【最終回】ヨナーイ佐々木のEC内緒話~どん底から這い上がった男の成功運営ノウハウ
【テラオ株式会社 ヨナーイ佐々木のEC内緒話~どん底から這い上がった男の成功運営ノウハウ】
オリジナルの日本酒と型番の自転車グッズ。どちらでも無駄なお金をかけずに成果を上げた著者のノウハウを全10回でお届けします。
◆自転車グッズのキアーロ
http://www.rakuten.ne.jp/gold/dandelion/
ありふれていて、どこにでもあるもの。商品の価値=原価だと自分たちが思っているのは、私にとっては「甘え」にしか見えませんでした。
☆前回までのバックナンバーはこちら
◆あさびらき十一代目 源三屋
http://www.rakuten.ne.jp/gold/asabiraki/
・第一回「27歳職歴なし無職(借金有り)からの出発」
https://ecnomikata.com/column/9195/
・第二回「パソコンを持たないネットショップ店長誕生」
https://ecnomikata.com/column/9380/
・第三回「思わぬヒット商品、誕生。」
https://ecnomikata.com/column/9596/
・第四回「強みを生かすとヒットが生まれる。」
https://ecnomikata.com/column/9886/
・第五回「評価されなかった頑張りと結果。」
https://www.ecnomikata.com/column/10144/
・第六回「チームビルディングが教えてくれた。」
https://ecnomikata.com/column/10330/
・第七回「震災。そしてさよなら大好きなあさ開。」
https://ecnomikata.com/column/10533/
・第八回「日本酒屋が見た自転車グッズ屋」
https://ecnomikata.com/column/10780/
・第九回「もう一度お客さんの事を考える」
https://www.ecnomikata.com/column/11006/
◆マーケットシェアよりマインドシェア
さてさて。
思うに任せて勢いで書かせて頂いてきた本コラムも今回で最終回です。
本当は先週の掲載予定でしたが、扁桃腺炎で一週間ほど40度近い熱が続いてぶっ倒れておりましたので、一週遅れの更新になってしまいました(笑)。
それでは、スタートです。
「ECは売れる!」と商品数・価格・配送の規模の拡充だけを図っていくと、その行きつく先には確実にAmazonさんや大型店さんがいます。勝負になるわけないんです(笑)。
私たちが意識しなければいけないのは、マーケットシェアよりもお客さんのマインドシェア。
ものすごくわかりやすく言えば、中小企業のECは「記憶に残って、覚えられて、好きになってもらってナンボ」なんです。
それは本店だろうがモールだろうが変わりません。
「それ良いね。どこで買ったの?」
って言われて、お客さんが「ネットで」「楽天で」って答えたら、それはこちらの「負け」です。何億売ろうとも、ランキング1位だろうとも。ボクはそう思っています。
私が加わったこの2年で、300%近くまで増えたキアーロの売上ですが、特に大きく変化したのが前回までにお話しした「CVR(転換率)」と、もう一つが「リピート率」です。
キアーロのメイン商材は「自転車のチャイルドシート」。
言うまでもなく「このお店で買ったチャイルドシートが凄く良かった!来月また別のを買おう!」とは絶対にならず、普通に考えてリピートするような商材ではありません。
しかし、この2年間で全体のご注文中に占めるリピート注文の比率は、8%から15%ほどまで増えました。
何をしたのでしょう?
その一つがノベルティ。
ページで「お買い上げでプレゼント!」ともアピールすらせず、こっそりとこんなカラフルな軍手を一部のお客さまには商品と一緒にお届けしています。
そんなおまけが付くと知らなかったお客さんは「ああ、たまたまだったけど親切なお店で買いものしたんだなぁ」と良い印象を抱いてくださります。
実はこれ。
以前は良くある「白い軍手」をお送りしていたんですが、ほぼ3倍のコストをかけて現在のカラーの物に変えました。
理由は簡単で「捨てられないから」です。
恐らく、開封時の「親切なお店だな」という印象は、どちらでも大きくは変わりません。
が、ただの白い軍手の使われた後の扱いは、説明する間でもありませんよね(笑)?
でも、かわいい軍手はちゃんと取っておいてくださるのです。
きっと普段は忘れられています。それでいいんです。
でも「あ、やっぱりチャイルドシートのカバーも要るな」と思った時に、この軍手には店名が書いてるんですよね。
「ああ、わざわざネットで新しいお店や商品を探すよりは、先日のこのお店が良かったしここで買おう!」
そう思ってくださる方が少なくないのは、この2年間で倍増したリピートご注文が証明しています。
例えば、地域の清掃や、幼稚園のバザーで誰かに「その軍手かわいいね」と言われたお母さんは、きっと説明してくれますよね。
「チャイルドシートを買ったお店がおまけでくれたの。」
って。
いわば「検索されるより前に思い出していただけるお店」になるためのツールなんです。
そして、もう一つ。
ものすごく大切な事があります。
◆何となく出していませんか?フォローメール。
商品お届け後のフォローメール。
「もちろんちゃんと送ってるよー。」
という方が多いと思います。
だいたい多いパターンとしては…
「先日はありがとうございました。」
「お届けに問題はありませんでしたか?」
「良かったらレビュー書いてくださいね。」
辺りだと思います。
でも、これって「何のために」出していますか?
たぶんですね。
凄く筆まめな方以外は、凄く感動したか、凄く不満を持った場合にしか、返信やレビューは書いてくださらないと思います。私自身もそうですし(笑)。
ネットで、特にモールでは、特別な指名買いのケースを除いた、検索などから入って何かしらの理由でお買い物をしてくださった普通のお客さんは、その時点では、ほぼ確実に自店舗のことを認識していません。
売上規模がどうであろうと、ランキングがどうであろうと、まず覚えてもらえていません。
で、商品発送後には、テンプレート通りのフォローメールを送っておしまい。
送ってない方という方もかなりいると思います。
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死ぬほどもったいないです!!!!!!!
商品をお届けした数日後までは「お客さんにお店を知って覚えてもらう最大のチャンス」なのに。
例えば。
そのお店のこだわりや想い、歴史や、そのお店の店長さんの(共感出来たり好きになるような)近況や身の回りのこと、最近考えたことなどの自己開示など。
初めてのお店で、早く商品が欲しいのに買う前に延々と聞かされても、ほとんどの場合は鬱陶しいだけです。
が。
商品お届け後のフォローメールのタイミングこそが、いわゆる「お店としてのミッションレター」を送るのに最高のタイミングです。
最初はネットでたまたま見つけて買っただけの「名前も覚えていないお店」だったとしても、
お客さんの印象に残る。少し好きになってもらう。次に買い物する時もここで買おう、と思ってもらう。
そういうことは可能だと思います。
ご参考までにキアーロからお買いもの後にお送りしているフォローメールを以下に掲載しますね。
◆実例「自転車グッズのキアーロ」フォローメール
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○○さま
こんにちは。
自転車グッズのキアーロ スタッフの○○です。
この度は当店をご利用いただき、本当にありがとうございました。
本メール記載のご注文商品は、問題なくお届けできしましたでしょうか?
「売って、商品が届いたら終わり!」
という商売では、あまりにお客さまに失礼ですので、念のため間違いなどがないかメールさせて頂きました。
何かお気づきの点、ご不明点などございましたら、どうぞ当店までご連絡ください。
☆お届け商品に問題や不具合があった場合
商品に問題やご不満があれば、どんな小さなことでもお気軽にご連絡下さい。
万一、商品のお届けに問題がございました場合には、メールにて当店までご連絡ください。
至急の対応と今後の改善をお約束させていただきます。
また、大変に恐縮ではございますが、返品・キャンセルなどに応じかねるケースもございますので「返品について」ページを今一度ご確認くださいませ。
http://www.rakuten.co.jp/dandelion/info.html
また、今回のご注文でお送りした商品はお気に召していただけましたでしょうか?
ぜひご感想や気に入った点を、お客さまレビューよりお知らせください!
※※※ お客さまレビューへのリンク ※※※
ご記入いただいたレビューは、すべて店長以下スタッフ全員が必ず拝読いたしまして、今後の店舗運営やサービス向上の参考にさせていただきます。
これからお買い物をされるお客さまの参考ともなりますので、ご協力いただければ幸いでございます。
お時間がある時、 一言でも結構ですのでよろしくお願いします!
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☆私たちが大切にしたいこと。忘れたくないこと。☆
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先日にたまたまfacebookで、こんな文章を目にしました。
元々はインターネットに投稿された、一般の方の文章だそうです。
☆お母さんは今日もあなたが大好き
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小さいお子さんのいらっしゃる方々の話題を拝見して思い出したことがありました。
自転車の後ろにつけていた子供用座席のことです。
うちの息子は中学生になりましたが、あの子が小さい頃は今のようにいろんな種類のおしゃれな子供用座席って、あまりありませんでした。
金属製のカゴのような、簡単なものです。
息子が小学生になった時、もう、乗せることはないからと、その座席をはずしたんです。
長く使っていたのでいたるところが錆び付き、ドライバーを使ってもなかなかはずれない。
必死になってはずしながら一息ついたとき、急に涙が溢れてきました。
私は車の運転が出来ないので、息子とどこかに行く時にはいつでもこの自転車と一緒でした。
具合が悪くて小児科に行く時、寒くないようにバスタオルで息子をくるんでここに乗せたな。
幼稚園バスに乗ると気持ちが悪くなるからと、毎日二人で歌を歌いながら幼稚園に向かったな。
春は桜を見上げながら、夏は汗びっしょりになって、冬はだるまさんのようにモコモコにさせて、いつも二人、この自転車と一緒だったな・・・。
「ママ、あのね・・・」
「ママ、おなかすいた」
背中から、いつも息子の声がしました。
毎日何気なく、当たり前のようにしていたことがもうできないんだ、と思ったら涙が止まらなくなりました。
早く大きくなればいいのに、何でも一人でできるようになればいいのに、早く自分の時間がほしい、早く・・・。
ずっとそう思っていたはずなのに、本当に寂しかった。
今はどんなに望んでも、あの頃に戻ることは出来ません。
錆び付いたカゴがとても愛しいものに見えました。
長い間、ありがとう。これからもママがんばるよ。
そう言ってさよならしました。
今、子育て真っ最中のお母さん、毎日大変だと思いますが、今しかできないこと、お子さんといっぱい思い出を作ってくださいね。
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何気なく読み進めているうちに、思いがけずに涙が出てきました。
幼い私を自転車の後ろに乗せて、一生懸命に自転車を漕いでいた母親。
おもちゃ屋さんで買ってもらった、真新しいミニカーを手にした私を、嬉しそうに振り返る父親の優しいまなざし。
ふいに思い出してしまいました。
きっと親が親でいられる時間も。
子供が子供でいられる時間も。
私たちが思っているよりも、ずっとずっと短いのでしょう。
だからこそ。
その短くてかけがえのない時間を、幸せと笑顔で満たすお手伝い。
自分たちの「相棒」である、自転車を好きなってもらう道しるべ。
いつか未来に振り返った時に、もう戻れないけれど確かにあった幸せな記憶。
そんなことこそが、私のやるべき仕事であり、販売する商品なのだと思います。
私たちの扱っているのは、他のお店でも扱っていることが多い、ほとんどがいわゆる「型番商品」です。
ですからどうしても
・価格
・配送の速さ
だけのアピールになりがち。
でも。
きっとお客さん達は、
ただ安いだけのもの。
ただ早く来るだけのもの。
それだけを求めているわけじゃない。
信頼できる良い品が欲しくて。
お子さんが安全なものが欲しくて。
困りごとを解決したくて。
今より幸せになりたくて。
だからネットで、商品を一生懸命に探すんですよね。
きちんとプロである私が、良い品をご案内できる。
誰かの困りごとを解決できる。
「そんないいものがあるんだったら、もっと早く教えてほしかった!」
そうお客さんに言っていただける。
まるで顔が見えるような、血の通ったネットショップとして
「自分がよいと思う良い商品を」
「キチンとお客さんに案内する店」
を手間暇かけて目指します。
まだまだ力不足なのですが。
最後に改めて。
ご注文、本当にありがとうございました。
心よりの感謝を申し上げます。
それでは今後とも自転車グッズのキアーロを、どうぞよろしくお願いいたします。
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商売は一期一会。
茶会に臨む際には、その機会は二度と繰り返されることのない、一生に一度の出会いであるということを心得て、亭主・客ともに互いに誠意を尽くす心構えを意味する。
という意味だそうです。
それを形にしたのが、キアーロで言えばカラー軍手でありフォローメールです。
◆最後に。
長々と全10回お付き合いいただきありがとうございました。
まだまだお話ししたいことはありますが、今回でいったん連載終了です。
私がこのコラムで書いてきたことは「こうすれば売れる」というノウハウではありません。
単に「私は(過去に)こういうことを考えて、こういうことをやってきました」という事の共有です。
だから「本質を抜き取ること」と「自分に置き換えること」が出来ないと、たぶんとりあえずの劣化コピー的パクリをする以外の役には立たないと思います。
長々と偉そうに10回ほどお話しさせて頂きましたが、一番お伝えしたいのは…
パソコンの知識が無かろうが、会社が大きくなかろうが、経営者じゃ無かろうが、オリジナル商材でも、型番商材でも、田舎でも都会でも、「やれない理由なんざーない」という事です。
自分たちの扱っている商材を買ってもらって、どこのどんな方が喜んでくれるだろうか?
それを必死で考え続けることでやり続けることで、ちゃんと利益を確保した状態で、年に数億ぐらいの売上なら作れます。作れました。
まだまだ、皆さんが商っている品を喜んでくれる方。知ったら欲しくなってくださる方はいらっしゃいます。
ECとは「Electronic Commerce(電子商取引)」の略。
あくまで「商い」を「ネットを使ってやる」ことです。
これを受注・決済・出荷をネットとパソコンを使ってやることだけだと思っているのは「電話線を引いたからじゃんじゃん電話がかかって来て注文が入るぞ!」と一昔前に思っていた人と変わりません。
「ネットは売れる」
嘘ではありません。
真実でもありません。
でも、その前の「自分の商い」を見なおせば、ネットでもリアルでもあんまり関係ない気はしますね。
そういうことをちゃんとやってると「結果としての売上」は勝手についてくるんだと思います。
最後まで、お付き合いいただきありがとうございました!
また機会がありましたらどこかでお会いしましょう。
へば!