「DS.INSIGHT」がアップデート! 消費者の検索行動や関心が「もっと見える」ように

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大矢根 翼

LINEヤフー株式会社は2025年11月13日、事業者向けサービス「ヤフー・データソリューション」におけるデスクリサーチツール「DS.INSIGHT」に機能追加のアップデートを行った。

この発表を受けて編集部では、LINEヤフー株式会社 コーポレートビジネスドメイン ビジネスPF SBU データソリューション企画開発ユニット ISディビジョンリード 野口真史氏と、同ユニットDS開発ディビジョン アウタープロダクトディビジョン 栗田優輝氏を取材し、新機能などを体験。そのレポートとして、「DS.INSIGHT」の新たな使い方や、それによって獲得できるインサイトなどを解説する。

「何から調べればいい?」にキーワードが道筋を示す

「DS.INSIGHT」は「Basic」「Journey」「Trend」「Place」「Persona」の5機能で構成されており、機能を掛け合わせることで時間や場所によって変化する消費者の行動を追跡できるマーケティングツールだ。サービス内で閲覧できるデータはLINEヤフーが検索やGPSから取得した生のヤフーユーザーの行動を統計化しているため、消費者の意外な関心遷移などを知ることができる。

今回のアップデートでは「Basic」機能の情報量が増加し、関心を保存しておける「個人設定」機能が追加された。「Basic」機能は従来から実装されていた主要機能で、検索ボリュームや検索者のデモグラフィック、共起キーワードなどを閲覧可能だった。今回のアップデートにより、筆者の体感でも従来よりサービス上で消費者のインサイトを直感的に収集できるようになった。

開発の背景には、機能を継ぎ足しながらアップデートしてきた経緯と、DS.INSIGHTユーザーの分析の思考の流れに沿う」構造に作り直す意図があったと栗田氏は語る。また、「『色々調べられるがゆえに、何から調べればいいかわからない』という声が多かった」と野口氏。導線を見直すことで、DS.INSIGHTユーザーが関心を持った箇所から細かく探索できるように設計したという。

LINEヤフー株式会社 コーポレートビジネスドメイン ビジネスPF SBU データソリューション企画開発ユニット ISディビジョンリード 野口真史氏

LINEヤフーは従来はCSVファイルとしてダウンロードし、DS.INSIGHTユーザーが手動で加工していたデータを機能に内蔵することで、“手間をかけずに、誰でも簡単に”を目指した。

ブラウザが教えてくれないインサイトが見える

ログイン直後のトップ画面からアップデートは見受けられる。全国で注目度が急上昇しているキーワードや周期的に検索ボリュームの高まるキーワードを、カテゴリーから抽出できるようになった。特にトレンド性のある商材を大きなマーケットに向けている事業者にとっては、キャンペーンなどのヒントを得やすくなったといえるだろう。

トップページ下部にはアカウントの「DS.INSIGHT」利用履歴に基づき、検索ボリュームが急激に変化したキーワードを表示する機能もあるため、施策が及んでいないキーワードなどのインサイトを得る効果が期待できる。

「DS.INSIGHT」の威力をより強く感じるのは、キーワードを入力して検索者の動向を深掘りしたときだ。検索者の性年代別分布、都道府県での偏りを見るといった機能は従来通りだが、こちらも人口ピラミッドを図示に反映するなど、直感的な見た目に変わっている。

詳細画面で見られる「追加候補」は通常のブラウザで検索したときに表示されるサジェストとは異なるアルゴリズムで表示している。野口氏は「サジェストはスペースを挟んで既存キーワードを補完するような動きをすることが多いですが、『追加候補』は言い換えやライバル企業名など、さまざまなインサイトに対応していますと語る。

画像出典:DS.INSIGHT(画像上部が「追加候補」)

例えば「醤油」に対するサジェストは「醤油 レシピ」などになりがちだが、「追加候補」は「オイスターソース」「マヨネーズ」などを挙げる。

「一般的な検索サジェストは、あくまで検索者の目的地への最短ルートを提示する補助的なツールですが、『DS.INSIGHT』は検索の背景や意図の全体像を浮かび上がらせることに重きを置いています。

企業の担当者は競合情報こそ知りたい。純粋な検索データと行動データに基づく『DS.INSIGHT』は『知りたいことを深く掘り下げて理解する』を目的としています
」(野口氏)

ビジュアル強化で社内資料にも利用可能に

視覚効果的に大きな変更になった箇所が「共起キーワード」機能内の「ツリーマップ」と「散布図」だ。「ツリーマップ」は、「共起キーワード」の検索頻度を面積で表示。直感的に重要なキーワードを把握した上で、その「共起キーワード」の先に何があるかをクリックで探索していける設計になっている。

画像出典:DS.INSIGHT(ツリーマップ)

「散布図」はX軸とY軸に2種類キーワードの共起語を配置し、どちらの側でより多くの検索行動が起きているかを見られる新機能だ。自社ブランド名と競合他社のブランド名を比較すると、どのキーワードがどちらのブランドと紐づいて多く検索されているかが見えます(栗田氏)。

画像出典:DS.INSIGHT(散布図)

競合ブランドがまだ発見できていない場合は、「Journey」機能を使って自社ブランドを検索した人々の行動を追跡することで、比較検討されている競合他社が見えてくるという。栗田氏が「面白い」と語る使い方は、出力された共起語を深掘りすることで地域や属性といったデータごと取得する手法だ。

また、週次でさかのぼれる機能や、新たに追加された地域で絞り込める機能を使うと、「先週の近畿地方」などのデータに基づいた議論が可能になる。

LINEヤフー株式会社 MSカンパニー ビジネスPF統括本部 データソリューション企画開発本部 プロダクト2チーム 栗田優輝氏

こうしたデータのビジュアル化を栗田氏は「DS.INSIGHTユーザーがインサイトを獲得する役に立つだけでなく、社内資料にも利用しやすい。新商品の開発など、マーケティングの上流工程で見落としがちなキーワードを発見できます」と語る。

データドリブンなマーケティングはマーケターの専売特許ではない。各工程で行われる施策の説得力と実効性を確認・証明する手段として消費者の検索行動は有用な情報になる。「DS.INSIGHT」は今後検索と位置情報をさらに連携させるような仕組みも検討しているという。

今回のアップデートは大幅な機能拡充ではないが、操作性が向上して顧客情報を異なる角度から見られるようになった。体感ではEC運営の方向性を決めるマーケット分析の工数が短くなった印象だ。現状でもかなり強力なツールのDS.INSIGHTだが、アップデートが進めば消費者行動に先回りしてクリエイティブなどを投下していく施策がさらに加速するだろう。


記者プロフィール

大矢根 翼

2018年法政大学卒業後、自動車部品メーカーに就職。
ブログ趣味が高じてライターに転身し、モータースポーツメディア『&Race』を副編集長として運営。
オウンドメディアの運営、記事制作など、複数ジャンルで記事制作をメインに活動している。

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