【第八回】ヨナーイ佐々木のEC内緒話~どん底から這い上がった男の成功運営ノウハウ

佐々木 伸一

【テラオ株式会社 ヨナーイ佐々木のEC内緒話~どん底から這い上がった男の成功運営ノウハウ】
オリジナルの日本酒と型番の自転車グッズ。どちらでも無駄なお金をかけずに成果を上げた著者のノウハウを全10回でお届けします。

今回から自転車グッズのキアーロ編です。

◆自転車グッズのキアーロ
http://www.rakuten.ne.jp/gold/dandelion/


日本酒屋さんから見れば、いわゆる「型番」のネット通販の常識は驚くことばかりでした。逆に「そこが自分の強み」であったわけですが。


☆前回までのバックナンバーはこちら

◆あさびらき十一代目 源三屋
http://www.rakuten.ne.jp/gold/asabiraki/

・第一回「27歳職歴なし無職(借金有り)からの出発」
https://ecnomikata.com/column/9195/

・第二回「パソコンを持たないネットショップ店長誕生」
https://ecnomikata.com/column/9380/

・第三回「思わぬヒット商品、誕生。」
https://ecnomikata.com/column/9596/

・第四回「強みを生かすとヒットが生まれる。」
https://ecnomikata.com/column/9886/

・弟五回「評価されなかった頑張りと結果。」
https://www.ecnomikata.com/column/10144/

・第六回「チームビルディングが教えてくれた。」
https://ecnomikata.com/column/10330/

・第七回「震災。そしてさよなら大好きなあさ開。」
https://ecnomikata.com/column/10533/

岩手から大阪へ。


もちろん最初は自転車のバルブの種類すら知らないド素人から再スタート。

でも…何でしょうね?

まるで10年前に戻ったようなワクワク感があったんです。「また新しい冒険が始まる!」みたいな。

2014年8月、結婚のために岩手を離れて大阪へ引っ越し、妻の祖父が起業しお父さんが経営するテラオ会社に転職しました。妻は創業家の一人娘ですので、いわゆる婿入りですね。

彼女とは楽天ショップの店長同士で、このコラムの第六回でも書いた、2008年の楽天のチームビルディングプログラムで知り合いました。お互いに「何やこのうるさい東北人」「何だこのやる気のねぇ大阪の跡取り娘さんはよ!」といった具合で第一印象はほぼ最悪だったので、この未来は予見できませんでしたね(笑)。


会社経営している家に、貧乏サラリーマンが婿入りしたわけですから、客観的にみると「絵に描いたような逆玉の輿」なのは全く否定しません。自分自身が「俺みたい育ちのもんが婿で大丈夫かいな?」と思っていましたし。

ただ、結婚話が出た時にお父さん(社長)が「こんなに賢くて仕事のできる人が、ホンマにウチみたいな会社の婿に来てくれるん?」と話していたと聞いて、改めて「隣の芝生はいつも青い」のだと実感しました。

お金は別に使えるぐらいあればいいので、最近は「資産とかは爺ちゃんが作って父ちゃんが繋いだ会社なんだからお前さんが継げ。ただし、代表権と負債は全部オレによこせ」と良く話してます。


元々、テラオ株式会社は妻の祖父が靴の補修・メンテナンス用品で起業し、二代目である現社長が自転車グッズを扱うようになり、現在もBtoBでの自転車部品の卸販売が主な商いです。

現在はネットショップでも自転車グッズを中心に販売しているのですが、実は出会った頃は、妻はコルクマットを販売していました。

今でこそ世の中に普及して一般的になったコルクマットですが、妻が販売を始めたころはまだ物珍しく競合もいなかったために、品質の高さもあってキチンと利益を確保しながらある程度ちゃんと売れていたようです。

が。

そこはECの宿命なのかもしれませんが、あっという間により安価で同じような商品が市場に氾濫してレッドオーシャン化して青息吐息。

2011年頃にはピーク時の約80%まで売上が下がってしまいました。

下がった売上をどうにかしようと、元々が社内で扱いのあった自転車の周辺グッズを出品していると、再びこれがヒットして、コルクマット時代を超える売上となりました。

が。

やはり競合他社が次々と参入してきて、どこでも仕入れ可能な「型番商品」であるが故に、さらに激しい価格競争に突入。下がる売上をどうにかしなければいけない!とあれこれと頑張りはするものの、思うようには結果につながらず。

わずか2年前の2014年の夏には、過去最高の年間売り上げを残しながらも、過剰な安売りに加えて広告費と販促費が利益を大きく圧迫している状態でした。

私が加わったのは、まさにそんなタイミングの真っただ中でした。


正直に言えば、まったく自信なし。

そりゃそうです。


田舎である岩手から文化圏も違う都会の大阪へ。

貧乏サラリーマンから権利も責任も大きな経営者サイドへ。

自社オリジナルの日本酒から型番と呼ばれる自転車グッズへ。


覚悟を決めて故郷を出てきたんですから「やる」ことは約束できても、いわば真逆のことを始めるのですから「出来る」かどうかなんて保証できません。

言うなれば「全国的には無名に近かった岩手の日本酒をネット通販でNo.1にした」とか「楽天で何年も連続でショップ・オブ・ザ・イヤーを受賞した」いわば「鳴り物入り」での参加でしたので周囲の期待は「ナンボのもんやねん」という懐疑的な部分はあったとしても、求められる結果は決して小さくはありませんでした。


・・・これで燃えないわけが無いですよね(笑)?

安易な「依存」を断つ。

単純な年間売上額だけなら、この2年間で前職を上回ることが出来ました。

ただ、問題なのはここに出ていない「販促費」でした。

転職して驚いたことは「こんなに売れるもんなんだ!?」「こんなに儲からないものなんだ!?」という事でした(笑)。


「喜ばれるような商品を作って案内すれば、ちゃんと利益を確保して売れる。」

「モール型ECは最低でも粗利が50%が無いと無理。」


そういう商売を当たり前だと思っていた私からすれば、かなり衝撃的な利益構造でしたね。


そこで。


私が加わって、一番最初にしたことは「広告とポイントを止めてみる」ことでした。


ありがちな話ではあるのでしょうが、売り上げ予算を何とか達成するために、ただでさえ価格競争になっていたところに加えて広告とポイントへ依存してしまっている状態だったんです(しんどかっただろうなぁ…)。

これでは忙しいばかりで、キチンと利益を残して再投資できないばかりではなく「本当のお店の実力」が見えません。


これは単に経費を削減する、という話ではありませんよ?広告や販促の費用対効果、つまり「これは使う意味のあるお金なのかないお金なのか」を検証するのが主たる目的です。

あさ開時代は色々と失敗しながら学んだので、日本酒関係の施策であればある程度の判断は付いたのですが、何せ商材もマーケットも違う。


そうなんです。

お風呂の栓が抜けているのに、いくらお湯を注いでもいつまで経っても温かいお湯なんて貯まりません。

そこでまずは蛇口を回してお湯を止めて、風呂桶の底に栓をしてみたんです。


その結果。


グラフを見ていただくとお解りのように、私がキアーロに参加した2014年9月から、その7か月後の2015年2月までの売上はほぼ横ばいむしろ前年を下回っています。

この期間の広告費・ポイント負担は前年と比較して30%以下の金額まで圧縮したので、本来はもっと当然のごとく売り上げは落ちました。

しかし、この後に気が付いたことを少しずつ改善して行ったことで、利益構造は大きく改善。

この厳しい期間をなんとかトントンの状態で収め、2015年3月からの倍増の足掛かりを作りました。


この考え方はかなり大事です。

「でも広告を使わないで売上が落ちたらどうしよう」「ポイントを付けなくなったら去年より売上落ちるんじゃないか?」

その不安な気持ちは良くわかります。

社内で責められる気持ちも、説明しても「言い訳するな」とか言われてムカつく気持ちもよく知っています(笑)。


が、自分で仮説も立てず費用対効果も検証せずに、安易な施策で「社長が、上司が、そう言ったから」と見せかけの売上だけを上げていることは「悪」です。

「それは自分の仕事をサボっていることだよね。」

と最近も仲の良い友人が話していて、グサリと心に刺さりました(笑)。


でも、その通り。

キチンと社内に説明して説得して解らせて、お客さんに求められて喜ばれて、ちゃんと結果を出すのが「プロ」なのだと思います。

そして、私たちはそれで飯を食わせてもらっている以上は、立場に関係なく「プロ」でなければいけません。

じゃないと、お客さんにも選ばれませんし、社内にも、世の中にも必要とされなくなっていくのでしょうね。


自転車の事なんて全然知らなかったけれど、率先して問い合わせの電話を取り、自らが毎日出荷作業もして商品に触りました。

解らないことがあればすぐ教えてもらいに行きました。自分でネットで調べました。

1年もする頃には、メインの商材に関しては、私よりはるかに社歴の長い従業員よりも詳しくなりました。


1年も本気でその仕事をしていて「まだまだ詳しくないので解りません」なんて言っちゃうのは、謙遜でなければ、自分がサボっているだけか本気でやってないだけだ、そう私は思います。


大阪に来てちょうど2年。

自転車グッズのキアーロの直近1年間の売上は、2年前との単純比較でも240%になり、同時に営業利益も大きく改善されました。

こんな書き方をすると、物凄い結果を残したように聞こえるかもしれませんが、本当にそんなことはありません。数字が良くなっただけ。


私がやったことと言えば「余所者の視座」を持ち込んで、その差分を活かしただけのことで、残念ながらまだその「次のステージ」の入り口すら見つけられてない程度のもんです。

でも、それだけでも随分と数字的には楽になりました。やっぱり「今日の晩ごはん」が食べられないと、本気で「未来の夢」を追うことも出来ませんから。


ただ「所詮は価格競争だから、ウチは大手には勝てない」と思っている方には、きっと私のこの2年間の歩みはかなり参考にして頂けるのではないかと思います。


私が転職して自転車グッズを扱うようになり、前職の日本酒屋時代と比較した際に、あまりに大きく違っていて驚いた点がいくつもありました。


実際に「何に気が付いて何をしたか?」を今回から具体例を挙げてお話しいたします。

同じ商品だから「安くなければ売れない」は本当?


「所詮は他店で同じ商品を打っている型番」=「価格が安くなければ売れない」

確かに価格は非常に大きなファクターですが、実はそこだけにしているのは自分自身だったりしませんか?


「どこで買っても同じ商品が届く型番商品は、結局は価格競争だよ。」

「型番はオリジナル商材よりもシビア。甘くないよ。」


転職にあたって、そんな話もたくさん聞きました。


「あー、そんなの俺に出来るのかな?楽しくなさそうだし、向いてなかったらどうしよう?」


そう思いながらも、まずはやってみないと何もわかるまい、と仕事を始めて、いきなりビックリしました。


「こちらが何もしなくても、お客さんが勝手に探して買いに来てくれる!?」


これはもう本当に驚きでした。

新しい企画が無くてもメルマガを書かなくても、検索からお客さんがお店に来て買いものをしてくれる。

地方の無名な日本酒を打っている頃にはあり得ないことでした。





だからなのか!


元々の型番屋さんが読んだら気を悪くするかもしれませんが、私の眼には「価値伝達をサボり過ぎ」ているように映りました。

そりゃそうです。

お客さんが検索経由で入ってくるもんだから、他店と同じ売れている商品を、価格を下げて配送を早くして選ばれるようにして、なるべく手間をかけずに何商品も登録した方が効率的なんですよね。

・・・これならイケるかもしれない。

そう思いました。


そして気が付いたのですが、これは「(他のお店でも同じ商品を売っている)型番商材」と思っているのは他ならぬ自分たちだけ。

家電やオートパーツのような本当にシビアな型番とは決定的に違っていたことがありました。

お客さんって「商品の型番で検索していない」んですよね。


例えばキアーロだけじゃなく他店さんでも販売しているこの自転車用の後ろチャイルドシート。

OGK技研 RBC-016DX
http://item.rakuten.co.jp/dandelion/01004451/

楽天市場内だけでも50店ほどが販売しています。


最安値のお店と当店の販売価格には2,500円以上の差があります。

普通に考えて、キアーロで買われる理由はほぼありません。


ただ。

この商品名(型番)で検索するのは、他がいくらで販売しているかを調べたい同業者がほとんどです。


実はこの商品はかなり特殊な位置付けの商品で、かなり高額な部類です。

通常の後ろ用のチャイルドシートは法的にも2歳以上のお子さんからしか乗せられません。

1歳からのお子さんは前用のチャイルドシートじゃないと乗せられないのです。


同じメーカー、同じ1歳を乗せられるチャイルドシート。

ですが、前用は3,000円~10,000円前後なのに、後ろ用はこれだけしかないとはいえ20,000円ほどします。

しかも3歳までしか乗せられないので、使える期間はかなり短いんです。


普通に考えると「誰がわざわざ買うんだろう?」と思われるかもしれません。


でも、両方に1歳~3歳のお子さんを乗せなければいけない、双子や年子のお子さんを持つ親御さんにとっては、仕事のために大きめの荷物を持ち歩かなければいけない親御さんにとっては、本当に「こんなのがずっと欲しかった!」という救世主のような商品です。

それなのに、ちゃんとお客さんが検索するであろう「自転車 チャイルドシート 双子」のワードで検索結果に出てくるのは…

当店、自転車グッズのキアーロだけです。


また検索結果に表示されるサムネイル画像に「1歳から使える」ことをキチンと明記してるのは、当店の他には一社さんだけ。

後はメーカーさんのHPなどからキャプチャした「同じ商品画像」がズラーッと並んでいます。


私の眼には「安い店でしか売れない型番商材」であるとはとても見えませんでした。

「あなたが探している商品は私が取り扱っています。」

そうお客さんに伝えなければいけないことを、ほとんどのお店がサボっていて「一番安くないと売れない」と言い訳しているようにしか見えないんです。


20歳代~30歳代のインターネットにそこまで詳しくないお母さん。

きっと自宅でのパソコン所有率も高くなくて(或いは使えなくて)、お買いものはスマホからなのでしょう。

自分が探しているかわいい双子のためのチャイルドシートをどんな言葉で探すんだろう?


それすら想像しないでいるお店さんがほとんど。


売れない日本酒を「どんな理由があれば選んでもらえるんだろう?」と必死で10年販売してきた私の眼には、失礼ですがこの部分に関して言えば「ぬるいな。」と映りました。



幸いにも。

キアーロは家内が(仕方がなく)薄利で頑張りつつ(笑)、でもちゃんと良い接客をしてくれていたおかげで、レビューの内容や数値はかなり良い状態でした。


後は「ちゃんとお客さんと商品をマッチングする」だけでも劇的に変わってくる!

そう気が付いた瞬間に「やれるかもしれない」と思いました。

これは「型番商材」じゃなくて「検索商材」だったんです。

次回予告

売上の話ばかりしていますが、実は「商品とお客さんのマッチングが大切」と気が付いてから、一番上がったのはアクセス数とCVR(転換率)です。

考えても見れば当然。

どんなに安くても、検索の上位に来ていても、「自分が欲しくないものは買わない」んですよ。

検索商材なんですから。


そこをきちんとマッチング出来れば、検索順位や売上なんて放っておいても上がるもんだと思っています。

大切なのは「(それを探している)お客さんに」「きちんと“あなたがお探しの商品はこれですよ”」と価値を伝えることだけではないでしょうか?

何の事はない。

型番だオリジナルだと勝手に区分けしているのはこっち側で、日本酒と自転車のチャイルドシートに大きな差なんてなかったのかもしれません。



自分自身を振り返ってみても「お店の外の人の目線」ってすごく大事なんですよね。

だって、お客さんだってそうなんですから(笑)。


次回も引き続き「元日本酒屋さんが見た、ここがヘンだよ自転車業界」の差分を埋めることで何が変わったのか?のお話を具体的にさせて頂きます。


完全にメシの種をフルオープンにすることで、真似されるの何て承知の上。むしろ真似されてこの方法論で自分が売れなくなるようになって欲しいとさえ思っています。

もう私は「次」を必死で探さないといけなくなりますからね。


いよいよこの連載も残り2回となりました。

最後まで手を抜かずに全霊で書き上げますので、ぜひぜひ「いいね!」&シェアお願いいたします!


次回は9月16日の更新予定です。


著者

佐々木 伸一 (sasaki shinichi)

1972年11月1日岩手県大船渡市生まれ。2004年に前職の岩手の日本酒蔵「あさ開」で、PCの知識ゼロのバイト上りの平社員からEC事業を立ち上げ、楽天ショップオブザイヤーを通算6度受賞する人気ショップに。2014年結婚を機に退職し、大阪で自転車グッズの卸売業を営む妻の実家に婿入り。現職のEC部取締役マネージャー。運営する自転車グッズのキアーロは前年比200%超で売上げ推移。

自転車グッズのキアーロ
http://www.rakuten.ne.jp/gold/dandelion/

あさびらき十一代目源三屋
http://www.rakuten.ne.jp/gold/asabiraki/