【第1回】オムニチャネル時代で変わるコンタクトセンターの役割

飯山 奈穂

ヤマトコンタクトサービス

ヤマトグループでコンタクトセンター事業を担う「ヤマトコンタクトサービス株式会社」は宅急便の集荷・再配達の受付対応だけと思われていますが、実は業務量の比率では8:2でグループ外の企業からの業務委託が多いのです。2003年の設立以降、流通、メーカー、自治体、生産者、通販・ECなど業種・規模を問わず日本国内の多くの企業様のコンタクトセンターを担っています。

スマホやメッセンジャーの普及に伴い、人による受電業務が中心だったコンタクトセンターの役割が今、大きな変化を迎えています。また、音声認識やテキストマイニングなど技術面の進化が「真に顧客の声を聴く」ことを可能とし、イノベーションの種となっています。

従来の「コストセンター」という先入観を捨て、コンタクトセンターを活用いただくために。
連載全6回の初回は、「オムニチャネル時代で変わるコンタクトセンターの役割」についてお話します。

オムニチャネル時代の顧客行動

ECの黎明期、チャネルの違いは「好み」の違いでした。ネットリテラシーが高くネット好きの顧客は何でもネットでするのが好き、ネットは不安と警戒する顧客は電話や実店舗が好き―。しかしながら今現在は、ひとりの顧客がすべてのチャネルを自分の都合で使い分けています。通勤時間にネットで調べて絞込みをし、週末に店頭で現物確認、帰宅後にネットで購入。そのように状況と都合によってあらゆるチャネルを自在に駆使する顧客が性別や年齢を越えて存在しています。

問合せや確認や相談が、電話以外のチャネルでも出来るようになると、コンタクトセンターはお役御免と思われがちですが、実は電話の「難易度」が高まり「対応時間」は増える傾向にあります。Webで調べた、アプリで手続きした、チャットボットで相談した、メールで予約した、店頭で教えてもらった―その結果、満足しなかった、やりたいことが出来なかった場合の最終受け口がコンタクトセンターになっているのです。その場合の顧客要望は「謝ってほしいわけではなくやりたいことを成し遂げたい」ですから、原因を追究し、その人の感情に寄添い、リテラシーや要望に合わせ最適な解決方法に導かねばなりません。

少し前に話題になった、AIに代用される職業にコンタクトセンターのオペレータが挙げられていました。誰が聞いても同じ答えでよいもの単純な回答で済むものは機械化やAI化が進み、その先のカスタムメイドな対応は人力として役割分担がされるのが実際でしょう。

実際に、Webやアプリが多機能になったがゆえに電話の本数が増加した、という案件が当社案件にもあります。顧客行動の変化が、コンタクトセンターに求められる役割を高度なものとしているのです。

図1:オムニチャネル時代の顧客行動        図2:コンタクトセンターの位置づけ

コンタクトセンターに今、期待すべき役割

企業がもつ顧客接点の不備・不具合を経験したお客様の声が、コンタクトセンターに集約されるようになりました。従来の電話受発信の処理業務がメインであったコンタクトセンターの役割は現在、大きく2つに発展しています。

新・役割① 顧客を真の解決に導く
顧客接点のどこかで発生したマイナス体験をした顧客の想いを受け止め、ひとりひとりに最適な解決手段に導く役目を担います。顧客接点が多様化した企業、接点のCXに課題を抱える企業はCXのリカバリー策をコンタクトセンターと協力して取り組むべきです。

新・役割② 顧客接点リ・デザインのエンジン
マイナスCXの根本解決はCXにおける課題そのものを取り除くこと。発生してしまったマイナスCXを収集し、原因を明らかにし、改善する。そのために必要な顧客の声(=Voice Of Customer)を社内にフィードバックする役割をコンタクトセンターが担うのです。

顧客の声(=Voice Of Customer)活用時代の到来

「顧客の声を聞け」。昔から経営者なら誰でも1回は言うセリフでしたが、企業活動において顧客の声を聞き企業活動に活かせてこなかった原因は何でしょう。企業活動とは一般に「数値に基づき」行われるものです。売上、価格、人件費。KPIやKGIといった指標も基本的には数値で示されるものです。

一方、VOCはコンタクトセンターで要約されたものが記録されることはあってもそれ自体が数値化されることはほとんどありませんでした。一日あたりの受電本数、いくつかのカテゴリに分類された統計はあっても、VOC自体は数値化されない情報、つまり企業活動で活用できない状況だったのです。しかしながら現在、コンタクトセンターをとりまく技術の進歩でVOCの数値化が可能となりました。ビッグデータとしてVOCの全量数値化が可能となり、他のデータとの統合分析・活用が可能となっています。

図3:VOCを取り巻く状況の変化

とくにECはさまざまなデータを収集・分析が進んでいます。購買データ、購入者データ、アクセスログや広告とLPのCVRなど「やったこと」がわかるデータが多数ありますが、「やらなかった理由」がわかるのはVOCだけといえるのではないでしょうか。VOCをほかのデータと統合分析することで見えてくる事柄が増えるでしょう。

また、VOCの全量数値化がもたらす効能として、オペレータの要約過程でヌケモレしがちな「少ない声」の抽出が挙げられます。改善課題は多数の声に基づきますが、イノベーションの種は藁山の針に似て少数の意見に隠れているものですから。

良質なVOCの獲得には、個に寄り添う応対

以前に記事で取り上げられたヤマトコンタクトサービスが大事にしている「個に寄り添う応対」(ファンを作る電話応対とは?コールセンターを代行するヤマトコンタクトサービスの現場に潜入!https://www.ecnomikata.com/original_news/12515/)は、顧客満足度向上・ロイヤルカスタマー育成に直結する当社独自の応対品質のスキームですが、別の見方として「良質なVOC=真に価値あるVOCの獲得」に欠かせないものだといえます。

マーケティングや商品開発、ロイヤルカスタマー育成にVOCを活用したいとして、そのVOCを分析に必要充分な量・質で収集するには、VOCがまさに生まれる現場のオペレータ応対品質が重要ということです。顧客の感情に寄添い不満や要望を深堀し、何がその人にとって最適な解決策なのかを明示する。VOCの価値は応対そのものの質に左右されると言ってよいでしょう。旧来の効率化を重視したテンプレートの応対スクリプトでは、ニーズの掘り起こしは不十分で、実際に当社で分析を行った際に応対品質が悪いVOCでは必要な顧客ニーズがほとんど抽出できなかった、という経験があります。

VOCの展開として、マーケティングデータ以外にはAIの教師データへの活用があります。機械学習でAIが学習するもととなるデータをVOCから創り上げるのです。ここでもやはりVOCの質自体が教師データの質に直結します。

ヤマトコンタクトサービスの「個に寄り添う応対」は、新しいコンタクトセンターの役割を果たすうえでも重要な要素なのです。

カスタマーサポートをあきらめない

EC事業はやることが多く、売上に直結する商品や販促や出荷に予算とリソースは割けてもカスタマーサポートは充分にできていない、本当は大事だとわかっているけどあきらめている、という担当者さまが多いようです。繁閑の差が大きい専門店型のショップオーナーさまで、一番の繁忙期は問合せ対応要員を出荷要員に充てるため、電話回線をストップしている、という方がいました。

売上が一定規模成長すると、販促施策による新規顧客獲得が鈍化してくる時期が来ます。新規獲得が焼畑農業的になり、カスタマーサポートで顧客の離脱防止や定着を並行して進めなければ次の売上規模ステージに上がれない。担当者としてはわかっていても、会社を説得して予算やリソースを確保するのが困難で、仮にコンタクトセンターにアウトソーシングできたけれども、一次受けで結局エスカレーションが戻ってきて現場の負荷は変わらなかった、という悩み抱えるEC事業者さまは多いのではないでしょうか。

EC事業者さまがカスタマーサポートをあきらめずに済むソリューションを、ヤマトコンタクトサービスは提供していかねばならないと考えています。


さて、本コラムは全6回連載で、EC事業者さま企業のEC担当者さまに向け、従来の「コストセンター」という先入観を捨て、コンタクトセンターを活用いただくために、コンタクト業界で起きている事柄やヤマトコンタクトサービスの取組みについてご紹介してまいります。初回はプロローグとしてダイジェストでご紹介した内容を、次回から5回にわたり詳しくご紹介します。

著者

飯山 奈穂 (Nao Iiyama)

ヤマトコンタクトサービス株式会社 CRM戦略部長

情報デザイン・工業製品のインタフェースデザインを経て、インターネットの黎明期から十数年にわたりweb・ITのコンサルタントとして、総合通販、航空券やホテル予約、証券・保険など多様なサービスのネット化・新規ネット事業立上げ・webブランディングに携わる。国内小売チェーンの事業責任者としてネット事業を立上げ、その後CRMコンサルタントを経て、2016年より現職。VOC(Voice Of Customer)を活用したオムニチャネル時代のCRMを担う。

コーポレートサイト:http://www.y-cs.co.jp/

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