BASE、新機能「かんたん海外販売」で事業者の海外への販路拡大を後押し
2025年12月10日、BASE株式会社はネットショップ作成サービス「BASE」における新機能「かんたん海外販売」を発表。同日に開催されたプレス説明会では、EC基盤となる「BASE」と、グループ会社で越境ECの国内代行事業を手がけるwant.jp株式会社の「want.jp」の連携によって実現した新たなソリューションが紹介された。
2026年1月14日からの提供が予定されている「かんたん海外販売」は、越境ECにおけるEC事業者の作業負担を軽減する新機能だ。説明会にはBASE株式会社 上級執行役員COO 髙橋直氏、同社 BASE事業責任者 林田秀平氏、同社 Global Division Manager 奥田晃成氏、want.jp株式会社 代表取締役 金泰成氏が登壇。約7割の「BASE」利用ショップが関心を示すものの、同じく約7割が「大変そう」だと捉えている(※1)越境ECの課題と、それらを「かんたん海外販売」がいかにして解決するかについて解説した。
関心・ハードルともに高い越境EC
林田氏は「2019年から2024年にかけて『BASE』での越境EC注文額は15倍に成長している」と越境EC分野に注力する背景を解説。同時に越境ECを「ECの総合格闘技」と表現し、配送・トラブル対応・税制・決済といった越境ECのハードルに関する事業者の声を引用した。
「ネットショップから海外にかんたんに販売できる機能がある場合、利用して販売したいと思いますか?」という質問に90.3%の回答者が「利用して販売してみたい」と回答したアンケート結果(※1)も示し、高い関心と難しさがせめぎ合っている現状を紹介した。
画像出典:BASE株式会社
奥田氏は、従来の越境ECが抱えていた「表裏一体」の課題を、購入者と事業者両方の目線から解説。挙げられたのは「海外の決済手段に対応しておらず『買えない・売り逃す』」「送料が規制に沿って適切に設定されていないため、購入者ごとに送料や配送手段について個別に確認・調整する必要が生じている」「海外向けの送り状や梱包対応が必要で、トラブルが発生しやすい」といった課題だ。
特に一般的な購買代行サービスは「商品ページから外部ページへと遷移する場面で購入体験が分断する」と金氏は指摘。そこでは購入者自身が商品の重量やサイズを調べ、カートの上部にある「国際送料シミュレーター」で送料を予測して入力するという難しい作業が要求される。
また、購買代行サービスが商品を受け取った段階で発送の可否と最終的な国際送料が購入者に通知され、購入者が再度サイトに戻って送料だけを別途支払う必要がある。そうしてようやく注文が確定し、商品が届くという流れだという。
画像出典:BASE株式会社
これらの課題は「本当に届くのか」といった不安を購入者と事業者に与えていたと奥田氏。不正決済を心配する事業者の声も多いという。さらに、購入者目線では外部サイトでの操作や情報登録が必要になることでブランド体験が断絶し、結果的にカゴ落ちしてしまうという課題もあった。
そこで、今回発表された「かんたん海外販売」は、国内ECで商品を購入するように、「BASE」利用ショップ内で送料を含む決済が完了する仕組みをとっている。
※1:BASE株式会社「オーナーズ調査2025」より
実証実験では「かんたん海外販売」でCVRが3.6倍に
奥田氏は「かんたん海外販売」の特徴として、購入者が「スムーズにショッピングできる」こと、事業者が「海外対応のすべてをお任せできる」ことの2点を挙げた。「かんたん海外販売」では、海外からのアクセスを検知すると専用のカートが開き、海外送料を含む金額を海外の決済手段で支払える。この間に当該国での販売可否も判定される。
画像出典:BASE株式会社
金氏は「ショップのページ上で、世界観を崩さずに、カートに入れるところからチェックアウトまで自然に流れていくという体験」にこだわったと語り、2024年にBASEグループに加わった「want.jp」とのサービス統合の成果を強調した。
「かんたん海外販売」では、海外で注文ボタンがクリックされると、「want.jp」が日本国内のショップから商品を購入し、「want.jp」のシステムを介して海外へ発送される。機能利用料は「海外で商品が売れた場合のみ決済金額の5%(※2)」で、奥田氏は「かんたん海外販売」は「誰でもノーリスクで始められる料金モデル」と語った。
※2:決済金額には、国内倉庫への送料が含まれる。なお「BASE」利用プランに応じた手数料が別途発生する
画像出典:BASE株式会社
また、「かんたん海外販売」の効果について奥田氏は「実証実験では海外アクセスのCVR(購買転換率)が3.6倍に増加した」と語り、海外販売を任せられる安心感や送料の課題が解決したという声も紹介した。
プロダクトの方向性に手ごたえを覚えているという「かんたん海外販売」は、2025年12月10日よりエントリー受付を開始しており、2026年1月14日に正式公開が予定されている。利用にはエントリーが必要だ(※3)。
配送は100カ国以上に対応し、言語は最も購入者の多いことが想定される英語に対応。決済手段は主要ブランドに対応しているが、言語と決済については段階的な拡充を目指しているという。
※3:エントリー期間: 2025年12月10日〜2026年1月7日。開始時点では利用枠に制限を設けているが、順次、提供枠を拡大予定
「want.jp」とのオペレーション連携で工数を削減
金氏は実証実験で3.6倍に急増したCVRは、「ショップ内での自然な購入体験」「短くシンプルな購入ステップ」「驚くほど安価な国際送料」の3点が要因だと語る。技術的には、カートに組み込まれたAIを活用することで購入者に「国内で商品を購入するのと同じ体験」を提供しているという。
これらを実現した背景には「BASE」と「want.jp」に蓄積された商品データと物流データがある。バックデータから商品のサイズ・重量・品目・該当国の規制を参照し、発送可否と送料をリアルタイム表示している。
画像出典:BASE株式会社
競争力の高い配送料には、国際キャリアに特別レートで積載できていることと、小さく・軽く梱包していることが寄与していると金氏。「want.jp」が培ったノウハウによって高強度な梱包材を最小限のサイズに加工して混載することで、「なるべく空気を運ばない」輸送を実現しているという。
「want.jp」が「ミニマム梱包オペレーション」と呼ぶ手作業について金氏は「非常に生産性を下げます。それでも私たちは、それをあえてやることで、最終的に購入者が『安く・確実に商品を受け取れる』体験を実現しています」と語った。
市場の成熟と少子高齢化が進む国内市場から飛び出し、越境ECに目を向ける事業者は多い。「かんたん海外販売」はカートシステムの拡張だが、海外のマーケットインサイトを捉えた事業者にとっては、自社製品を世界に売り込む機会の増加と言える。「かんたん海外販売」は、限られたリソースをマーケティングと商品開発に振り向け、販売や物流は可能な限りアウトソーシングするという戦略の一助になるかもしれない。
●参考:「かんたん海外販売」特設サイト


