日本のソフトパワーで読み解く越境EC最新事情 第三回

BEENOS株式会社

日本のソフトパワーで読み解く越境EC最新事情 

前回はアニメやマンガなど、日本のエンターテインメントジャンルにフォーカスしたカテゴリについてお伝えしましたが、今回の第三回「日本のカルチャージャンルにおける越境ECの購買データ」では今回は日本カルチャーを反映したジャンルとしてファッション・ビューティー・食品カテゴリの購買データをご紹介します。

1.アジアだけでなくアメリカでも若年層を中心に購買が活発な日本ファッション

1.アジアだけでなくアメリカでも若年層を中心に購買が活発な日本ファッション

 日本のファッション市場は、その品質とデザインの高さで国内外から支持を集めています。2023年の国内「繊物・衣服・身の回り品小売業」の市場規模は8.5兆円に達し(※1)、安定した需要がある一方で、Statistaの発表した「2019年~2029年 世界のアパレル市場の売上高」によれば世界のファッション市場は2029年までに約2兆ドル(約300兆円)規模に拡大すると予測されています(※2)。さらに、日本国内の「衣類・服飾雑貨等のEC市場規模」も成長を続け、2023年には2兆6,712億円に達し、10年間で2倍の規模に成長しています。また、国内の「衣類・服装雑貨等」のEC化率は2013年の1.65%から2023年の22.88%と大幅に伸長しています(※3)。こうしたファッション市場のEC化率の増加は越境ECの環境整備につながり、海外のユーザーが日本の衣類を手に取る機会の拡大に寄与しています。

 「越境ECランキング発表会2024」で発表されたファッションの人気商品ジャンルランキングでは、1位に「レディーストップス」、2位に「メンズトップス」、3位に「メンズジャケット・アウター」がランクインしました。これらの商品の購入エリア人気ランキングでは1位が北米、2位が東アジア、3位がヨーロッパと幅広いエリアで商品が購入されています。
ユーザーのセグメントは、購入件数ランキングでは1位がアメリカの20代男性、2位がアメリカの20代女性、3位がアメリカの30代女性となっており、アメリカの20代を中心に購買されていることがわかりました。購入件数ではアメリカのユーザーの購買が目立ちますが、商品単価の高い順では1位がドイツの20代男性、2位が中国の30代男性、3位がイギリスの40代女性という結果になりました。商品単価順のランキングにおいても若年層が中心となっています。


 日本のファッションが海外で評価される理由には、高品質な素材や精緻な仕立て、トレンドを取り入れながらも独自性を重視したデザインが挙げられます。体形が近いことからアジアが中心の購買が予想されますが、アメリカにおいても人気が高いことがわかりました。さらに、2024年は円安の影響により価格競争力が高まったことも購買意欲を促進する要因となりましたが、EC化率の改善や訪日インバウンドの拡大が進んでおり引き続き市場の拡大が期待されます。

2.サプリメントを主力に扱う企業が上位となったビューティー・ヘルスケアカテゴリ

2.サプリメントを主力に扱う企業が上位となったビューティー・ヘルスケアカテゴリ

 日本の化粧品業界は、その品質の高さと多様な製品ラインナップで国内外から高い評価を得ています。2023年の国内工場出荷金額は1兆3,024億円に達し、2019年以降減少傾向にあった市場が回復基調にあります。特に皮膚用化粧品が全体の43.6%を占め、次いで頭髪用化粧品(28.0%)、仕上げ用化粧品(20.7%)と続きます。商品分野別の出荷金額ランキングでは、1位が「化粧水」、2位が「美容液」、3位が「染毛料」となり、スキンケア商品が市場の主力であることがうかがえます( ※4)。

 「越境ECランキング発表会2024」においては、ビューティー・ヘルスケアカテゴリの人気ブランドランキングでは、1位に「DHC」、2位に「FANCL」、10位に「オリヒロ」とサプリメントを扱う企業が上位にランクインしました。化粧品を主力商品として扱う企業としては大手化粧品メーカーである「資生堂」のほか低価格帯で人気を集めている「CANMAKE」がランクインしました。このほか、9位にはヘアケアを中心としたサロン向け商品「ルベル」が入りました。

 「ビューティー・ヘルスケア」のカテゴリの購入エリアランキングでは1位が東アジア、2位が北米、3位がヨーロッパとなりました。購入者の男女比では女性が60.7%、男性が39.3%となっており、女性が中心となっているものの男性の占める割合も高い結果となっています。

 家電の人気商品ジャンルランキングでは、1位が「美容・健康家電」、2位が「キッチン家電」、3位が「冷暖房器具・空調家電」となりました。美容家電の中では1位に「ヘアドライヤー」、2位に「美容機器」、3位に「ヘアアイロン」がランクインし、「ヘアケア」商品に注目が集まっています。ヘアドライヤーでは「パナソニック」や「サロニア」などの日本メーカーのほか「ダイソン」が購入されており、ヘアアイロンにおいては「クレイツ」、「サロニア」が人気となっていました。

3. 酒などのドリンク類、お茶の需要が高い食品カテゴリ

3. 酒などのドリンク類、お茶の需要が高い食品カテゴリ

 世界の飲食料品市場は、2030年に1,360兆円に達し、2015年の約1.5倍に拡大すると予測されています(※5)。日本の農林水産物・食品の輸出額は2023年に1兆4,547億円を記録し、過去最高を更新しました。健康志向の高まりによる緑茶の需要増加などのほか、日本食レストランの増加に伴う外食需要が回復しソース混合調味料の需要が増加したことが要因となっています。特に香港、アメリカ、韓国、台湾での増加額が大きいものとなっています(※6)。

 越境ECの食品カテゴリの人気商品ジャンルランキングでは、1位が「ドリンク、水、お酒」、2位が「スイーツ、洋菓子」、3位が「調味料」、4位には世界的に需要が高まっている緑茶を含む「お茶・紅茶」が4位にランクインしました。さらに、麺類やあめ・ミント・ガム、コーヒーなどもトップ10入りしており、日本の飲食品が海外市場において着実に受容されていることがうかがえます。駄菓子の箱買いなど、まとめ買い需要の存在も確認されており、日本の食品ブランドに対する関心の高さが感じられました。

 発表会内で紹介された「日本のソフトパワーと越境ECの購入意向に関する意識調査」において「日本に来て体験したいこと」ではランキング5位に「大衆的な料理店での食事」が入っていました。日本での大衆的な食品としてラーメンの人気が高く、「越境ECランキング発表会2024」におけるラーメンメーカーランキングでは、1位に大手の「日清食品」、2位に「サンヨー食品」、3位に「マルタイ」、4位には訪日客人気の高い実店舗を持つ「一蘭」がランクインしました。ラーメンは日本食の中でも1食あたりの単価が低く、簡単な調理で日本食を体験できることから人気を集めています。

 越境ECにおいては食品カテゴリでは世界的に投機目的での購入が活発な日本のウイスキーなどのお酒をはじめ、日本メーカーによるお茶などの飲料が人気を集めています。海外において店舗などでの入手が困難なお酒やお茶をはじめとした飲料品や食品の需要は高く、海外ユーザーが商品を手に取ることができる手段として越境ECは利用されています。

4.「趣味大国無双消費」で広がり続ける海外の日本ファン

 日本製品は、その品質や利便性の高さなどから国内外を問わず多くのユーザーから支持されています。ファッション、ビューティー、食品といった日本カルチャーを反映したジャンルはもちろん、キッチン用品や家電などの実用的なジャンルにおいても、その魅力は広がりを見せています。これらの製品は、単なる消費財としての役割を超え、日本文化の価値を世界に伝える「ソフトパワー」としての機能を果たしており、越境ECを通じてさらなる認知と需要を生み出すことで、日本は「趣味大国無双消費」状態となっています。

 日本製品の最大の強みは、細部までこだわった高い品質と、それを支える長年の技術力にあります。製品そのものの信頼性だけでなく、実用性とデザイン性を兼ね備えた点も大きな魅力となっており、近年の円安の流れを背景に越境ECを利用した購買が増加し、日本製品を購入する機会は更に広がっています。

 さらに、日本製品を一度購入した消費者が、その品質に満足しリピート購入へとつながるケースも多く見られます。例えば、食品分野では日本独自の味や健康志向に応える商品が評価され、ビューティー分野では高品質なスキンケア商品が人気を集めています。こうした消費行動は、日本製品が単なる一過性のブームではなく、継続的な需要を生み出すことを示しています。

※1 経済産業省 「商業動態統計」
https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/syoudou/
※2 Statista「Revenue of the apparel market worldwide from 2019 to 2029」
https://www.statista.com/forecasts/821415/value-of-the-global-apparel-market
※3 経済産業省 「電子商取引実態調査」
https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/statistics/outlook/ie_outlook.html
※4 日本化粧品工業会「化粧品統計」
https://www.jcia.org/user/statistics/shipment
※5 農林水産政策研究所「世界の飲食料市場規模の推計結果について」https://www.maff.go.jp/primaff/seika/pickup/2019/19_01.html
※6 農林水産省「2023年1-12月農林水産物・食品の輸出額」https://www.maff.go.jp/j/shokusan/export/e_info/attach/pdf/zisseki-238.pdf


著者

BEENOS株式会社

BEENOSグループは越境EC黎明期である2008年より海外転送サービスである「転送コム」事業を開始し、海外発送オペレーションやグローバルなカスタマーサポートなど独自のノウハウを培ってまいりました。海外への販売環境の構築に留まらずお客様の獲得や集客支援も提供しており、手厚い海外販売支援が評価され、BEENOSグループ全体での国内企業の越境EC支援実績は累計5,000件以上(※1)に上ります。また、海外購入サポートサービス「Buyee(バイイー https://buyee.jp/ )」は、多様な配送手段や決済手段、北米やヨーロッパ、アジアへ向けた独自の物流サービスによる国際配送料の安さ、複数のサイトで購入した商品でも同梱できることなど高いサービスレベルが好評で、リピート率も高く、現在会員数は550万人以上となりました(※2)。

(※1)BEENOSグループが提供する「Buyee」「Buyee Connect」およびダッシュボードの提供、越境EC関連サービス「転送コム(https://www.tenso.com/)」、海外マーケットプレイスへの出店および出品サポート、マーケティングおよびプロモーション支援の件数を合わせた数字、BEENOSグループとしての国内企業の越境EC支援実績の累計、2023年10月時点
(※2)「Buyee」と越境EC関連サービス「転送コム」を合わせた数字、2024年7月末時点

https://beenos.com/

BEENOS株式会社 の執筆記事