いまさら聞けない「ITP」とは?~ネット広告に携わるマーケター必見!

小松 理美

みなさんこんにちは。『売れるネット広告社』メディア部の小松 理美(こまつ さとみ)です。

ネット広告に携わるマーケターの皆様は日々、広告を出稿したメディアの効果を検証したり、ユーザーが何に興味を持っていてどのような記事を閲覧しているかを確認したりと、さまざまな形で広告の効果測定を行っていることと思います。

数年前から「ITP」という言葉を耳にするようになり、「ITPの影響を受けて正確なトラッキングに支障が生じている」といった会話をしたことはないでしょうか。

PDCAを回し広告効果を最大化するにあたって、ITPは私たちにダイレクトに影響を及ぼします。ネット広告業界にいる以上、ITPがどんなものかは今一度正しく理解しておきたいものです。

・用語は聞いたことはあるけれど、詳しく知らない
・一度は調べてみたけどよくわからずに挫折した
・どんな仕組みかよくわからない
・そもそもITPって何?

今回はそんな方に向けてITPとは何かをご説明します。

「ITP」とは?

「ITP」とは?

そもそも「ITP」とは「Intelligent Tracking Prevention」の略称で、Apple社が提供するSafariブラウザにおいてCookieを規制し、トラッキング(追跡)を防止する機能です。

いきなり横文字が多く出てきましたが、簡単に言うと「ユーザーの興味・関心をもとにした広告の表示に制限をかけますよ」というものです。

よく「ITPはスマホデバイスが対象でしょ?」と思われる方も多いのですが、iPhoneやiPad、MacなどのApple製品のブラウザである「Safari」を使用しているユーザーが対象となります。

ITPは、Apple社がユーザーのプライバシー保護を目的に2017年から搭載しました。一方で、ウェブマーケティング業界はCookieをもとにした計測ツールを活用しているため、広告ターゲティングの精度の低下や、コンバージョンの計測などにも大きな影響を及ぼしています。

「Cookie」とは?

「Cookie」とは?

次に、「Cookie」とは、Webサイトを閲覧した際にブラウザに保存される情報のことです。

このCookieを保持することで、

・1度ログインしたサイトは2回目以降のログインを省略できる
・フォーム入力を行うとき、メールアドレスの候補を表示させる
・カートに入れた商品が、画面を離脱してもカートの中に保持される

などさまざまなメリットがあります。

また、Cookieには「いつ、何回どのようなサイトを訪れたか」などの情報が記録されているため、トラッキング(追跡)によってユーザーの動向を把握することができます。

例えば「サイトAで商品を見た後、まったく関係のないサイトBでその商品が広告として表示された」といった経験はないでしょうか。

Cookieを活用し、ユーザーがいつどのようなサイトを見て、何に興味関心があるのかを把握することで、効果的に広告を表示させることが可能になるのです。

そして、このトラッキングを活用したのが、私たちが普段使っている計測ツールや広告のターゲティングです。企業側もこの仕組みを活用して継続的にユーザーの行動データを収集し、広告最適化や自社のマーケティングに役立てることが可能となっています。

ITPの仕組みとWeb業界への影響とは?

ITPの仕組みとWeb業界への影響とは?

Cookieには「ファーストパーティCookie」と「サードパーティCookie」の2種類があり、「どのドメインがCookieを発行するか」という点に違いがあります。

・ファーストパーティCookie
ユーザーが実際に訪れているWebサイトのドメインから直接発行されているCookieのこと。

・サードパーティCookie
ユーザーが訪れているWebサイト以外のドメイン(第三者ドメイン)から発行されているCookieのこと。

例えば、とある「ブログA」を閲覧していた場合、ブログAから発行されたCookieは「ファーストパーティ」、Google広告など外部から発行されたCookieは「サードパーティ」となります。

Apple社のITP対応はver1.0のサードパーティCookieの有効期間の制限から始まります。そして、徐々にバージョンのアップデートを行い、2020年にはサードパーティCookieそのものを制限するに至りました。

並行して、ファーストパーティCookieにおける有効期間の制限が行われる中、各ツールがCookieの代替策としておこなったlocalstorageにも対策を打つことで、ファーストパーティCookieの活用にも一部で制限をかけています。

ITP1.0〜ITP2.3とアップデートを重ねてきた歴史がありますが、iOS自体のバージョンアップによってjavascriptで発行された場合はファーストパーティCookieも24時間の規制がかかるようになりました。

このようにCookieに制限がかかると、マーケティングツールである効果測定にも影響が発生します。

特に、Google広告やYahoo!広告などをはじめとする運用型広告においては、サードパーテーCookieを活用したリターゲティング広告はダイレクトに影響を受けています。

その他にもターゲティング広告や、さまざまな計測ツールで正しいトラッキングが取れなくなるといった影響が生じるようになりました。

なぜCookieに制限をかけるのか?Cookieが個人情報に関連する?

なぜCookieに制限をかけるのか?Cookieが個人情報に関連する?

ウェブサイトを巡回する上では非常に便利な機能であることをお伝えしましたが、一方でCookieはさまざまな情報を保持しているため、その取扱いが注視されるようになりました。

通常、Cookieは個人を特定することはできないため、個人情報には該当しないとされています。ですが、取り扱い方によっては個人情報保護法の規制対象になるため注意が必要です。

例えば、サイトを訪問すると「Cookieの取得と同意をお願いします」という文言を一度は見たことがあるのではないでしょうか。Cookieを発行したサイト側にも情報は残るため、仮にほかの個人情報データとCookie情報を突合させることで個人が特定できるのであれば、個人情報保護の対象になります。

実際に、大手就職支援会社ではCookieを活用した学生のプライバシーをクライアント企業に提供していたことが問題になり、話題になった事例もあります。

このように、Cookieには個人情報が含まれる可能性があることを私たちも理解しておく必要があります。

欧州ではプライバシー保護の意識が高く、いち早くITP対応としてApple社が乗り出しましたが、Googleなどもこれに追従する動きを見せています。

ITPの影響範囲〜スマホのシェア比較について〜

ここまでITPの仕組みについてお伝えしてきましたが、ITPの影響を受けるSafariを使用しているユーザーは国内にどれくらいいるのでしょうか。

周りの人が使っているスマホデバイスを見ると、格安スマホのブームは来ているものの、iPhoneを使用している方がまだまだ多い印象を受けませんか?

実際に活用されているブラウザのデータを見てみると下図の通り、日本国内における2022年11月時点でSafariの使用率は全体の約60%を占めているのです。

※StatCounter(https://gs.statcounter.com/)のデータをもとにグラフ作成

予想通りではありますが、日本ではiPhoneのシェアが非常に高いため、ウェブマーケティングにおいて、このITPの影響を受ける割合は決して見過ごせません。

一方、全世界のシェアもデータが出ているため補足します。日本では圧勝しているiPhoneですが、海外だと逆転しAndroidが70%以上のシェアを占めていることがわかりました。

※StatCounter(https://gs.statcounter.com/)のデータをもとにグラフ作成

日本と比べるとiPhoneのシェア自体はそこまで高くないように見受けられますが、海外のユーザー数を考えると決して見過ごせない数字となっています。

今後どうなる?マーケターが注意するべきことは

今後どうなる?マーケターが注意するべきことは

これまでCookieに頼っていたマーケティングツール等は、ITPの登場によりあらゆる手段で対応策を打ち出してきましたが、現在では残念ながら、完璧に効果計測を行うことは難しくなりました。

そのため、プライバシーサンドボックスといったプライバシー保護と広告の効率化を両立できる技術が開発されるなど、Cookieに依存しない計測方法なども模索されています。

また、日本ではSafariの使用割合が大きいためITP対策が急務となりましたが、GoogleもChromeのブラウザにてサードパーティCookieを制限すると発表しています。

今後もITPは各方面でアップデートされる可能性があるため、使用している各種ツールがどのように対策を行うのか、計測タグのバージョンアップなどにも柔軟に対応できるようこまめに情報をキャッチするべきでしょう。

詳しく調べると普段慣れない難しい用語が出てくることもありますが、今後もどんな動きがあるか積極的に情報を取りにいくことをオススメします。

ITPやCookieについて、少しでも理解が深まれば幸いです。


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著者

小松 理美 (Komatsu Satomi)

神奈川県横浜市出身。
2019年に売れるネット広告社メディア部に中途入社
プランナー・バイヤー・運用広告(LAP/ Yahoo!広告/Google広告/Taboola)を担当。

通販エキスパート検定1級(通販マネジメント編)取得。
売れるネット広告社2021年度下期 「MVP賞」受賞。