利用規約、きちんと作れていますか?弁護士がポイントを徹底解説②

大形 航

ECを始める際に必要になるのが、WEBページなどに置く利用規約です。大形航弁護士に聞く「利用規約、きちんと作れていますか?弁護士がポイントを徹底解説」の第二弾は、禁止事項や違反行為へのペナルティといった、トラブルが起きた際の対応などについて説明します。

(6)禁止事項

悪質なECサービスの利用者等により、サービスの提供に支障が生じたり、第三者への権利侵害がなされるといった場合も考えられます。そのような場合に事業者側が適切に対応できるよう、禁止事項は予め定めておくことが有効であると考えられます。
禁止事項は、それぞれのサービス内容に応じて、網羅的に規定するのが望ましいところですが、一般的には以下のような項目が考えられます。

・法令違反行為
・他者に対する権利侵害行為
・暴力表現・わいせつ表現・名誉侵害表現等
・営業活動・政治活動・宗教活動を目的とする行為
・大量発注、転売目的での発注等
・リバースエンジニアリング(ソフトウェアやプログラム等を分析し、技術情報を入手する行為)等の解析行為
・システムに支障を及ぼす行為
・他者へのなりすまし行為
・虚偽の情報の登録
・クレジットカードの不正利用
・その他事業主が不適当と判断した行為

最後の「その他事業主が不適当と判断した行為」は、いわゆるバスケット条項と呼ばれ、訴訟になった場合には、義務の特定が不充分で消費者の利益を一方的に害する等の理由で効力が否定される可能性も否定はできません(前編3(5)参照)。

もっとも、想定外の問題に対処する際に、事業者側の対応の正当性を裏付けるために、このような包括的な条項を設けることも考えられます。

(7) 違反行為へのペナルティ

禁止事項を定めたら、次いで禁止事項に違反した利用者に対する対応を定めることになります。考え得る措置としては、①サービスの利用申込みの拒絶事由とする、②会員資格の一時停止・アカウントの凍結等の対象とする、③投稿等の削除・非公開の対象とする、④契約の解除事由・会員資格の抹消事由とする、⑤違約金・損害賠償等の対象とする、といったことが考えられます。

違反行為に対する対応については、サービスの内容に応じて柔軟に使い分け、ある程度は段階的に使い分けて対応することが望ましいと思います。軽微な違反行為に対して、いきなり会員資格を抹消したり、高額な違約金を設ける等、禁止行為の程度と利用者に生じる不利益にミスマッチが生じる場合は、消費者の利益を一方的に害する条項として無効とされる可能性がある点はご注意下さい(前編(5)参照)。

(8) 権利侵害行為への対応

ECサービスにおいて利用者からの投稿を認める場合には、第三者の知的財産権を侵害したり、名誉毀損に該当する発言がなされるといったことも考えられます。

このような権利侵害情報について、事業者が当該権利侵害情報を放置した場合には、侵害を受けた第三者に対して事業者が不法行為責任(民法709条、719条)を負う可能性があります(但し、事業者は、①権利侵害情報の不特定者に対する送信の防止が技術的に可能であり、かつ、②第三者の権利侵害を知っていたこと、又は、情報の流通を認識しかつ第三者の権利侵害を知ることができたと認められること、という2つの要件を満たす場合を除き損害賠償の責任を負わないとされています(プロバイダ責任制限法3条1項)。)。

そのため、権利侵害に該当する投稿等は速やかに削除できるよう、上記(7)③に掲げたように、利用規約においても規定を設けた上で、仮に当該投稿が権利侵害に該当しなかった場合には、これを復元できる体制を整えておくといったことも考えられます。

なお、虚偽や勘違いにより、特定の投稿が権利侵害にあたるといった通報がなされ、当該通報に基づき事業者側が投稿を削除したような場合でも、①第三者の権利が不当に侵害されていると信じるに足りる相当の理由があり、かつ、②情報の発信者に対して、送信防止措置に同意するか照会し、7日以内に同意しない旨の申し出がなかった場合には、事業者は、対発信者との関係でも免責されることとなっております(プロバイダ責任制限法3条2項)。

(9) 自動更新・解約権の制限

利用者から毎月料金の支払いを受け、定期的にサービスを提供するような場合には、一定の契約期間を定めた上で、利用者から更新拒絶がなされない限りは契約を自動更新するといった条項を設ける場合もあります。

ここで、消費者の不作為をもって契約の申込みをしたとみなす条項で、消費者の利益を一方的に害するものは無効とされています(消費者契約法10条)。自動更新条項は、場合によっては消費者にとっても更新手続を行う手間を省略することができるという点で、必ずしも消費者の利益を害するものではありません。

しかしながら、事後に無効主張がなされることのないよう、契約の申込み時点で、自動更新である旨は明確に説明し、利用者からの同意を得ることが大切です。なお、通信販売において自動更新条項を設ける場合は、別途の規制により金額、契約期間その他の販売条件を明記することが求められています(特定商取引法11条5号、同規則8条7号)。

また、消費者による中途解約につき違約金を定める場合において、同種の消費者契約の解除において事業者に生じる平均的な損害を超える部分は無効とされており(消費者契約法9条1号)、違約金の定めを設ける場合は、平均的な損害はどの程度かを意識した方が良いかと思います。

(10) ID及びパスワードの管理

ECサービスにおいては、IDやパスワードにより顧客を管理する場合が多いですが、第三者によるなりすましのリスクを事業者側で防ぐことには限界もあろうかと思います。そこで、利用規約においては、なりすましへの対策として、原則的にサービスの利用を利用者本人に限定した上で、利用者に対して、IDやパスワードの管理義務を課すことが考えられます。

事業者側においても、IDやパスワード等の情報が漏洩しないよう注意をすべきことは当然ですが、仮にこれらの情報の漏洩が疑われる場合に、顧客保護のためにアカウントを凍結するといった権限を事業者側に認めることも考えられます(その他に、利用者の個人情報の取扱いに関するプライバシーポリシーの定めについては、別の機会に解説します)。

(11) 準拠法・管轄裁判所

ECサービスにおいては、日本国内の居住者のみならず、海外居住者が利用者になる場合もあるかと思います。事業者と消費者との契約において、準拠法(国際的な法律関係が問題となる場合に適用される法律)の指定がない場合は、原則的には消費者の常居住地法が準拠法となるとされており(法の適用に関する通則法11条5項)、準拠法は日本法とする旨は明記した方が良いでしょう。

また、財産権に関する訴えについては、「義務履行地」を管轄する裁判所に提起することが認められているところ、顧客が自らの居所を義務履行地として、事業者からすると遠方で訴訟が提起される可能性もあります。

サービスに関連して何か問題が発生した場合において、全国各地で訴訟が提起されるといった事態を回避するためにも、専属的合意管轄(当事者の合意により、特定の裁判所にのみ管轄を認めること)として、事業者の所在地等のアクセスが良い裁判所を指定することが望ましいと考えられます(但し、事案によっては、専属的合意管轄が定められている場合でも、別の裁判所に事件が移送されたり、専属的合意管轄を主張することが信義則上制限されるといった可能性もある点には注意が必要です)。

(12) 利用規約の改訂に関する手続

利用規約は、民法上は「定型約款」に位置付けられるところ、定型約款変更にあたっては、実体的な要件として、①定型約款の変更が相手方の一般の利益に適合すること、又は契約の目的に反せず、変更に係る事情に照らし合理的であることが求められます(民法548条の4第1項)。

また、手続的な要件として②効力発生時期を定めた上で、変更を行う旨とその内容を周知することが必要とされています(同2項)。

サービスの内容や利用料金等の重要な要素を変更する場合は、①の要件を満たさないと判断される可能性もある点には注意が必要となります。

また、②について、利用規約そのものにおいて、規約変更の手続に関する条項を明記することは必須ではありませんが、利用規約が変更される場合や、周知期間や周知方法については、具体的な規定を設けて利用者の予測可能性を高めた方が、利用規約変更の合理性・適法性は認められやすくなると考えられ、改正民法の立案担当者も同様の見解を示しています。そのため、利用規約の改定に関する手続は事前に検討し、明記しておくことをお勧めします。

おわりに

前編・後編に分けて、利用規約の作成にあたっての重要なポイントについて解説をさせて頂きました。

利用規約は、何かトラブルや問題が発生した場合に、事業者や利用者を守る根拠となり得ますし、利用規約の内容について検討を行うこと自体が、各問題点毎の事業者側の対応を検討する契機として、サービスの制度設計を考える上でも有用だと思います。

本稿が、皆さんがそれぞれのサービスの内容に合致した利用規約をご検討頂くにあたって、少しでもご参考になれば幸いです。


著者

大形 航 (Wataru Okata)

都内の法律事務所に所属し、一般企業法務、事業再生・倒産、M&A、訴訟等を主な業務分野としている。2017年弁護士登録(東京弁護士会所属)。
※本稿での意見にわたる部分は筆者の個人的な見解であり、筆者が所属する法律事務所・団体の見解ではないことにご留意ください。