「越境ECは国際貿易」──物流のプロが説く、輸送・通関“6つの留意点”

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ECのミカタ編集部

「越境ECは、通信販売であると同時に『国際貿易』であることを、改めて認識してほしい」──。一般社団法人 航空貨物運送協会(JAFA)の国際宅配便業務委員会で委員長を務める利渉勝幸氏と、同委員の神田直浩氏は、越境ECに潜むリスクをこう指摘する。

本稿では、国際航空物流のプロフェッショナルである両氏の「ECのミカタ カンファレンス(2025年12月開催)」でのセッションをもとに、越境ECに関わる事業者が知っておくべき6つのポイントと、実際に起きたトラブル事例を紹介する。

円滑な航空貨物輸送実現を目指すJAFA

一般社団法人 航空貨物運送協会 国際部会 国際宅配便業務委員会 委員長 利渉勝幸氏(NXクーリエサービス株式会社) 航空貨物運送協会(JAFA : Japan Aircargo Forwarders Association)は、1991年に設立され、航空フォワーダーや航空貨物代理店の健全な発展のための調査・研究・指導などを行っています。会員数は正会員131社、準会員22社、および賛助会員15社(2025年11月1日現在)。また、FIATA(国際貨物輸送業者協会連合会)や東南アジア18カ国によるFAPAA(航空貨物代理店協会連盟)などに参加して国際機関との協力体制を築いています。

JAFAには各種の委員会がありますが、その一つに「国際宅配便業務委員会」があり、私の所属するNXクーリエサービスやヤマト運輸、日本通運など8社で構成しながら、課題に取り組んでいます。本日はECの輸出・輸入に関係する6つの項目、つまり【1】輸出通関、【2】輸入通関、【3】安全な航空輸送のために、【4】関税、【5】国際輸送に適した梱包、【6】運送保険について神田氏より説明させていただきます。

「越境ECは国際貿易である」という認識

同委員会 委員 神田直浩氏(ヤマト運輸株式会社)※以下は神田氏による解説
では各項目についてご説明します。まず「輸出通関」ですが、海外に向けてものを発送するには輸出通関が必要です。特に、日本からの輸出が制限され、輸出するためにはなんらかの許可を事前に得ておく必要のある貨物があることに注意を払う必要があります。

たとえばゲーム機の輸出では、使われている部品が軍需産業に転用され得るものがあります。こうした商品の輸出では、事前に官公庁の許可を得たりするなどの手続きが必要です。

越境ECで販売される商品は、れっきとした輸出貨物ですから、その数量や金額を正しく報告することは、輸出者の重要な務めであると言えます。たとえ輸出額が少額であったり、数量が少なくても輸出申告で内容を省略することはできません。

越境ECは通信販売であると同時に国際貿易であることをいま一度、ご認識いただけますようお願いします。

画像提供:一般社団法人 航空貨物運送協会(ECのミカタカンファレンス内「越境ECの輸送事業者からみた輸送・通関の実態」講演資料より。以下、本記事内の全図版も同)

逆に商品を輸入する輸入通関では特に、少額の商品を海外サイトで購入して無条件免税の範囲内に収まっていたとしても、無条件免税が適用されない商品であれば関税などを納付しなければなりません。

輸出許可を受けたものを再び輸入しようとするときも、すべての貨物が自動的に免税になるわけではありません。輸入では関税や消費税などの納税を伴う場合が多くあるので、正しい輸入者によって正しい輸入価格を設定していただき、法律などに則って正しい輸入申告をしていただくようお願いします。

意外!?な「危険品」と相手国の関税を学ぶ

次に安全な輸送のために、主に危険品についてお話しします。
越境ECで販売される貨物には、輸送上の危険品に分類されるものが少なくありません。食品や農畜産物など各国の規制や検疫の対象となっているものであったり、揮発性成分の入っている化粧品、リチウムイオン電池を含むゲーム機や家電製品、他にもモデルガンや包丁類、電子たばこ、ドローンなどいくつもの危険品があります(詳しくは各輸送会社に問い合わせを)。

日本国内の陸上輸送の感覚で問題はないと思っても、海上輸送や航空輸送では危険品に分類されるものがあり、空港や運送事業者に受託を拒否されることがあります。特に航空貨物の危険品は広範囲に設定されています。たとえばタブレット端末やゲーム機などで、その理由はリチウムイオン電池が使われているからです。つまりリチウムイオン電池が内蔵されている商品はすべて危険品になるのです。

危険品かどうかの判断は、商品の製品安全データシート(SDS)に記載されていますので発送前にご確認ください。また一部の航空会社や一部の仕向地では、英文の安全データシートの提出が求められますのでご注意ください。すべてではありませんが、ルールに定められた梱包を施したり、必要書類を提出すれば出荷できる危険品もあります。

次に越境ECに関する関税です。越境ECの貨物が世界各地で増えると、販売先の国の徴税に関する法律や規則は越境ECの販売にも大きな影響を与えます。徴税政策の変更による物量の増減から航空機もまた増減便されたという事例もあるほどです。
日本でも2025年度の税制改正大綱で、無条件免税に関する見直しが提言され、今後、なんらかの動きが起きる可能性があります。関税率は、しばしば変更されます。越境EC事業者の皆さまもぜひ注目しておいていただきたいと思います。

梱包の頑丈さと運送保険を確保する

5つ目は「国際輸送に適した梱包」についてです。これは国際宅配便業務委員会でもよく議論になるテーマで、私たち運送事業者は、お客さまからお預かりした大切な貨物をできるだけ傷つけず、ご依頼の目的地までお届けすることに注力しています。しかしながら天候や運送業者が関われない領域で、お預かりした状態で貨物をお届けできない場合があります。

そこで梱包材料の決定にご配慮いただきたいのです。たとえばダンボール箱の角の部分をテープで補強するとか、ダンボールを1層から2層の厚い素材にするとか、緩衝材を入れるといった取り組みです。さまざまなアイデアがありますので、運送業者にご相談していただければと思います。

また国際宅配便業務委員会では、「運送保険」への加入をお願いする啓発活動を行っています。先ほど梱包をより丈夫にとお願いしましたが、EC事業者の施された梱包の不備が原因で貨物が壊れた場合は、運送事業者の過失とはならず、かつ運送事業者が加入している保険からの損害補てんはなされません。

日本発の国際宅配便の保険納付率は、上がってきているとはいえ3%にすぎません。運送事業者の運送品質は上がってきていますが、配送先の国や地域の運送インフラまでコントロールはできず、ある程度のリスクに晒されていることをご理解いただければと思います。

越境EC物流の現場では、こんなトラブルが起きている

最後に越境ECに関する物流トラブルの実例をご紹介しましょう。

まず海外倉庫を利用して越境ECを行っている事業者で、現地から商品を取り戻せなかったトラブルです。海外で販売しきれなかった商品を日本に戻そうとしたのですが、輸入通関で必要な資格を取得できていなかったり、許可を受けていなかったために輸入許可が得られない事例があります。貨物が日本に到着してからでは高額な保管費や返送費用を負担せざるを得なくなる場合があります。

また、梱包なども行う海外のフルフィルメント倉庫から日本に発送された貨物で、申告内容と実際の貨物が符合していないケースがしばしばあります。海外でのフルフィルメント倉庫での作業の正確性は、日本での輸入通関が正しく行われるための重要な要素です。同じく、海外から到着した貨物を日本で販売する場合、国内のフルフィルメント倉庫に一時的に保管することもあると思います。この貨物を輸入申告するときの申告金額と、ECで販売されたときの金額に差がある場合は、その「差の発生する取引の内容」を明らかにすることを求められるケースがあることにも注意が必要です。

さらに日本の無条件免税制度では、たとえば織物と編み物では違いがあります。編み物はそのほとんどが無条件免税の適用除外なので、織物か編み物かは重要な要素です。革製品もまた無条件免税の適用外になっています。法律に則った正しい申告のために正確な情報提供をお願いしたいと思います。

利渉 勝幸
一般社団法人 航空貨物運送協会 国際部会 国際宅配便業務委員会 委員長(NXクーリエサービス株式会社 営業部 部長)
JAFA(航空貨物運送協会)の会員企業として、国際宅配便業務委員会に所属。国際宅配便の営業一筋で30年経験。JAFAの委員会にも2019年から所属し、国際宅配便業界を盛り上げるために課題や問題点などを委員会で取り組んでいる。

神田 直浩
一般社団法人 航空貨物運送協会 国際部会 国際宅配便業務委員会 委員(ヤマト運輸株式会社)
ヤマト運輸株式会社 グローバル事業戦略部所属。30年余りにわたりグローバル物流企業にて勤務、2025年7月から現職にて越境EC等国際物流を担当。