【第4回】EC店舗を襲う不正の今~ヤフオク、メルカリに盗品が?~
EC業界において、実は不正注文が大量発生しているってご存知ですか?
この連載では、EC業界を取り巻く不正の全体像、そして不正からEC店舗を守る方法に迫ります。
<過去掲載分もご参考ください>
第1回:セブン銀ATM不正引き出しは対岸の火事ではない
https://ecnomikata.com/column/9728/
第2回:あなたは見抜ける?不正注文の具体例
https://ecnomikata.com/column/9953/
第3回:【3社比較】Amazon/楽天/Yahoo!の対応は?
https://ecnomikata.com/column/10179/
はじめに
これまでの記事では、不正者が商品を盗むまでの手口をご紹介しました。今回はその後の、盗品を現金化する手口をご紹介します。
一例として、ヤフオクやメルカリなど、いわゆるCtoCサービスを悪用するケースを見てみましょう。
個人が商品を販売することが一般的に
前提として、ヤフオクは競争入札により価格が変化するオークション、メルカリは固定価格で購入できるフリーマーケットサービスです。楽天市場のようなショッピングモールとは異なり、一般個人どうしが簡単に売買できる点が大きな特徴です。
こうした、個人間売買サイトの利用者数は2000万人以上という調査もあり、すでに一般化していると言えます。
化粧品や健康食品までもが不正のターゲット
物を売る側としては、正しく使えば不用品を現金化できる便利なサービスであり、悪用しようと思えば、盗んだ品物を現金化する目的で使うこともできます。
「ヤフオク 盗品」でWEB検索をすると、過去に多くの被害事例が起きていることが分かりますが、その多くは家電、時計、自転車といった高額品です。
一方で、化粧品や健康食品など、数千円前後の比較的低額な品までもが盗品として流通していることは、あまり知られていないかもしれません。
~次のページは、盗品の可能性がある出品物の見つけ方です~
見つけ方
盗品の可能性がある出品物を実際に調べてみましょう。ネットオークション最大手であるヤフオクにアクセスしてみてください。
検索欄が最上部にあります。パソコン版サービスの画面では、この欄の横に「条件指定」というボタンがあり、クリック後の画面では検索条件を細かく指定することができます。
例えば、有名基礎化粧品のブランドを、キーワード入力してください。そして、下記画像の赤枠のように選択したうえで、検索ボタンを押します。
検索結果を表示後、入札の多い順に並び替えれば、人気の高いものが分かります。そして、出品物ごとに表示される出品者IDをクリックすると、その人の出品する商品が全て表示されます。
入札の多い商品の出品者をしばらくチェックしてみると、こんな出品者が見つかります。複数ブランドの化粧品を多数、しかも価格.comなどの価格比較サイトやブランド直販サイトで表示される最安価格よりも、さらに1~5割安い即決価格で出品している人です。かなりの頻度で見つかるかもしれません。
どんな人が出品しているのか
営利目的の販売業者
今回「個人出品者」で検索しました。しかし、全て新品での品揃えの良さや、長期で類似の取引履歴から、営利目的の販売業者と考えられます。実際、特定の出品者IDを調査すると、直近1か月の落札件数が300件以上、落札価格では170万円以上のケースもあります。
多数存在しグループ化も
そして、このような出品者は多数存在します。試しに、自己紹介欄や出品物などに類似の特徴を持つ複数の出品者から落札してみると、出品者住所が半径1.5km圏内に固まっている例もありました。
必ずしも犯罪者とは限らない
盗犯グループの可能性もありますが、一方で、事情をよく把握していない出品代行アルバイトの可能性も考えられます。出品者は必ずしも、実際に商品を不正入手した人であるとは限らない点にはご注意ください。
~本当に盗品なのでしょうか?~
本当に盗品なのか?
もちろん、価格が安い理由として「在庫整理品」「倒産品」「廃棄商品の転売」といった可能性や、「複数ブランドのものを安く大量に販売しているからといって盗品と疑うのはいかがか」というご指摘は確かにあると思います。
ところが、出品物をよく調べると最新の人気商品であることから「在庫整理品」とは考えにくく、過去の取引履歴を確認すると「倒産品」にしては長期に渡ってコンスタントに出品されています。製造年月日の新しさから「廃棄商品の転売」ではないでしょう。
また、最安価格よりもはるかに安い即決価格で、しかも、オークション運営会社へ10%弱の手数料を支払ってまで反復継続して取引するというのは、正常な仕入れ方法では実現できないのではないでしょうか。
落札後の評価がつく事で取引履歴として残り、目立つ事を嫌ってか、「原則、評価はつけないで欲しい」という趣旨の取引時コメントも多く、何かを隠そうとする意図を感じさせます。
さらに調査すると、出品者の住所と、我々のサービスであるO-PLUXの「共有ネガティブ情報」(※)との関連性も確認できました。
※共有ネガティブ情報
O-PLUXでは、EC業界で7,000を超える導入済みWebサイト・サービスで未払い等のあったネガティブデータを共有しています。
http://cacco.co.jp/products/o-plux/
最後に
もしも、あなたの運営するECサイトで扱っている商品の新品が、ヤフオクなどで多数流通していたら特にご注意ください。被害は未回収代金といった、直接的で分かりやすく計算できるものだけではありません。本来、自社ECサイト経由だったはずの取引が無くなり、売上が低下することはもちろん、流通価格や品質低下によるブランドイメージの悪化にもつながりかねません。
では、どうすればよいのか?次回、第5回では対策方法をご紹介いたします。
【最終回】~あなたのサイトを守る5つのポイント~(https://ecnomikata.com/column/11131/)