潜在顧客へのアプローチならコレ!リスティング広告の運用ポイント

松原吉輝

「検索」に連動した広告を配信できるリスティング広告は、興味関心や購入意欲の高い顕在層に効果的にアプローチできる手法です。競争の激しいEC市場において、正確なターゲティングと効果的な広告運用を行うことが成功の鍵です。

Googleリスティング広告を正しく運用することで、ターゲットユーザーのサイト訪問数やコンバージョン率を向上することができます。少額の予算から始められるため、柔軟な運用が可能です。また、リアルタイムで広告効果を測定・改善し、スピーディーなPDCAサイクルを回しやすいという点は、EC担当者にとって大きなメリットと言えるでしょう。

本記事では、Googleリスティング広告の概要と運用ポイントについて解説します。

1. Googleリスティング広告とは?

ユーザーが検索したキーワードに応じて、検索結果に表示される広告のことで、「検索連動型広告」とも言います。広告は検索結果の上下やGoogleショッピング上部に表示され、「スポンサー」と表記されることで自然検索と広告とを区別できます。
広告費用はクリック毎に発生し、広告単価はオークション形式で決まります。

 

2. リスティング広告の主要要素

■キーワード選定とマッチタイプ
リスティング広告で工数がかかるポイントの一つが、キーワード選定です。自社商品にマッチするキーワードやニュアンスの違いなどを一つ一つ手作業で設定するとなると、膨大な時間がかかります。配信目的や商品特徴、ターゲットに合わせてマッチタイプを設定し、配信を最適化しましょう。

マッチタイプとは、「広告設定キーワード」と「ユーザーの検索キーワード」にどの程度厳密な一致を求めるかを指定する設定で、「インテントマッチ」「フレーズ一致」「完全一致」の3種類あります。

①インテントマッチ
広告設定キーワードが 「女子旅 関東」 の場合
・女子旅 温泉 おすすめ
・東京から車で行ける温泉地
・美肌 温泉 おすすめ
など、設定キーワードに関連する検索も広告の表示対象となります。より多くのユーザーにアプローチでき、キーワードを網羅するためにかかる時間を削減できます。


②フレーズ一致
広告設定キーワードが ランニングシューズ の場合
・ランニング用の靴
・青いランニングシューズ
・履き心地のいいランニング用シューズ
など、同じ意味と解釈できる文言や、より具体的な情報を追加した検索に対しても広告が表示されます。

※キーワードを二重引用符()で囲むことでフレーズ一致として設定できます。


③完全一致
広告設定キーワードが [女性用の靴] の場合
・靴 女性
・女性 靴
・女 靴
など、全く同じ意味や意図の検索が広告の表示対象となります。表示対象を最も絞り込むことが可能です。

※キーワードを角カッコ([ ])で囲むことで完全一致として設定できます。



特に広告配信の初期段階では、キーワードを絞り込むだけのデータが蓄積されておらず、また配信キーワードを一つ一つ設定するのは膨大な時間がかかります。インテントマッチでターゲットを広く設定することで、キーワード選定の工数、キーワードの絞り込みの工数を削減すると良いでしょう。
なお、除外キーワードの設定も可能です。



■広告文の作成ポイント
①ユーザーの検索意図に合ったキーワード
検索キーワードを盛り込むことで、ユーザーにとって関連性の高い商品であると認識され、クリック率の向上に繋がります。広告文に検索キーワードを設定すると広告の品質スコア向上の効果もあります。


②明確な価値提案
自社商品の特徴や他社との違いを明確に示したり、限定セールなどの特典を提示することで、ユーザーに対して価値提案をしましょう。
「累計販売数◯万個突破」「国産◯◯100%使用」「送料無料」「期間限定◯割引セール」など。


③CTAを入れる
「詳細はこちら」「今すぐ購入」「無料で試す」など、具体的な行動を促すフレーズを含めることで、クリックに繋げることも大切です。



■ランディングページ(LP)の最適化
せっかく広告をクリックしても、遷移先のページがユーザーの求める内容ではないと、すぐにページを離脱されてしまいます。ユーザーに見てもらえるLPを作るには、以下の要素が大切です。

①ファーストビューでの魅力的な訴求
ユーザーは最初に目にするファーストビューを見て、「ニーズに合った商品かどうか」を瞬時に判断します。商品の強みや特徴が伝わる画像とコンパクトな文言で伝えられると理想的です。

②ユーザーニーズに応える具体的な提案
商品の強み、他社との違い、その商品が最適である理由など、短く簡潔に伝えましょう。例えば美容成分の含有量に強みのある化粧水であれば、ボトルの画像を用いて視覚的に「他社より美容成分が多い」ことを表現すると、テキストのみで訴求するよりも効果的でしょう。

③分かりやすいレイアウト・デザイン
ユーザーが迷わないよう、シンプルなデザインをおすすめします。購入や問い合わせのボタンは見やすい場所に配置したり、閲覧を邪魔しないのであればフロートバナーで表示するのも一つです。

④信頼性を高める根拠や証明
ユーザーの信頼を得るために、レビューや導入実績、受賞歴などを表示すると効果的です。商品によっては、医師や整体師など専門家からのコメントがあると、より信頼性を高めることができます。



■Quality Score(品質スコア)の重要性
品質スコア=リスティング広告の品質を数値化したもので、品質スコアが高いほど、ユーザーが求める情報と広告内容との一致度が高くなり、クリック単価の抑制に繋がります。
品質スコアに影響する要素はクリック率、広告の関連性、ランディングページの体験などです。

なお、Googleの公式情報では、「品質スコアは広告オークションの評価材料になっていない」としています。

オークションの評価材料ではなくとも、品質スコアが低いと広告の費用対効果も悪くなります。適切な広告かどうかの客観的な判断材料の一つとして、品質スコアの数値を高められるよう改善していくのが良いでしょう。

  

3. ターゲット設定のポイント

リスティング広告は検索キーワードを指定して配信されるので、「◯◯を検索した人」というターゲティングを最初から行っている、とも言えます。

広告の特性上、地域・性別・年齢などの基本的なターゲティングは行っても、それ以上のターゲティングをすることは少ないです。
リスティング広告で可能なターゲティングは以下の通りです。

①基本的なターゲティング
・地域
・年齢:18~24才 / 25~34才 / 35~44才 / 45~54才 / 55~64才 / 65才以上 / 不明
・性別:女性 / 男性 / 不明

前提として、キーワードを検索している=一定のニーズがあると考えられるので、必要以上に絞り込みすぎないことも重要です。
女性向けの商品であっても、男性がプレゼントとして探しているケースもあります。


②スケジュール
配信曜日や時間帯を設定できます。「曜日限定セール」「問い合わせに対応できない」といった理由がなければ、こちらも設定し過ぎない方が良いでしょう。


③デバイス
・PC
・スマホ
・タブレット
の3つから配信デバイスを指定できます。


④ユーザー属性
・配偶者の有無
・子供の有無
・教育
・住宅所有状況
・就業状況
・興味関心
・購買意欲

「興味関心」は、スポーツや旅行などのジャンルを選択し、ターゲティングできます。顧客像が明確であれば設定しても良いかもしれません。

「購買意欲」は、直近でジャンルや商品について積極的に調べているような、興味関心よりも購買意欲が高いと想定される人をターゲティングすることができます。


⑤データセグメント
自身で保有しているデータを活用し、
・サイトを訪問した人
・カスタマーデータの類似拡張
から、よりCVに繋がりやすいユーザーに広告を配信できるセグメントです。
データが少ないと配信数も少なくなってしまうので、顧客データが多い場合に効果的でしょう。

 

4. リスティング広告の入札戦略

EC事業者がリスティング広告を配信する際に最も多いのが、コンバージョン(CV)獲得を最大化するための入札戦略です。インプレッションやクリック数を最大化するための戦略もありますが、本記事ではCV獲得の入札戦略について解説します。

①目標コンバージョン単価
目標内の単価でCV数を最大化するよう、自動で入札を調整する。
入札の手間を省き、CV単価を維持しやすいが、クリック単価が高くなる可能性もある。

②コンバージョン数の最大化
予算内でCV数を最大化するよう、自動で入札を調整する。
入札の手間を省けるが、クリック単価が高くなる可能性もある。

③コンバージョン値の最大化
予算内で価値の高いCVを最大化するよう、自動で入札を調整する。
入札の手間を省き、売上を考慮した運用ができるが、CV数は考慮されない。

1,000円と5,000円の商品がある場合、「1,000円✕3件」よりも「5,000円✕1件」が優先されます。

④目標広告費用対効果
設定した費用対効果(ROAS)で最も効率よくCV数を獲得するよう、自動で入札を調整する。
入札の手間を省けるが、広告配信数が制限される可能性がある。

ROAS目標値が高すぎると、配信数が抑制されCV数が減ることがあります。

⑤拡張クリック単価
入札額を手動で設定できるが、状況に応じて自動で金額の引き上げ・引き下げが行われる。
CV数を最大化しながらコストを抑制できるが、工数がかかり、特定のキーワードを上位表示するといった調整が効かない。

CV数獲得が見込める場合に自動で入札額を引き上げ、見込めない場合は入札額を引き下げます。入札額の平均は、手動設定した金額内に調整されるため、コストを抑えながらCV獲得が狙えます。

 

5. 広告効果の測定と改善方法

リスティング広告運用で大切なのは、常にPDCAサイクルを回し続けることです。入札単価や競合他社の配信状況などは日々変動します。主要指標を元に分析と改善を繰り返すことで、広告効果を高めていきましょう。

■主要指標について
・CTR:クリック率
クリック数÷表示数✕100
平均3~5%

・CPC:クリック単価
広告コスト÷クリック数

・CVR:コンバージョン(CV)率
コンバージョン数÷クリック数✕100
平均2~3%

・CPA:獲得単価
広告コスト÷コンバージョン数

・ROAS:費用対効果
売上÷広告費✕100


クリック率・CV率を高め、広告単価を下げることが理想的ですが、商品によってはROASの設定目標は異なります。
化粧品のようなリピート購入を前提とした商品では、LTVを考慮し最終的に利益が出るよう広告予算を設定するので、一度の広告配信で必ずしも利益を確保しなければならない訳ではありません。
一方で、リピート購入を前提としない商品は、一度の広告配信で利益を確保できるよう目標設定を行う必要があります。


■PDCAサイクルで効率的に運用する方法
Plan(計画):目標設定とKPI
Do(実行):広告設定と運用
Check(評価):データ分析とレポート作成
Action(改善):フィードバックをもとに広告の最適化

これらを効率的・効果的に運用するには、
・客観的に評価する
・計画をやりきる
・評価基準の明確化
が大切です。

主要指標(CTRやCPC、CVRなど)は客観的な評価をする上で欠かせない指標です。
広告配信の開始、停止を随時行えるのはリスティング広告のメリットですが、数時間や1日の成果だけをみて判断してしまうと、分析に必要なデータが不足してしまいます。
また、評価基準が曖昧だと、広告の継続・停止の判断を適切に行えません。
主要指標の平均値や、自社商品の原価率、狙うべきキーワードの配信単価を元に、目標設定をした上で広告配信をスタートさせましょう。


※Google広告の機能「キーワードプランナー」では、
・キーワードごとの月間検索ボリューム
・関連キーワードの調査
・広告配信時のクリック単価
を確認することができます。基本機能は無料で利用できるツールなので、リスティング広告を始めるならぜひ活用しましょう。

 

まとめ

Googleリスティング広告は、キーワードを基に検索結果に広告を表示する効果的なマーケティング手法です。適切なキーワード選定、ターゲティング、広告文の最適化により、クリック率やコンバージョン率を向上させることが可能です。また、リアルタイムでの効果測定やPDCAサイクルを通じた改善、費用対効果の計算がしやすく、EC事業者にとって運用しやすい広告の一つです。リスティング広告を上手に活用し、売上UPに繋げていきましょう。



EC運営においては、SEO対策、広告、SNS、LINEなど様々なプロモーション施策を複合的に実施できるのが理想的です。

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著者

松原吉輝

マーケティング会社にて大手・中小合わせて500社の支援を事業責任者として行う。その後、経営再建のために15名ほどの会社の社長業を担い、2016年に「EC運営代行」のGIVE&GIVE(株)を創業。
クライアントは大手・中小企業とあり、楽天市場では優良店を次々と輩出。現在はECの枠を超えたマーケティング、ブランディング、プロモーション支援まで行う。
2021年、未就学児~中学生への教育支援事業として「協育・共育プラットフォーム」を提供す(株)weclipを設立。世田谷区の起業家支援プログラムのメンターも行う。他に、カベウチサービス、飲食業、アルコールアイスクリームブランドの開発・販売も行う。

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