国民生活センター「医薬品のネット通販による定期購入」トラブル事例を紹介し、消費者に注意喚起

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大矢根 翼

独立行政法人国民生活センターは2026年1月14日、医薬品のネット通販に関する注意喚起を発表し、記者説明会を開催した。テーマは「ネットで手軽に買えるけど『やめられない』?!医薬品のネット通販による定期購入にご注意!」。医薬品のネット定期購入に関する同センターへの相談件数は増加傾向にあり、中でも60歳以上が相談件数全体の8割を占めるという。本稿では発表された相談事例と、トラブル拡大防止を目的とした注意喚起の内容を紹介する。

相談件数は右肩上がり。60代以上が8割

医薬品のネット定期購入に関する年度別相談件数は2021年度以降右肩上がりで推移しており、2023年度から2024年度にかけて1358件から2066件に増加(グラフ1)。2024年度の相談の年代別件数・割合をみると、60歳以上の年代が全体の8割を占めている(グラフ2)。その背景について国民生活センターでは、高齢者がスマホを利用してSNSなどを経由して定期購入であることに気がつかずに購入してしまったり、(定期購入だとわかっていても)解約条件をこまかく確認しないまま契約してトラブルに発展しているケースも増えているのではないかと、推測している。

また同センターでは、スマホの画面では見えにくい小さな文字や別の場所に重要事項が記載されていることもあるため、「大きく表示されている内容だけでなく、『最終確認画面』を必ず確認し、定期購入や最低購入回数の条件、解約や返品条件を確認してください」と注意を促している。

【グラフ1】PIO-NETにみる医薬品のネット定期購入に関する年度別相談件数の推移

【グラフ2】2024年度における医薬品のネット定期購入に関する相談の契約当事者年代別件数と割合(n=1,977)

※PIO-NET(パイオネット:全国消費生活情報ネットワークシステム)は、国民生活センターと全国の消費生活センター等をオンラインネットワークで結び、消費生活に関する相談情報を蓄積しているデータベースのこと。相談件数は2025年10月31日までの登録分。消費生活センター等からの経由相談は含まれない。なお、PIO-NETにおける「医薬品」には、一般用医薬品のほか、一部の医薬部外品を含む。相談件数は、インターネット通販での定期購入に関する相談のうち「医薬品」に関するものを集計している

出典:ネットで手軽に買えるけど「やめられない」?! 医薬品のネット通販による定期購入にご注意! (独立行政法人国民生活センター)

消費者の認識と実際の契約内容にズレ

発表会では3つの相談事例が紹介された。なお、定期購入に関する相談全体の中では化粧品と健康食品が非常に多く、「医薬品」が占める割合は比較的小さいという。

●相談事例1:単品を1回限りで購入したつもりが複数個セットでの定期購入契約になっていた(70代・男性)
パソコンでニュースサイトを見ていた時に「水虫の治療薬が今だけ50%OFF」という広告が出たので販売サイトに進み注文。翌日の注文確定メールで、金額が広告の数倍の額となっていておかしいと思っていたら、その後商品が4個入った荷物が届き、販売事業者に電話したところ「4個ずつ届く定期購入契約で次回は数か月後に届く」と告げられたという。

●相談事例2:「全額返金保証」を受ける条件が思った以上に厳しく、返金を申し出ても返金されない(50代・女性)
SNS広告を見て、かかとの角質を取り除く医薬品を、代金後払いで注文。約1カ月後に商品が届いたが、届くのが遅くすでに他の商品を利用していたので販売事業者に電話して返品と解約希望を伝えたが、「返品は発送の10 日前までに連絡する必要がある、次回分も本日発送済なので届いたら支払うように」と言われた。返金保証制度があると書いてあったが、保証を受けるには6回の継続購入と利用した商品の箱や容器、利用明細書等を全て返送することが必要だと言われ、納得できない。

●相談事例3:医師から使用しないよう言われたのに、定期購入契約を理由に返品、解約できない(60代・女性)
動画配信サイトの広告で見た、手足のしびれが取れるという医薬品を購入。お試しのつもりで申し込んだら定期購入だった。仕方なく数回使用したが、発疹等の症状が出たため医師に相談したところ、使用しないよう言われた。後日、2セット分の医薬品が届いたため、体に合わないので返品したいと連絡したが、定期購入契約になっているので、すぐには解約できないと断られた。返品したい。

3つの事例はいずれも、消費者が購入前に認識していた契約内容と実際の契約の間に乖離があったこと、すぐに解約できないことがトラブルの原因になっている。

国民生活センターからの注意喚起

国民生活センターでは相談事例から見える問題点として、「定期購入であることを認識せずに申し込み、商品が手元に届いて初めて定期購入だとわかり、返品や解約のトラブルになる」「販売条件や返品、解約条件の表示がわかりにくい」という、ネット販売特有の課題を指摘する。

「例えば『1回限り』と表示されていても、その価格で購入できるのが1回のみという意味であったり、『定期しばりなし』と書かれていても、定期購入そのものではなく、“最低購入回数のしばり”がないという意味だったりします」(国民生活センター)

また、医薬品のネット販売には厳密なルールがある。薬機法に基づく許可を受けた薬局や店舗販売業のみが販売でき、実店舗に貯蔵、陳列している製品しか通信販売できない。また、実際の店舗の写真や陳列状況、勤務している専門家の氏名などをサイトに掲載する必要がある。さらに、効能や効果について誇大広告をすることも禁止されている(※参考1)。

同センターは、特にネット通販で医薬品を購入する場合に、消費者においてもこれらの表示等を意識的に確認することが重要であるとした。

※参考1:医薬品のネット販売を安心して利用するために(政府広報オンライン)

出典:独立行政法人国民生活センター

国民生活センターは消費者へのアドバイスとして下記の4点をあげている。

① 販売サイトに法令に基づく表示事項が記載されているか確認すること
② 定期購入になっていないかなど、広告表示や購入画面の記載内容をよく確認すること
③ 購入前に、その医薬品を使用する必要があるか、さらに、定期購入する必要があるか、自身で確認すること
④購入した規約品を使用し、体に異常を感じたらすぐに使用を中止し、販売者の相談窓口に連絡するとともに、医療機関を受診こと

中でも、②に関しては【トラブルになった時にそなえ、自分が見た広告表示や最終確認画面のスクリーンショットを撮り、契約時の条件を証拠として保存しておくようにすること】、③に関しては【特に、持病のある場合や日常的に使用している医薬品がある場合、新たに医薬品を使用する際には注意が必要。医薬品を購入する前に、薬剤師やかかりつけ医などの専門家に相談すること】をすすめている。

事業者として、健康被害を招くことは当然あってはならず、今回あげられたようなトラブルも望ましくない。返品・返金はオペレーションを含めて大きなコストになるし、消費者にとってわかりにくい表示はレビューの低下など、レピュテーションリスクにも直結する。購入者が確実に重要事項に納得して購入できるよう、わかりやすく、法令に則った表示と販売を心がけていきたい。


記者プロフィール

大矢根 翼

2018年法政大学卒業後、自動車部品メーカーに就職。
ブログ趣味が高じてライターに転身し、モータースポーツメディア『&Race』を副編集長として運営。
オウンドメディアの運営、記事制作など、複数ジャンルで記事制作をメインに活動している。

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