ネットと店舗の連動で日本酒界を盛り上げる「KURAND」【店長のホンネ】
全国各地の美味しい日本酒との出会いを作る、リカー・イノベーション株式会社の「KURAND(くらんど)」。日本酒や酒類に特化したオウンドメディアの運営、インターネット通販での定期購入サービスなど、日本酒業界にとっての新しい取り組みで、地方で頑張る蔵元さんの新たな販路を作り、美味しい日本酒の新たなファンを生み出しています。KURANDではさらに、「日本酒試し飲み仕放題」の実店舗「KURAND SAKE MARKET」や、体験プログラムなども展開。そんな、ネット通販から始まった取り組みの様子を、4月に新たにオープンした「KURAND SAKE MARKET」新宿店にて、リカー・イノベーション株式会社 広報担当の辻本翔さんに伺いました。
インターネット通販とメディアの活用
「KURAND」が始まったきっかけは「このままでは酒類業界を盛り上がらない」という危惧にあるという。最近では若い世代や海外でも日本酒が積極的に飲まれるようになってきたが、少し前まで日本酒は、年齢が高めの人が飲むもの、あまり美味しくないというイメージもあった。
「リカー・イノベーションが立ち上がって、最初は普通のお酒全般のインターネット通販を行っていたのですが、それを日本酒に特化してやってみようということで『KURAND(現:KURAND CLUB)』が始まりました。日本酒の頒布会という形自体は、昔から蔵元さん主体でありましたが、それを購入しやすい見せ方に変えてインターネット上で販売しました。」。
業界を盛り上げるために、従来からあるリソースを新しい形で活用する、これは他の業界でも参考にできるのではないだろうか。そして、KURAND CLUBが大きく広がる鍵となったのが、リカー・イノベーションが運営するオウンドメディア、日本酒に特化した「KURANDマガジン」と酒類全般に特化した「NOMOOO(ノモー)」だ。
「実は、インターネット上では、広告の規制が強くて、それならば自社でメディアを立ち上げて、その中に広告を出して知ってもらおうと、メディアを始めました。自社メディアなので融通を利かせることができ、何万人という方に情報を届けることができるのは、非常に効果的でしたね。時代的に、まとめ系、バイラル系の記事が流行した頃でしたが、その中でもお酒に特化したメディアは他になかったということも、強かったです。」
実店舗とネットの連動で出会いの場を広げる
KURAND CLUBが広がる中で、ネット上だけでなく、リアルでイベントなども開催されるようになったが、そこからさらに進んだのが、現在都内に4店舗ある実店舗「KURAND SAKE MARKET」だ。
「付き合いのある蔵元さんが増えてきて、もっと定期的に日本酒を飲んでもらう機会を作って、美味しい日本酒というものを知っていただきたいと思いました。日本酒の繊細な味わいというのは、いくら言葉で表しても、実際に飲まないと分からないんです。たまたま東京・町田にあるセルフスタイル形態の日本酒専門店「日本酒ラボ」の方と弊社の代表が知り合う機会があり、そこでいろいろと相談もした結果、KURAND SAKE MARKETという、100酒類の日本酒が、時間無制限で飲み比べできるというスタイルになりました」。
来店するのは、定期購入を利用している層より、若い世代が訪れることが多いという。いきなり定期購入はハードルが高いが、お店であればフラッと寄れる。実店舗とネットがつながることで、より広い受け皿になり得るのだ。また、KURANDで扱っているお酒は、基本的に地方の小規模な蔵元さんのものだ。ここにも、日本酒業界を盛り上げたいという想いがある。
「どちらが美味しいではなく、味わいはお客さまが決めるものだと私たちは考えてます。あまり知られていなくても、美味しいお酒を作っているところはたくさんあります。ただ、東京に販路を持っていない、小規模生産でキャパシティがないなどの理由で、東京で飲んでもらう機会がなかなか作れない蔵元さんが多いんですね。そういった蔵元さんと、酒造組合主催の試飲会などで出会ったり、そこから横のつながりでの紹介も受けたりしながら、取り扱うお酒を選定しています」。
信頼を得るために、商品への情熱と徹底した管理
日本酒の定期宅配サービス、そして実店舗の運営という動きに対して、蔵元さんの反応としては、良いものと悪いものと、両方があるそうだ。新しい取り組みは、反発を受けることがある一方で、現状を変えたいと思っている賛同者も現れる。
「KURAND SAKE MARKETについて、我々としてはなるべく『飲み比べ仕放題』という表現を使っているのですが、それを『飲み放題』と取られると、日本酒を大事にしていないのではないかと思われがちです。我々の意図としては、居酒屋で飲めば一杯1,000円前後してしまう日本酒を、時間無制限で100種類、ゆっくりと飲み比べをしてほしいという提案なんです。今は蔵元さんにも若い世代が増えてきていて、新しい取り組みも増えているので、賛同、提案してくださる蔵元さんも多いです。」
もちろん、新しさだけでなく、品質管理なども徹底し、酒蔵さんの信頼を得るための努力は欠かさない。また、あくまでも日本酒を美味しく、楽しく飲んでもらうことが目的であり、そのための工夫も行っている。
「品質管理は徹底して、蔵元さんからは冷蔵車で配送してもらい、着いたらすぐに地下の巨大冷蔵庫で保管します。日本酒は温度と光、振動の影響を受けて劣化しやすいので、温度管理は徹底、冷蔵庫の照明にはLEDを使用し、静かに保管できるようにしています。また、また、KURAND SAKE MARKETでは、スタッフからのアイデアで、1時間に1回の「お水で乾杯タイム」を設けており、楽しく日本酒を味わえるようにしています」。
定期購入という形は、事前に必要となる量が分かるため、蔵元さんにとってもメリットがある。そうやって信頼を得ることで、良いお酒、貴重なお酒を回してもらえることになり、顧客側の満足度も上がるという、良い循環が生まれている。
「蔵元さんって、毎年お酒作りをするのに、借金をしたりするんですね。来年作るお酒のために、今年お米を買わないといけないわけで、そこでお金が出て行くんです。そこからお酒を作って売ることで、お金を回収していく形になるのですが、定期的に売れる量が決まっていると、酒蔵さんにも安心していただけるんですね」。
リピーターを作るために、期待を上回る楽しさを
定期購入サービス、実店舗と、順調に進んでいるように見えるKURANDだが、新しい取り組みが定着してきたときに、そのまま継続してもらうためには、また別の努力が必要になる。
「今が一番大変かもしれないですね。定期購入サービスが始まり、KURAND SAKE MARKETの1号店がオープンしたときは、目新しさがあったのですが、サービスが広がり、店舗も4号店となると、ニュース性が弱くなってくるので、お客様を飽きさせない努力が必要です」。
その一つの取り組みとして、今、KURAND CLUBでは定期購入の会員向けに、酒造り体験プログラムとして、原料のお米の田植えから収穫、そして酒造りまでを自分で行って、そのお酒を自分で飲めるというプログラムを導入しているそうだ。
「お客様からは、蔵元さんと接したいという要望も多いんですね。美味しい日本酒を多くの方に知ってもらいながら、そうやって日本酒を好きになった方に、もっと楽しんでいただけるよう考えています」。
KURANDの取り組みは、インターネットとメディア、リアル店舗、また地方と都市部という、複数の場を連動させて、最終的な目的である、商品の認知拡大、購入、そして業界自体の盛り上がりにつなげるという、好例だ。もちろん、単にツールをうまく使うということでなく、商品の確かさ、そこに十分な背景があるから、うまく回っているのだと思う。だからこそ、他の業界、店舗にとっても、この取り組みは参考になる部分が多いのではないだろうか。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
最新情報ピックアップ!EC業界の注目トピックをメルマガでお届け。
ただ今、新規メルマガ登録でプレゼントキャンペーンを実施中です。
詳細&ご登録はこちらから→https://goo.gl/4ZRrT8
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆