越境ECを始めるときに知っておくべき知識まとめ

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スマホやPCが普及し始めた頃は勢いのあったEC市場。だが、どうしたものか国内のEC市場は、ひと昔前と比べると成長率が落ちてきている。10年前は対前年比15~20%くらいの高い成長率を誇っていたが、既に前年比率が10%を切っているのも珍しくはない。これは、EC業界における価格競争の激化、実店舗に力を入れる企業が増えているなど、さまざまな要因が重なって起きていると推測される。

そのため、日本のEC市場ではなく、成長率の高い海外の市場に展開する企業が増えてきているのだ。海外に向けて販売することを越境ECと呼ぶのだが、売るハードルに関していえば言語の壁や価値観の違いがある越境ECのほうが高い。

ところが、越境ECは販路拡大には非常に有効な戦略だといえる。海外のEC市場の成長率は右肩上がりであり、日本の市場規模を遥かにしのいでいるのだ。実際に、2018年のEC市場規模(BtoC 電子商取引)は2.84兆米ドル、日本円でおよそ313兆円をマークしている。対前年比成長率に関しても23.3%と伸び率が高く、2021年までには前年より2桁成長するとも予測されているほどだ。本特集ではそんな越境ECに参入できるよう解説をしていく。

各国の越境EC市場の動き

日本国内のEC市場は鈍化しているが、各国のEC市場は目覚ましい発展を遂げている。特に、中国はEC市場の規模が世界で一番大きい。2018年の中国国内におけるEC市場規模は15,267億米ドルで、越境ECの市場規模は390億米ドルとなっている。

中国ではアリババグループの動きが目覚ましく、同グループが運営するTmallとJD.comの2つが中国国内のEC市場のおよそ8割を占めているのだ。中国のEC市場といえば、国内に法人を持たない企業の出店はできない。つまり国内の企業が力を持っているため、アメリカなどで市場シェア率の高いAmazonも中国ではシェア率が0.8%とかなり低いといえる(Amazon中国)。

そこで、中国国内に法人を持たずに日本から商品を販売するには、中国で広く普及しているEC専門のサイトを利用するほかないのだ。中国に商品を販売することが決まったら、配送は国際スピード郵便を利用するか、保税倉庫を利用するかのどちらかになる。中国国内の保税倉庫に在庫を保管し、そこから配送をすれば通関手続きにかなりの時間や手間を取られることもなくなるだろう。送料が安く抑えられて配送日数も短縮できるため、保税倉庫を利用する企業は増えている。

とはいえ中国は市場自体は大きいものの独自の慣習や法律が多く、初めて越境ECにチャレンジする人にはオススメしにくいのが正直なところ。越境ECに慣れた頃に挑戦するのをオススメする。

まだアメリカの方が共通のサービスが普及しているなど参入しやすい。アメリカ国内のEC市場規模は5,232億米ドルで、越境EC市場規模は400億米ドルにも上る。

越境ECの市場規模においては、世界企業の中で最もEC売上高の大きいAmazonが好調で、中国の越境EC市場規模よりも大きい。アメリカで越境ECをするなら、Amazonを利用しない手はないだろう。置き配による荷物の盗難リスクを考慮しても、盗難保証のあるAmazonを利用するメリットは大きい。

さらに、Amazonの保管庫を利用して配送すれば手間を省けるので、国際スピード郵便で配送手配するよりも楽である。その他、EC市場規模3位のイギリスを含むEU全体では950億ユーロ(イギリスEU脱退前)。ASEAN6カ国では720億ドルで、2015年から2倍の伸び率を記録している。どちらも越境ECに参入する候補に挙がる。尚、EU加盟国やアジア各国で商品を販売するときは、取り扱う品目によりVATという間接税が課せられるため注意してほしい。

越境ECを始める際に気をつけたいこと

ここからは、越境ECを始めるにあたって妨げになるものは何かを紹介していく。国内ECだけでなく、越境ECの検討をしているなら下記で紹介するポイントはできるだけ気をつけたいところだ。

ハードル1:言語

#言語の違いによる壁と翻訳代行サービスについて

越境ECの高いハードルになっているのが、言語の違いである。自社のECサイトを海外仕様にするにせよ、海外のECサイトを利用するにせよ、どちらにしても正確な翻訳が必要だ。海外の文化や風習の違いにより、若干のニュアンスの違いがあることも考慮しなくてはいけない。

そういったさまざまな課題をクリアするためには、翻訳代行サービスに依頼するのが良いだろう。さらに、お客さんからの問い合わせに対応できるカスタマーサポートを置くなら、多言語に対応してくれるカスタマーサポートを使うのも手だ。グローバルに対応できる企業はたくさんあり、中にはチャットボットやSMS対応してくれるところもあるため、あとは予算の都合で選ぼう。

特に、中国へ輸出するなら翻訳代行サービスを利用するのは必要不可欠である。なぜなら、中国では粗悪品や偽物などの流通を防ぐ目的で、2019年1月に電子商取引法(EC法)が施行されたためだ。

同取引法の施行によって営業許可証の取得や納税義務が必須となっただけではなく、中国語での商品説明を載せなくてはいけなくなった。食品や化粧品のラベル表示やラベル検査届出関連資料など、営業許可証取得のためには翻訳依頼をする必要がある。化粧品の輸出においては輸⼊化粧品衛⽣許可証明書、もしくは初回輸入非特殊用途化粧品届出の取得も必要だ。ただし、中国国内から配送できる保税区を利用しての越境ECでは、通関申告書や輸⼊許可証など通関書類の提出は不要なのでその分手続きも早い(2019年12月時点)。

ハードル2:関税・許可証

#輸出に関する許可証取得の手間とアメリカのFDA

越境ECを始めるには、各国が定める輸出許可証を取得する手間もある。たとえば、越境ECの候補として挙がりやすいアメリカだが、食料品や化粧品、医薬品などを販売するならFDA登録しなくてはいけない。

アメリカに上記の物を輸出するのであれば、必ずFDA登録が必要であり、許可を取得せずに販売するのは違法行為に当たる。通関に遅れが生じるだけでなく、拒否されて返送あるいは留置されるケースもあり得るのだ。国際スピード郵便を利用する際はチェック体制が厳しくないためか、中にはFDA登録していない業者も少なからずいる。だが、FDA登録をしていないと発覚すればペナルティーが科せられるので、国による許可の違いは厳重にチェックすべきだ。

上記のFDA認証のような許可証は他の国にも存在し、化粧品の輸出に関していえばEU加盟国ならEU化粧品規則。ASEAN加盟国なら、ASEAN化粧品指令に則った手続きが必要である。

また、中国に輸出予定ならば、化粧品安全技術規範が定めた通りの成分基準を満たしているかも大切だ。各国が定めた配合量や成分の条件をクリアしているか、各種資料を用意しさまざまな工程を経て輸出許可証を入手しなくてはいけず、時間も労力もかかる。もし、許可証取得が越境ECを始める妨げになっているのであれば、手続きを代行するサービスを活用するのも良いだろう。許可証を取得せずに販売している業者も存在するが、該当商品の回収、あるいは販売禁止や入国禁止になる可能性もあるため許可証は必ず取るべきである。

ハードル3:決済

#国による決済方法の違い
越境EC市場規模が大きい中国とアメリカで商品販売を検討しているのであれば、双方の決済方法の違いにも着目しておこう。

中国で多いのがモバイル決済やスマホ決済であり、特に利用が多いのはアリペイなどの第三者決済だ。キャッシュレス決済であるクイックペイやインターネットバンキングなども中国では好んで利用されている。現金が使われないイメージの強い中国だが、意外にも代金引換も人気だ。

一方で、アメリカでは安全な決済方法が好まれる傾向があり、決済手段として人気なのがペイパルである。ペイパルといえば、クレジットカードや口座情報を店側に一切伝えずに送金できる決済方法だ。即時払いなので代金が回収できないといったリスクを負うこともない。アメリカではペイパルの他、クレジットカードやデビットカードの決済方法も主流なので、これらも導入を検討すべきだろう。

余談だが、台湾ではEC決済にコンビニ支払いがよく使われている。このように、好まれる決済方法は文化や風習などの違いにより国ごとの特色がある。よって、越境ECに参入するのならば、国によって好まれる決済方法に違いがあること、また安全性の高い決済方法を導入する必要があることを考えてほしい。

そのうえで、為替リスクのない日本円建ての決済方法の導入を検討してみよう。円建ての決済方法は、原則として購入時の支払い及び利金・償還金の受取はともに円で行われる。円建て債券の利率は大変低くなっており、決まった額での利金を受け取ることができるため、日本円建ての決済方法導入によるメリットは大きい。

ハードル4:税金

#付加価値税と関税について

当たり前のことだが、他国で商品を販売するときはその国に税金を納める義務が生じる。VATなどの付加価値税などについても、当然理解しておかなくてはいけないだろう。

そもそもVATと一口にいっても、国によって課税対象となる品目や税率が異なる。販売品目によっては、軽減税率の対象となる場合もあるのだ。Amazonを使うにしろ他ECサイトを利用するにしろ、越境ECを始めるならVAT番号の取得申請が必要な国かは把握したいところ。

特に、海外輸出においては国によって全く法律や関税が異なるので、地元の会計士か日本国内で輸出に詳しい税理士に相談するほうが良い。他国での納税義務に加えて、日本での申請手続きも必要になるなど、手続きの煩雑さが越境ECを始める際のハードルになっているのは言うまでもないだろう。

さらに、越境ECでは付加価値税だけでなく、国によっては関税もかかるので気をつけなくてはいけない。品目や物量、輸入国が定めるHSコードにより関税率が異なる。HSコードは輸出国と輸入国とで決められるHSコードに相違がある場合は、輸入国の判断が採用される。

そのため、関税率が正しく設定されているかどうかもしっかりと目を配らなくてはいけない。発送国払いの場合、通関税には関税等諸費用請求手数料・関税消費税等特別手数料が上乗せされて請求される。また、輸出国や輸出品目、数量次第では複数HSコード申告手数料・通最遠隔地手数料・食品医薬品局別途申告手数料などの通関手数料も請求されるだろう。そのため、輸出国が何に関税を設け、どのくらいの手数料に設定しているかは事前に調べてほしい。

ハードル5:物流

#国内から配送するか輸出国内で配送するかを見極める

越境ECで儲けるためには、物流に関してもきちんと整理しておく必要がある。配送方法次第では損になるケースもあるからだ。実は、日本国内でECを行うのに比べて高い配送料金が、越境ECではハードルになっている節がある。越境ECに参入するなら、少量やり取りで日本国内から配送するのか、大量に商品を販売するから販売国で在庫保管をするのかはよく考えよう。もし、販売国で在庫保管をするならば保管料がかかるが、配送料は国内から配送するよりも格段に安くなる。

一方で、日本国内から販売するときは、自宅保管が可能なら保管料はかからない。配送料は販売国から送るよりも割高だが、少量販売ならば国際スピード郵便のほうが安く済むケースもある。

ただし、販売国で在庫保管をしたほうが、購入者の元へと圧倒的に早く配送することができる。このように輸送コストや所要日数を加味すると一概にどちらの配送が良いとは言えないので、企業の形態に合わせて配送方法を選ぶべきだろう。いずれにしても、配送方法を選ぶときは在庫管理システムを導入するなど、返品フローを明確にし、顧客被害の対応をしっかりと確立させよう。

色々と商品の配送に関し準備をしても、実際にECサイトで売れたときに、税関や航空便の審査が通らない可能性があるので注意したいところだ。国によって輸出できない商品がある。たとえば、ワシントン条約対象商品に入っている動植物だと、輸出できない動植物として返送される。

あるいは、IATA対象商品に入っていれば、航空危険物と認定されて輸出できないことも考え得るのだ。さらにいえば、輸出国によって一部農作物が規制対象となっている場合もあるため、確実に輸出できる商品かどうかは事前に確認が必要である。配送に関しても、日本の配送業者より雑に扱う国が多いため、梱包があまいと配送業者に損害賠償請求できない場合があるので気をつけてほしい。

ハードル6:マーケティング

#越境ECで人気のでる商品は国によって異なる

日本からの輸出品で人気のある日本製品は、化粧品や日用品、食品、服やカバンなどさまざまである。

2017年12月に公表されたJETROの「中国の消費者の日本製品等意識調査」によると、越境ECで日本から商品を購入する目的としては下記の理由が多いとされている。中国国内で店頭に販売されてない製品だからという理由や、日本を旅行して気に入った製品だからという理由によるものだ。他にも、偽物ではないからといった意見も越境ECで日本から商品を購入する理由として挙がっている。そんな中国で人気の日本製品は、化粧品と日用品、食品である。

一方で、2017年6月に公表されたUPS ”Pulse of the Online Shopper“によると、アメリカで越境EC商品を購入する理由は中国とは少し異なるようだ。アメリカで越境ECが使われているのは、比較的安い価格で購入できるといった理由や国内にはないユニークな商品が欲しいといった理由が多い。

また、国内で購入できない商品だからといった意見もみられる。越境ECで人気の商品も中国とは異なり、衣類や靴、アクセサリー、玩具や趣味用品、教育系の図書などが上位を占めているのだ。上述していることから分かるように、国によって人気商材は異なる。越境ECに参入するなら、自社製品がどこの国に輸出するのが適しているのか見極めが必要だ。

普段生活をしていない海外だからこそ、自社商品のターゲットとなる顧客の見極めは困難になってしまう。しかし、このハードルを乗り越えないと、日本でマーケティングを一切せずにアマゾンでモノを売るのと道義になってしまう。日本だろうとも海外だろうとも、情報収集とマーケティングは重要な戦略なのだ。

越境ECを始めるならECモールを活用しよう

上記で挙げたように、国の慣習や文化によっても売れ筋となる商材は異なる。

そのため、それらが考慮されている海外ECモールを活用するのがおすすめだ。越境ECに参入するときのハードルとなる課題の多くが、越境ECモールを利用することで緩和されるだろう。また、自社製品がどの国と相性が良いのかを確認するのにもうってつけの場である。基本的に越境ECモールは、複数の国に販売することを前提として運営されていることが多い。そのため、日本の社員が現地の最新情報を事業者に落とし、支援してくれるケースもあるから利用しやすいのだ。

一方で、大手会社ならば潤沢な資金力をいかし、自社サイトを越境EC対応させるという方法もある。さまざまなツールを活用すれば、海外用のサイトを作成することができるだろう。

ただし、本格的に参入する前に試しに越境ECを始めたいなら、最初は越境ECモールを活用するほうが楽である。越境ECに対応しているモールは、eBay やAmazon、アリババやLazada、Shopee、Rakutenなどの様々なサービスがある。複数の国に商品を販売したいなら、eBayもしくはAmazonがおすすめだ。 eBay(イーベイ)は、世界約30カ国で利用されているオークション販売と固定額販売の2つができるモールだ。法人向けに無料スタートサポートがあるので、初めてでも比較的取引が始めやすい。

一方で、Amazonは世界180カ国へ販売でき、FBAを利用すればAmazonの保管庫を利用して販売ができる。多くの商品を取り扱う予定なら、配送日数を短縮できるAmazonのサービスを利用するメリットは大きいだろう。そして、もし中国や東南アジアに展開する予定なら、アリババやLazada、Shopeeが注目の越境ECモールである。

まずはアリババだが、中国で商品を販売するなら欠かせないサイトである。中国ではAmazonよりもアリババグループが運営するサイトが利用される傾向があるため、アリババは中国に展開するならぜひともチェックしておきたいところ。東南アジアに展開するなら、東南アジア6カ国に展開するLazada(ラザダ)を利用するのも良いだろう。東南アジアで勢いのあるラザダはアリババグループが経営権を所有しており、ユーザーも多くてサイトの信頼度が高い。

東南アジアではローカルなものも含めると、勢いのあるモールが多数存在している。同じく東南アジアや台湾でメジャーとなっているShopee(ショッピー)も、東南アジアに展開するときに注目されているサイトの1つだ。海外のECモールに参入しにくいという場合は、日本ブランドを生かした越境ECモールのRakutenから始めてみるのも良いだろう。

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