Yahoo!オークション、スニダンと連携し鑑定サービス開始 偽造品流通防止へ

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大矢根 翼

写真左:LINEヤフー株式会社 執行役員 林啓太氏、写真右:株式会社SODA 代表取締役CEO 内山雄太氏

LINEヤフー株式会社(以下、LINEヤフー)は2025年11月19日、「Yahoo!オークション」において、株式会社SODAが提供する「スニーカーダンク」と連携した鑑定サービスの提供を開始した。

同日に開催された「Yahoo!オークション、偽造品対策に関するオンライン説明会」では、両社が今回の鑑定サービスの概要や、偽造品流通を防ぎ安心・安全な取引を担保する仕組みについて発表。登壇者はLINEヤフー株式会社 執行役員の林啓太氏と、株式会社SODA 代表取締役CEOの内山雄太氏。

成長するCtoC市場で巧妙化する偽造と不正手口

冒頭、林氏は市場の概況としてリユース市場は年々成長しており、そのうちCtoC取引がオンライン取引の約7割に及ぶというデータを紹介しつつ、日本国内における偽造品流通の現状に触れた。「2024年には税関での知的財産侵害物品の輸入差止件数が過去最多の3万3019件を記録(※1)しています」(林氏)。

出典:Yahoo!オークション、偽造品対策に関するオンライン説明会資料

LINEヤフーはこれまでもYahoo!オークションにおいて出品前・出品中の両方で偽造品対策をとってきた。たとえば出品中の商品に対してはAIによる検知・監視に加えて、利用者の違反申告に対して自動非表示や目視チェックで対応するといった対策が行われている。

その中で偽造品と判断された場合は、商品の削除や出品者のアカウントを制限などを行い、違反アカウントの蓄積なども実施しているものの、精巧な偽造品や巧妙化する不正手口への対策は、業界全体の課題でもある。

出典:Yahoo!オークション、偽造品対策に関するオンライン説明会資料

偽造技術の巧妙化について「正規品と区別がつかないようなものも出回っています」と林氏。画像では判別しづらいほど精巧に作られた偽造品は「出品者、落札者ともに気付かずに取引しているケースも増えているのではないか」と語る。また、非対面の取引であるシステムを悪用して《意図的に商品の説明を省いて検知を逃れる》《本物の画像を掲載しておきながら偽造品を送る》《購入者が、届いた実物を偽造品にすり替えて返品する》といった不正の手口も挙げられた。

高い鑑定精度を誇るスニダンと連携

こうした偽造品の巧妙化と不正手口の多様化を受けて、Yahoo!オークションは新たな鑑定サービスをスタート。鑑定を行うのは99.97%という高い鑑定精度(※2)をもつSODA社の「SNKRDUNK(スニーカーダンク。以下、スニダン)」だ。

同社 代表取締役の内山氏は99.97%という鑑定精度は、日々蓄積される膨大な鑑定データと高度な鑑定技術、テクノロジーを掛け合わせて実現できていますと語る。「スニダン」はスニーカーだけでなくファッションやコレクティブアイテムも取り扱い、今年7月には偽造品の調査・研究、分析を行う「スニダン鑑定研究所」も設立(※3)。その鑑定には、鑑定士の目視に加えて、X線透過装置、マイクロスコープ、赤外線カメラ、UVライトなどが導入されており、さらに鑑定士の育成も行われている。

鑑定対象は高額トレカやブランドアイテム

鑑定対象は高額トレカやブランドアイテム出典:Yahoo!オークション、偽造品対策に関するオンライン説明会資料

今回発表されたYahoo!オークションにおける鑑定サービスの対象となるのは、入札開始価格が2万円以上の「トレーディングカード(シングルカード)」と、入札開始価格5万円以上の「トレーディングカード(ボックス、パック)」「ファッション」「アクセサリー・時計」で、かつ対象ブランドの商品(※4)。

鑑定サービスを利用する場合、出品者はYahoo!オークションで落札された商品を「スニダン」の鑑定拠点に送り、真贋鑑定を経て、問題がなければ(正規品と確認されたものは)「鑑定済バッジ・シール」が付与され、落札者へ発送される。また、売上金は落札者への発送時点で出品者へ入金される。

安全・安心な売買環境実現を目指す

林氏は「出品者にとっては通常落札者に送る流れと同じで費用の負担がない」ことと「正規品である証明が加えられて、落札者に届く」ことをユーザーメリットとして挙げた。従来発生していたクレームの減少や、受け取り連絡が届かないことで入金が遅れるといったトラブルの回避も見込まれている。鑑定料金や鑑定施設から購入者への送料については、当面は無料を予定しているという(送料含む鑑定料は、今後有料となる可能性がある)。

出典:Yahoo!オークション、偽造品対策に関するオンライン説明会資料
●偽造品または商品説明・写真と相違がある場合、出品者に返送。返送料は、出品者負担となる

内山氏は「世の中から偽造品の被害そのものをなくしていくこと」を目指すと語り、自社として「スニダン」で鑑定を行うだけでなく、Yahoo!オークションと提携する意義を強調した。林氏も「日本最大級のインターネットオークションサイトとして偽造品の流通を防いで、ユーザーが安全安心な取引をできる環境を作る責任がある」とコメントしている。

Yahoo!オークションが「スニダン」と組んでスタートした新たな鑑定サービスは、順調に機能すれば、出品者・落札者の双方にメリットをもたらす仕組みとなるだろう。また、ユーザーにとってはプラットフォームを選ぶ基準がひとつ増えたとも言える。年々巧妙さを増す偽造品・不正手口に対して、各プラットフォーマーが今後どのような対策をとっていくのかにも、合わせて注目していきたい。

※1:令和6年の税関における知的財産侵害物品の差止状況(詳細)(財務省)
※2:「SNKRDUNK」の2025年1月1日~2025年6月30日の取引数から、真贋鑑定、品質検査にて過ちが発生した件数をもとに算出
※3:関連記事偽造品撲滅に挑む! フリマアプリ「スニダン」が鑑定研究所を新設
※4:対象ブランドは11月19日の発表時点で257ブランド


記者プロフィール

大矢根 翼

2018年法政大学卒業後、自動車部品メーカーに就職。
ブログ趣味が高じてライターに転身し、モータースポーツメディア『&Race』を副編集長として運営。
オウンドメディアの運営、記事制作など、複数ジャンルで記事制作をメインに活動している。

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