PAY.JPの潜在力はBASEを礎に〜鶴岡氏語る

石郷“145”マナブ

BASEの枠にとどまらない人が羽ばたくPAY.JP

 勢いに乗るEC企業を記者の独断で追う「近況まとめ」。BASE株式会社(以下、BASE社)の待望の第二弾だ。前回(http://bit.ly/1NJ1DvA )同様、代表の鶴岡裕太さんに話を聞いている。ふと、今回の鶴岡さんの話を聞いて、僕は思った。「カートサービス『BASE』の展開が、実は、長い目で見ればBASE社にとっての序章だったのかもしれない」と。その意味については、下記の記事で解き明かしていこうと思う。

 前回の記事でも触れたとおり、BASE社は、BASEを使って出店した店舗数が、17万にも及ぶようになった。その魅力は作り手が自ら手がけた商品を通じて、ブランディングできるというところにあって、僕は「もはや一人一人が自分というブランドを作る時代に来ている」と思った。でも17万にも及ぶその個性は今はBASEの中で光り輝いているが、多様化するこの時代において、もしかしたらBASEの枠にとどまらない人が出てきてもおかしくない。

 そう、今回、BASEが新たに提案するサービスは、その考えが原点となっている。すなわちそれは「決済サービス」。サービス名を『PAY.JP(https://pay.jp/ )』という。ECではなく、例えばWEBサービスとしてビジネスをしたい等、カートを提供するだけでは自らの夢は果たせない、そんな人たちのお手伝いがこの『PAY.JP』ではできるのだ。

PAY.JPはどのように使うのか?

 「今までBASEの場合では、アカウントさえ作れば簡単にカートが作れました。つまり、物の売り買いをする場所を作ることができたのです。一方、『PAY.JP』の場合はアカウントを作ってもカートは作れません。その代わり、購入者からお金をクレジットカード決済で、もらえるようになる。つまり、そこに経済的な拠点ができるというわけです。例えて言うなら、ECのミカタさんではすべて無料で記事を見せているが、『PAY.JP』を使えば、特定の記事を有料にしたりできるのです。物の売り買い以外の経済活動を生み出せる、というのが『PAY.JP』なのです。しかも、APIベースで、決済のコードを入れると、組み込めるので、それは、開発者の方ならだれでも簡単にできるようになる」と鶴岡さん。事業者がマネタイズする手段が増えるのである。

 ただ、『PAY.JP』の狙いはそれだけではない。「今回は、主に事業者向けに用意された機能であるが、将来的には購入者にとっても簡単に物が買えるようにしていきたい」と話す。あらゆるサービスにおいて、決済の時に『PAY.JP』という入り口があれば、ID決済等一つのアカウントで容易に物が買えるようにしていくというわけだ。

PAY.JPの他にはない強みとは?

 勝算はあるのだろうか。だから、聞いてみた。BASE社が考える『PAY.JP』の強みとは何だろう、と。すると、鶴岡さんはこんなことを言い出した。「では、反対に、スタートアップで決済を始める時の一番の弱みってなんだと思います?」と。そしてこう続けた。「例えば『実績がないので経済的条件の強みを出せない』とか『加盟店の数がついてこない』といったところが挙げられますよね。『PAY.JP』で言えば、逆にそこが強みになっています。僕らはBASE側で一定の実績をつくっているので、今回も一定の決済条件の強みを提供できるんです。初年度は手数料が無料なのですが、それ以降は3%です。これは業界的に見ると結構安いです。」と。

 また「もう一つ、加盟店がつくれないという点についても、もとよりBASEで店舗との関係ができていて、かつBASEでは一ヶ月に一万店という加盟店が新しく増えています。BASEがあるからこそ、BASEの枠を越えていき、WEBサービスでビジネスをしたいという人たちをいち早くキャッチして、そういった方々を取り込んでいくことができます。これは決済だけをやっているところには絶対できない。圧倒的な強みだと思っています」と聞いて、納得した。日頃、BASEのカートを使い新しいビジネスに前向きな人を掴んでいることは、結果、『PAY.JP』の潜在的ユーザーを掴んでいることになるのである。

 僕は、思ったのである。逆説的ではあるが、「決済」をするために「BASE」があったのではないかと。BASEがあるからこそ、「決済」を必要とする人をキャッチでき、また、BASEがあるからこそ、経済的条件においても、ある一定の強気の条件が出せる。今まで培ってきたBASEというビジネスがここまで成長し、進化してきたからこそ成り立つ『PAY.JP』なのだ。

 これを契機に、WEBを使った新たなビジネスがまた 続々飛び出すのかもしれない。『PAY.JP』の未来を想い、BASE社の取り組みが、また新たなスターを生み出すような気がして、僕の胸が高鳴った。鶴岡さんの次なる一歩に期待したい。

企画・構成 石郷“145” マナブ


記者プロフィール

石郷“145”マナブ

キャラクター業界の業界紙の元記者でSweetモデル矢野未希子さんのジュエリーを企画したり、少々変わった経歴。企画や営業を経験した後、ECのミカタで自分の原点である記者へ。トマトが苦手。カラオケオーディションで一次通過した事は数少ない小さな自慢。

石郷“145”マナブ の執筆記事