性を理解した上で、メリットを打ち出し、日本企業や外国の方にとって使いやすいサービスを提供していく予定です」(宗藤氏)

配送センターを整備しワンストップ体制を強化

2025年4月にオープンした千葉県東金市の倉庫は、増加する集荷量に対応するだけでなく、「ポチロジ」のサービス自体を拡充するミッションを担っている。同拠点はShopifyなどと連携可能なWMS(倉庫管理システム)を備え、「販売と在庫管理、出荷作業を一気通貫で行えるようになり、『個人輸出に対応できる物流インフラ 』が整いましたと宗藤氏。

これまで「ポチロジ」では東京都八王子市の倉庫で集荷を行っていたが、今回アドレス・サービス株式会社の東金サービスセンター内にオープンした「ポチロジ配送センター」では、倉庫業務を同社に委託。同社ではもともと電化製品の修理や返品対応もカバーしており、「ポチロジ」で扱う荷物の検品や管理に対応できる体制をとっている。

さらに配送センターの整備はコストメリットにも貢献しており、高瀬氏は梱包資材や作業工程も自社でまかなえるため、梱包コストも削減できますし、横持ち(自社拠点間の輸送)による追加費用も発生しません」と話す。

2025年4月にアドレス・サービスの東金サービスセンター内にオープンした「ポチロジ配送センター」(画像出典:株式会社ビィ・フォアード)

将来的には日本を経由しない第三国間輸送への対応も視野に入れており、その技術、システムはすでに準備しているという。「アメリカで仕入れた高級ワインを別の国へ送るといった案件も、すでに輸送実績があります」(高瀬氏)

越境ECにおいては、輸出先の政策をはじめとする外部要因の変化に柔軟に対応できなければビジネスは継続できない。同時に事業者としては大切な商品を安全に、確実に、できれば安い料金で送りたい。こうした複雑かつ多様なニーズを満たし、「ポチロジ」はユーザーに選ばれる国際輸送サービスとなるのか。今後の展開に注目したい。


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記者プロフィール

大矢根 翼

2018年法政大学卒業後、自動車部品メーカーに就職。
ブログ趣味が高じてライターに転身し、モータースポーツメディア『&Race』を副編集長として運営。
オウンドメディアの運営、記事制作など、複数ジャンルで記事制作をメインに活動している。

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