いま、楽天市場で“広告よりもブランディング”が求められる理由──EC環境の変化と実務への示唆

最終更新日:

ECのミカタ編集部

2027年の開設30周年を前に、いまや5万以上のショップがひしめく巨大モールとなった楽天市場。しかし近年、LINEやYouTubeといったSNS・デジタルコンテンツにユーザーの時間が奪われ、「楽天市場に訪れる人が減っているのではないか」とアラートを鳴らすのが、日本ECサービス株式会社 代表取締役社長の清水将平氏だ。

こうした環境変化の中で利益を出し続けるには、広告頼みの運用から脱却し、ユーザーから選ばれる理由をつくる「ブランディング」が欠かせない。本稿では、2025年12月開催の「ECのミカタ カンファレンス」より、【顧客ピラミッドの土台となる見込み客を増やし、リピーター・ファン化につなげる方法】を示した清水氏の実践的提言をレポートする。

楽天成功店舗の共通点は「LINE運用」にある

日本ECサービスが毎年発表している調査によれば、「楽天ショップ・オブ・ザ・イヤー2024」受賞店舗のうち、総合賞トップ10の約9割がLINE公式アカウントを運用。全受賞ショップでも約7割が活用しており、成功店舗の標準装備になりつつあると言えそうだ。

一方、楽天全体で見ると約9000ショップしかLINE公式アカウントを保有していない。LINEは日本の10~60代の約95%(※)が利用するインフラであり、楽天外の生活動線に確実に存在している。だからこそ、楽天内での検索流入だけに頼らず、LINEを起点に見込み客を獲得する仕組みづくりが重要になる。

※令和5年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書(総務省情報通信政策研究所)より

画像提供:日本ECサービス株式会社(以下、本記事内の全図版も同)

清水氏は、顧客ピラミッドの土台となる「見込み客」を増やすことが、楽天市場だけでなくEC全体の成長に直結すると強調した。商品ページの大バナーや本文で「友だち登録→クーポン取得→購入」の導線を設計し、(ポイントアップ対象キャンペーンが開催される)0と5のつく日などの購買意欲が高まるタイミングと連動させることで、効率的に友だちを増やせる。

レビューは「飴とムチ」で増やす──CVR改善の最短ルート

商品レビューを増やしていくのも重要だ。レビューはCVR(転換率)を左右する最重要要素だが、なかなか自然に増えるものではない。清水氏はレビュー投稿を促進するポイントとして“飴(あめ)とムチ”を例にあげ、「『○○すれば得する(アメ)』と「○○しないと損する(ムチ)」の両軸がないと、人はなかなか行動しません」と語った。

つまり、「次回クーポン」など得する仕組みだけを用意しても、リピートしない商材であればお得感はない。そこで延長保証やおまけ・ノベルティ提供のように、「レビューを書かないと損をする」設計も効果的だという。実際に、レビュー投稿者へのノベルティ提供を行った店舗で、投稿率が最大10倍に増加した事例もあるという。

ただし、レビュー運用は手作業では負荷が大きい。そこで日本ECサービスとグリニッジ株式会社のECXグループでは、受注→フォローメール→レビュー投稿検知→クーポン付与→お礼メール送信までを自動化する楽天市場専用のレビュー施策ツール「らくらくーぽん」を開発し、手離れの良さを実現している。同ツールはLINE連携も可能。低評価(★1〜2)を検知してテンプレート返信を行う機能も備え、CVR低下やリピート阻害を最小化するための仕組みとして機能している。

RPP依存の限界──CTR/CVRを上げる“ブランド力”が鍵に

楽天市場の広告構造も大きく変化している。RPP(Rakuten Promotion Platform)は表示枠が拡大し、2025年にはAIを活用した自動最適化機能が全店舗に提供された。しかし、清水氏はここに注意を促す。

「この最適化は『楽天市場にとってのRPPの最適化』であって、『ショップにとっての最適化』とは限りません。入札単価がアップする中でROASを上げていくためには、RPPに依存せず、クリック率(CTR)と転換率(CVR)を上げるブランディングが最優先です」

清水氏が特に重要だと位置づけるのが、「商品画像1枚目」だ。
検索結果・閲覧履歴・広告枠のすべてに表示される1枚目は、実質的に広告原稿である。商品画像内にショップのブランドロゴも明示し、ユーザーにベネフィット(得られる結果)を最優先に伝え、使用中・使用後の“体験”を画像で提示する。楽天市場は他店との比較が起きやすい出店型マーケットのため、商品のスペックよりも「体験後の魅力」を伝える画像が強い。例えば「ラグ」場合に、ランキング上位商品のサムネイル画像には必ずラグの上に人が乗っている。このように、ランキング上位商品の画像を研究し、カテゴリの「標準」を把握することも欠かせない。

このようにしてブランディングを強化すると、LINE経由の売上やリピーターも増えていく。まずはLINEで友だち登録してもらい見込み客を獲得し、クーポンで初回購入につなげる。その後はメッセージ配信など複数の接点を通じて再購入を促し、最終的にはファン化へ。この一連の流れが、顧客を段階的に引き上げるピラミッド構造の実現につながるわけだ。

外部SNSからの流入を育てる──ギフティングとリール広告の活用

楽天内の検索流入だけでは限界がある。そこで重要になるのが、Instagram、TikTok、Facebookなど外部SNSからの流入だ。清水氏はLINEを通じて、顧客に自社商品を外部SNSで紹介してもらえるように促すのが大事だと説く。

「ショップさん自身がXやインスタでフォロワーを増やしていくことができれば、それはもちろん理想です。ただ、フォロワー数が増えたからといって、そのまま売上につながるわけではありません。であれば、すでにネット上で大きな影響力を持っている方々に協力していただくことが、2026年は特に重要になってくると考えています」

インフルエンサーへのギフティングやリール広告を積極的に行い、外部チャネルでの露出を継続的に積み上げることで、楽天への指名流入を増やすことができる。この戦略に取り組んだ、ある楽天ショップのスマホからの流入経路は、Instagram、Threads、Facebookからが全体の半分を占めるという。

まとめ──顧客ピラミッドを築きリピーター・ファンを生み出す

2026年の楽天市場で成果を出すには、広告に頼るのではなく、ユーザーに選ばれる理由を積み上げることが欠かせない。LINEを起点とした見込み客の獲得、商品画像1枚目の設計、外部SNSからの流入づくり──いずれも日々の運用に落とし込める実務だ。環境が大きく変わりつつある今こそ、ショップとしてのブランド力を磨き、継続的に売上をつくる体制へと転換していくことが求められている。

清水 将平
日本ECサービス株式会社 代表取締役社長
元楽天ECコンサルタント。2010年の起業後、大手企業をメインにコンサルタントとして活動しながら、2014年に日本中のネットショップを支援したいという思いで月額1万円で入会できる「ECマスターズクラブ」をスタート。現在は、ECXグループとして5,000社以上を支援。