“令和”の時代を生き抜くための「データ」との正しい付き合い方

前川 剛

平成が終わり、“令和”の時代が始まる。平成は紛れもなくIT革命の時代であった。

飛躍的な技術の進化により、人々が当たり前のようにスマートフォンを使い、いつでも・どこでも・誰とでも会話ができる、そんな世の中が実現している。

今となっては当たり前だが、昭和の終わりに誰がこんな世界を想像していただろうか。“令和”の時代においても同様のことが起きることは容易に想像できる。AIを始めとした技術革新は今もなお、我々が想像している以上のスピードで進んでいる。

今回は、そうした進化が止まらない世の中において、いかに「人間」が価値を創出していくのかという視点で具体的な手法も交えながらお伝えしていきたい。

「データ」という言葉の定義

「データ」という言葉の定義

インターネットで調べてみると、「データ」には2つの意味がある。

1つ目は「物事の推論の基礎となる事実。また、参考となる資料・情報。」であり、2つ目は「コンピューターで、プログラムを使った処理の対象となる記号化・数字化された資料。」とのことであった。現代では「ビッグデータ」などの言葉に代表されるように、「データ」=「記号・数値化されたもの」という印象が強いかもしれない。ただ、今回のコラムでは1つ目の「物事の推論の基礎となる事実」という意味に注目しながら進めていきたい。

参考:デジタル大辞泉

データ(数値)化がもたらすメリット・デメリット

データ(数値)化がもたらすメリット・デメリット

今となっては、データは我々の生活に欠かせない。多くの物事がデータ(数値)化されるようになり、それをもとに客観的な判断をすることができるようになった。これは紛れもなくデータ化のメリットである。

例えば天気予報。今から300年以上前、明日の天気がどうなるかなんて人々の感覚、つまりは主観的にしか判断できなかった。しかし現代では、圧倒的な量の過去のデータに基づいた降水確率が算出され、家を出るときに傘を持って行くか行かないかという判断を客観的に行えるようになっている。

しかし逆の視点で考えると、精度の高い天気予報が確立したことにより、空の色や鳥の動きなどから明日の天気を予測しなくなった。当たり前の話であるが、予想する必要が無いからである。言い方を変えると、天気予報がデータ化されたことによって、自分たちで考えることをやめたのである。これこそ、データ化のメリットの裏側に潜んでいる最大のデメリットである。

「データ」活用による思考停止の危険性

「データ」活用による思考停止の危険性

私の働くEC業界でもデータが思考停止を促し、データの活用そのものが目的となってしまっているケースがある。

例えば、「性別」「年齢」「居住地」「購買履歴」などの様々な会員データを所有している企業が、その膨大なデータを活用することを目的とし、100人中の1人に対して最適化された広告を配信できる機能を開発したとする。しかし、このようなマーケティング手法では、短期的には成果を出すことはできても、アプローチできる層がすぐに底をつくため、継続的に効果を出し続けることは難しい。あくまでも事業主が求めているものは、費用対効果の改善と、継続的な売上の拡大である。

データの活用を目的とせず、データをもとに常に思考し続けなければならないのである。

費用対効果を【9.2倍】上げるIDEAを生み出すための仕組み

手前味噌で恐縮だが、担当クライアントで実施した【A/Bテスト】で、費用対効果を【9.2倍】に上げることができた。この結果の裏には、弊社が取り組んでいる全社員が常に思考を巡らせるための仕組みが隠されている。今回は特別にその仕組みを共有したいと思う。

➀自分宛てにIDEAメールを送る

マーケティングの本質、それは消費者の心理を想像し続けることである。

ただ、IDEAはデスクに座ってひたすらネットサーフィンをしていても思いつかない。画期的なIDEAは、消費者として過ごす日常生活の中に眠っている。そこに気づけるか気づけないかは、常にアンテナを張っているかいないかの差でしかない。弊社では、そういった日常生活の中で思いついたIDEAをその場で、自分宛てにメールするという取り組みを全社員で行っている。これにより、1人1人が常に思考しながら生活するという習慣がついているのである。

②チームでIDEAブレスト会議

先ほどの自分宛のメールで集まったIDEAも、送るだけでは宝の持ち腐れになってしまう。あくまでもそのIDEAを誰かにアウトプットして初めてカタチを成していく。

アウトプットする場として、部署や役職などの壁を超えてチームを編成しており、定期的にチームごとでIDEAブレスト会議を実施している。各人IDEAを持ち寄り、チーム全員で1つずつIDEAの精査・ブラッシュアップを行うのである。

③全社員でA/BテストIDEA大会

チーム単位で集めたIDEAを、ここからさらにふるいにかけていく。月に1回、全社員を集めてチーム対抗A/BテストIDEA大会を実施している。全社員の前でIDEAを提案していくのである。

すべてのIDEAを1つずつ“費用対効果が改善するか否か”という観点で評価し、点数を投じていく。全社員が投票した結果をランキング形式で発表し、上位5位に入ったIDEAを中心にクライアントに提案する流れになっている。

この取り組みによって、自分のIDEAが実際にクライアントの費用対効果を改善することの喜びを実感でき、全社員がアンテナを張りながら生活することが当たり前になってくる。

そうした日常のふとした思いつきが、予想以上の結果を出すことにつながるのである。この思考は、データだけではできない領域なのである。

“令和”の時代を生き抜くためには

これからもIT技術の進化は止まらない。ただ、その裏で人間が退化しているかもしれないという危機感を持つことが重要である。いつの間にか何も考えなくても生活できる世界がすぐそこまで来ている。 “令和”の時代においては、物事の本質・目的を正しく理解した上で、決して「データ」に依存するのではなく、うまく活用しながら、自分の頭で考えることが最も重要なことではないかと私は考えている。

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著者

前川 剛 (Go Maekawa)

“最高の準備”を徹底し、“最高の成果”を出す

1991年福岡生まれ福岡育ち。西南学院大学経済学部卒業後、株式会社売れるネット広告社に入社。入社以降は、新規営業・コンサルティングの立場でクライアントと向き合う業務をメインとして行っている。自ら提案した新施策で、某化粧品会社の費用対効果(ROAS)を“9.2倍”上げた実績を持つ。現在ではコンサルティング部最高責任者を務めている。
趣味は、映画、ラジオ、HIPHOP。座右の銘は、「剛毅果断」

通販エキスパート検定1級(通販マネジメント編)取得。
売れるネット広告社2014年度下期「新人賞」。
2016年度上期、2018年度上期「MVP賞」受賞。
DirectKyushu2019(旧アドテック九州)公式スピーカー。


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