[D2C]【連載:EC直販の最新事情】第一回「デジタルインフルエンスの影響をメーカーが無視できない理由」
近年、ブランドメーカーによるEC直販、いわゆるD2C(Direct to Consumer)が注目を集めています。「デジタルシフト」「デジタルインフルエンス」により、激しく変化する消費者の購買トレンドに対して、日本のブランドメーカーが今後EC直販にいかに参入すれば良いのでしょうか?
ブランドメーカーによるEC直販の最新事情についての連載の第一回となる今回はデジタルインフルエンスの影響をメーカーが無視できない理由についてお伝えします。
デジタルインフルエンスの拡大
昨今、消費者が買い物を行う際には、まずネット広告やSNS、モールのレビューなどのオンラインで情報を集めた上で、オンラインで購入するか、オフラインの実店舗で購入するかの選択肢の中で、どこで欲しい物を買うのかを検討するようになっています。デジタルを起点として商品購入を意思決定することを指標化した「デジタルインフルエンス」の影響が拡大しており、小売全体で無視できない状況になっています。
SBペイメントサービス株式会社が2020年1-3月、20-80代の約2千人の男女を対象に実施した「消費者の商品購入に関する意識調査」(https://www.sbpayment.jp/news/press/2020/20200427_000805/)によると、購買決定においてネットが消費者に与える影響力としての「デジタルインフルエンス」はより顕著な数値を示しています。
EC化が低い食品や飲料はまだECサイトを見ずに実店舗で購入している人が約6割を占めており、デジタルインフルエンスは依然として低い状態です。
しかし、その他のカテゴリーでは、すでに70%以上がECサイトと実店舗を比較した上でいずれかで商品を購入するなど、何らかのデジタルインフルエンスを受けている旨の回答をしており、デジタルを起点として商品購入を決定していることがわかりました。
また、こうした傾向は、外出自粛の長期化によって足元ではさらに強まっていると考えられます。
これにより、楽天やAmazonといった「ECモール」が市場を急速に拡大しており、ECモールの影響力はすべての小売関連業者にとって無視できないものとなったと言えるでしょう。
ブランドメーカーがオンラインで公式店を展開する必要性
メーカーは、卸を介して小売店の売り場・棚をどうやってとるか、売場でのコミュ二ケーションを小売店へ提案する、という活動をしているでしょう。他方で、オンラインの売り場では、オフラインのように卸や小売店を介して売場をケアするのは困難です。
消費者が商品を認知する場所も、従来のテレビ広告や新聞広告などのマスメディアから、オンラインのインターネット広告やレビューなどのデジタル領域へと重点が移行しています。
この状態で何も対策をせずに放置していると、オンラインでのプロモーションに強みをもつ新興ブランドに一気にシェアを追い抜かれかねません。
さらには、オンラインでの競争が激化することで販売価格が低下、ひいては非正規品が氾濫し、ブランド力が低下するという結果を招いてしまう恐れもあります。
このように、オンラインではメーカーが直販を行う機会が開かれていることに加えて、メーカーが、自社ブランドを守るためにも、オンラインにおける「公式店」を自ら展開する必要も生じているのです。
オンラインでの販売状況はオフラインにも波及する
オンラインでの価格下落やブランド力の低下が起きると、結果的にはオフラインでの販売にも影響が出ます。
例えばオンラインでの口コミにおいて、競合には多くのレビューが集まっているのに、自社商品は数件しかない・・・といった状況をそのままにしていると、オンラインだけでなくオフラインの実店舗でも消費者に敬遠されるようになり、ビジネス全体に影響を与えてしまいかねません。
こうして、デジタルインフルエンスの影響力が強くなったため、「ECのようなオンラインは自社には関係ない」という認識をしていると、オフラインにまでマイナス効果が波及してしまうのです。
ブランド公式ショップを本格的に運用して、ビジネスを拡大する必要性
そこでブランド公式店を作っておくことで、このような事態を放置しない対策が必要です。
つまり、ブランド商品を自ら管理する必要があります。消費者に対して、オンラインでブランドメーカーが自ら商品を直販し、プロモーション、サービス提供、接客・販売まで行います。
これを実現するためには、メーカーとして参入する上での課題をしっかり把握しておかなくてはいけません。
次回は、この課題と対策を見ていきましょう。